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【声劇台本】赤星ともに(男2:女3:不問1)

登場人物(男:2、女:3、不問:1)

・ステイシー/女
魔法学校に通う17歳の少女。明るく心優しい性格。鍛錬は怠らないが、魔法が下手くそ。他人を放って置けなく、少し頑固な所があり、オンボロアパートで1人暮らしをしている。

・ユーラ/男
魔法学校に通う17歳の少年。ステイシーと同郷で幼馴染の親友。温厚で物腰柔らか、魔法の実技や座学共に優秀な優等生。無鉄砲なステイシーを放って置けない。

・シュテル/不問
別の惑星から母を探しに来たと言う少年。少しクールだが、遊ぶのが大好き。レッドステラと言う特殊な魔法石を携帯している。

・ケイビン/男
ステイシー達が暮らすアステル国の天文博物館を運営している館長。メディアへの露出も多い目立ちたがり。ルルシュとは一族ぐるみで付き合いが長い。

・ルルシュ/女
アステル国の魔法省、広報担当でメディアへの露出も多い。レッドステラを発見し、博物館に寄贈した一族の人間。強気で少し傲慢。

・母/女
シュテルの母で、名はステラ。シュテルの妹で自分の娘の病気を治すため、薬草を探していたが、消息不明に。ステイシー達の星とは時間の流れが違う。子供達が大切で穏やかな優しい性格。

サブキャラクター(兼ね役可能)
・司会/不問
・記者1/不問
・記者2/不問

【時間】約1時間
【あらすじ】
ステイシーは魔法学校に通う魔法が苦手な女子生徒。今日も裏山で魔法の練習をしていると、親友のユーラがやって来て、天文博物館へ行く誘いを持ちかけられる。約束をしたステイシーが1人帰路に着いてると、隕石が落ちて来た。眩しい赤い光に包まれ意識を失うステイシー。目が覚め、辺りを見渡すと赤い光が森の中に続いていた。その光を追って行くと、傷だらけの少年が赤い石を抱えて倒れていた。


【本編】



シュテル「お星様はキラキラと、赤の色した尾を引いて。白に赤にキラキラと、長い長い道のりを、消えた貴方を追う為に。星の行方を探してる」



ステイシー「石ころからお花を咲かせる魔法は……えーっと…確か教科書24ページ…これかぁ。…よーし、ハロフー!……えー、綺麗なお花じゃなくてダンシングフラワーが咲いたー!?なんで!?」

ユーラ「放課後にこんなひと気のない裏山で自主練をしては失敗ですか?ステイシー」

ステイシー「ユーラ!…教科書通りにやったのに失敗したの…」

ユーラ「石から花を咲かせるなんて子供を喜ばせるおもしろ基礎魔法じゃないですか…。なんですか?そのロックンフラワー。魔力を流す量を間違えたんですか?」

ステイシー「うーん、魔力のコントロールって苦手ぇ。また先生に怒られちゃう…」

ユーラ「はぁ。ステイシーの努力は素晴らしいんですが…魔法は相変わらずですね…」

ステイシー「ユーラは私の幼馴染なのに、私と違って座学も魔法実技も学校1だもんね…羨ましい〜」

ユーラ「まぁ、センスもありますから」

ステイシー「まるで私にセンスがないみたいな言い方…」

ユーラ「ふふ、すみません。そーだステイシー、明日は休日ですから一緒に出掛けませんか?行きたい所があるんです」

ステイシー「行きたい所?」

ユーラ「この国アステル国、随一の天文博物館。そこに行きたいんです」

ステイシー「それって、とっても大きくて歴史のある博物館よね?」

ユーラ「そうです。ステイシーはレッドステラを知ってますか?」

ステイシー「レッドステラ?…なんか、テレビで特集してた様な…」

ユーラ「数百年前にアステル国に落ちたと言われる赤色の隕石です。発見当時、魔力が溢れてたとされ国の魔法研究機関が調査をした結果、その隕石は魔力が溢れる星から飛来したと言われてるんです。この星以外の星にも魔力が溢れた場所があるなんてロマンチックじゃないですか?」

ステイシー「そー…いうもの?」

ユーラ「あ、すいません。つい熱くなってしまって…」

ステイシー「うぅん、大丈夫よ。それで何でレッドステラを見に行くの?」

ユーラ「実はニュースを見て知ったんですが、第二のレッドステラが発見されたそうなんですよ。そしてまた、この国に落ちるとか」

ステイシー「隕石が落ちるの!?それ…大丈夫な奴?」

ユーラ「数百年前に落ちた時は周りへの被害は大きくなさそうだったと、研究結果では出てます」

ステイシー「それは大昔の話だし、研究結果では安心出来ないわね…」

ユーラ「平和を祈りましょう。…それでですね。僕はそのニュースを見てから、博物館にあるレッドステラを見に行きたいんです。そのレッドステラは研究機関で調べられた後、魔力を抑えられて博物館に寄贈されたもので、昔から博物館の目玉らしいんです」

ステイシー「なるほど。ユーラ、宇宙とかお星様とかそういうのが好きだったのね」

ユーラ「で、お返事は?」

ステイシー「いいよ!行こう」

ユーラ「では、明日昼前に迎えに行きますね」

ステイシー「うん、じゃあ今日はもう帰りましょ。暗くなって来たわ」

ユーラ「えぇ、家に向かう前に連絡しますね」

ステイシー「じゃあね」

ユーラ「ステイシー、このロックンフラワーを片付けなさい」

ステイシー「また明日〜!」

ユーラ「逃げた…」



ステイシー「はぁ、どうしたら魔法が上手くいくのかしら…。やっぱセンス…くぅ、悔しいぃ…。それより明日は何着て行こうかしら。てか、晩御飯買って帰ろうかな…。実家にいた時はこの時間に帰ったら、ご飯用意されてたのにぃ…。でも、やっぱ1人暮らししてでも都会の学校が良かったんだよねぇ。ユーラとも同じで安心してたのに…魔法の差が此処まで出るとは…はぁあ………あ、あれって流れ星?魔法が上手くなりますように!魔法が上手くなりますように!…ん、……あれ?流れ星ってすぐに消えるよね?なんでまだ見えて……てか、こっちに近付いて来てない…………きてるーー!!?」

眩しい赤い光に包まれる。

ステイシー「何!?赤い光を放ってる?…っ、眩しい!?きゃぁ!」

気を失うステイシー。数分後。

ステイシー「………んっ?…あれ、私…何で倒れて…。あ!そういえば、流れ星が落ちて来て…赤い光にびっくりしたから…私、気を失ってたのかな…?」

辺りを見渡すステイシー。

ステイシー「ん?…あっちの林の方、赤い光が見える…何かしら?……行ってみよう」

光がある方へ向かうステイシー。

ステイシー「……え?子供?…赤く光ってる石…持ってる…どう言う事?」

シュテル「んっ……っ…」

ステイシー「あ!生きてる!ど、どうしよ…治癒魔法…は、私じゃ無理だわ…。…ユーラなら、まだいるかも!すぐに助けてあげるから待ってて!」



ユーラ「で、僕を呼びに来たと?」

ステイシー「うん、その子ボロボロで…治癒魔法かけてあげて?ユーラ出来たよね?」

ユーラ「出来ますけど…まずは病院に連絡するべきでは?僕があのロックンフラワーの解除に手間取っていたから良いものを…。何を間違えたら基礎魔法の解除が難しくなるんでしょう…」

ステイシー「色々気が動転しちゃって…確かに、ユーラの言う通りだわ」

ユーラ「でも、君も大丈夫なんですか?気を失っていたんでしょう?」

ステイシー「私は平気!赤い光が眩しくてびっくりしたけど…」

ユーラ「…一瞬ステイシーの帰った方向から強い魔力を感じましたが、僕の方への被害はありませんでした…」

ステイシー「あ、あそこ!赤い光が見えるでしょ?」

ユーラ「本当ですね。…あの赤い光、魔力が含まれてますね…一体何々でしょうか…」

倒れた少年の下へ駆け寄る2人。

ステイシー「この子よ!」

ユーラ「すぐに応急処置として治癒魔法をかけます。ステイシーは救急車に連絡を」

ステイシー「分かった」

ユーラ「では、いきます。ヒーリング……………ん?」

ステイシー「どうしたの、ユーラ?」

ユーラ「……救急車を呼ぶのは待って下さいませんか?」

ステイシー「え、何で?」

ユーラ「この子…人間ですか?」

ステイシー「え?」

ユーラ「魔法が効いてる感じがしません。ヒーリングは人間や動物の傷を修復するものです。それは人や動物の体の作りを理解してればしてるほど性能が良い…魔力量やセンスにもよりますけど…」

ステイシー「…そう、だっけ」

ユーラ「……。とにかく、そうなんです!ヒーリングが効いてる感じがしないのは、見たことの無い動物に対してのみ。つまりこの子供は…人間じゃない」

ステイシー「え…」

ユーラ「分析魔法を使いましょう。…アナライズ。………やっぱり、この子は人間じゃないです!ステイシーこの子は見たことのない生き物と言う事になります」

ステイシー「そんな、見た目人間なのに…?」

シュテル「うっ……」

ステイシー「あ、君大丈夫?」

ユーラ「…このまま病院に連れて行っても未知の生物としてパニックが起こる気がします…取り敢えず、ステイシーの家に連れて行きませんか?」

ステイシー「そーね、連れて行きましょう!」


ステイシーの家。

ユーラ「ベッドに寝かせて大丈夫ですか?」

ステイシー「いいわよ」

ユーラ「僕は学生寮の方に住んでますからね…こんな怪我人を連れて帰ったら怪しまれてしまいます」

ステイシー「学生寮って厳しいって聞くしね〜。オンボロアパートでの1人暮らしは大変だけど今回はラッキーだったわ」

ユーラ「取り敢えず魔法を使わずに処置をしましょう。見た所擦り傷や切り傷が多いのでどうにかなりそうです」

ステイシー「良かった…でも、この子人間じゃないってどういうこと?」

ユーラ「…ステイシーの話を聞くに、流れ星がステイシーの近くに落ちて、その後赤い石を持ったこの子があそこの林にいたんですよね?」

ステイシー「う、うん…」

ユーラ「考えられる可能性として…まさかとは思いますが……」

テレビからニュースが流れる。

ケイビン『レッドステラが落ちる可能性があります!』

ユーラ「!」

ステイシー「あ、ごめん。テレビ点けちゃった!」

ユーラ「いや、大丈夫です。……それよりこの生放送の番組…」

ステイシー「今、レッドステラの話が出てたね」

ケイビン『私は天体観測隊から連絡を受け、近い内に観測されていたレッドステラがこの土地に落ちると連絡を受けました』

司会『ケイビンさん、レッドステラ…いわゆる隕石ですよね?それが落ちてくるとなると民間人の被害はどうなんでしょう?』

ケイビン『良いですか、司会者さん。レッドステラはサッカーボール程の大きさをした赤色の隕石なんです。しかも魔力で覆われており、落ちた周辺には魔力が溢れるでしょう。しかし、驚くべきは大きな被害がないとシュミレーションが出ているのです。まぁ、民間人が多い市街地に落ちないことだけを祈りましょう』

司会『そ、そうですか…。では、魔法省から起こし頂いたルルシュ・バーセルさんにも話を聞いていきましょう』

ルルシュ『ルルシュ・バーセルです。近い内、天体観測隊と魔法省で連携を取り、レッドステラの状況を細かくお伝えしていく所存であり、落下予測地点と落下予測日を絞り、民間への被害を抑えるつもりです。………本当は然るべき場で言うつもりだったのですが…』

ケイビン『今日は私がどうしてもとルルシュを引っ張って来ましてね。彼女とは昔からの友人で、我が一族の博物館にレッドステラを寄贈してくださった一族の方なんですよ〜』

司会『お二人は昔からのお付き合いがあるんですね』

ルルシュ『強引な男です。そして、レッドステラの事ですが…』



ステイシー「今の人達、レッドステラについて話してた?」

ユーラ「あの人達は天文博物館の館長、ケイビン・ランタムさん…明日行くので博物館のホームページで見ました。隣はメディアへの露出も多い、魔法省の広報担当ルルシュ・バーセルさん」

ステイシー「その人見たことある!結構テレビ出てるよね?」

ユーラ「…それにしてもレッドステラが落ちる…。魔法が溢れる赤色の隕石…サッカーボールくらいの大きさ……この子が持ってるのって、それと同じくらいのサイズですよね?それに赤い色をしています」

ステイシー「…まさか、この子が持ってる石をレッドステラって言わないよね?ユーラ」

ユーラ「そのまさかではないと思いたいですが、現状そう疑ってしまう程、この子は怪しいんです」

シュテル「う、うぅ……ん?」

ステイシー「あ、目が覚めた!?」

シュテル「っ……ここ、は?」

ステイシー「大丈夫?」

シュテル「っ!?…だ、だれ」

ステイシー「良かった。喋れるみたいだね!私はステイシー。こっちの彼はユーラ。君が倒れてたから私の家に連れて来て怪我の手当をしたの。痛いところはない?」

シュテル「……助けてくれた…の?」

ステイシー「そうよ!」

シュテル「……ありがと」

ステイシー「どういたしまして。君、お名前は?」

シュテル「…シュテル」

ステイシー「シュテル君かー、いい名前だね!シュテル君は山の林の中で倒れてたんだけど、何があったか覚えてる?パパかママは?」

シュテル「……ママ」

ステイシー「え?」

シュテル「ママを、…探しに……この星に…来た」

ステイシー「えっと……」

ユーラ「シュテル君、一つ良いでしょうか?」

シュテル「?」

ユーラ「君はこの星の人間ですか?」

ステイシー「ユーラ?」

シュテル「…違う。俺は遠い遠い星から来た。ママを探しにこの星に来た」

ユーラ「お母さんもこの星に?」

シュテル「うん、この星の薬草はとても良いと言われていて、ママは病気の妹の為にそれを探しに行ったきり、帰って来ないんだ。だから俺は、ばあちゃんに妹を預けて、この魔法石に乗ってママを探しに来た」

ユーラ「…その赤い色の石が魔法石…ですか?」

シュテル「うん、俺らの星ではこの石に魔力が籠ってるからそれを使って別の星へ移動が出来るんだ。移動距離が長くて疲れてたせいで、着地ミスったけど…」

ステイシー「へー!それは凄いね!所で、シュテル君のママは一体いつから居なくなったの?」

シュテル「1ヶ月くらい…」

ユーラ「1ヶ月?…それは僕らの時間感覚と同じでしょうか?」

シュテル「この星で換算すると…数百年位は経ってると思う」

ステイシー「数百年!?」

ユーラ「……なるほど」

ステイシー「?何がなるほどなの、ユーラ」

ユーラ「にわかには信じ難いですが、もしシュテル君の話が本当だとして色々考え合わせた結果…。博物館にあるレッドステラはシュテル君のお母さんのものかもしれません」

ステイシー「え!?」

シュテル「やっぱり、ママはこの星にいるんだ!」

ステイシー「待って待って、頭こんがらがってる…」

ユーラ「落ち着いて考えなさい。まずはシュテル君の星と僕らの暮らす星では時間の流れが違う。そして前回この星にレッドステラが落ちたのは数百年前、もしシュテル君と同じ様にシュテル君のお母さんがこの国に落ちてたら、博物館に展示されてるのはシュテル君のお母さんの物だと推測出来ます」

ステイシー「……あー、確かに」

シュテル「ママの魔法石があるの?じゃあママもきっと近くにいるはず!他の星にいる時は魔法石は肌身離さず持ってないといけないから」

ステイシー「でも、レッドステラって長い事展示されてるものでしょ?写真やテレビで見た事あるけど、そんな話聞いた事ないわ」

ユーラ「お母さんだけ別の場所にいる?いや、時間の感覚が違う中で生きてるものなんでしょうか…?」

ステイシー「ちょっと、ユーラ!」

ユーラ「あ!失礼しました、今のは発言は…その」

シュテル「分かってる…。俺は覚悟を決めてるから、ただママを連れて帰りたいだけ。それが魔法石だけだったとしても…」

ステイシー「シュテル君…」

シュテル「なので、お願いします!俺をママの魔法石の所まで連れて行って下さい!」

ステイシー「…丁度明日、その博物館に行く予定だったから、行こう!」

ユーラ「そうですね、お母さんの手掛かりが掴めるかもしれません」

シュテル「ありがと、ステイシー、ユーラ」

ユーラ「では、僕は帰ります。明日迎えに来ますので」

ステイシー「うん、ありがとユーラ。また明日」

ユーラ「また明日、ステイシー、シュテル君」


翌日。

ステイシー「はぁーあ…昨日はシュテル君とお話して寝不足だわ」

シュテル「楽しかった」

ユーラ「やれやれ…緊張感にかけますね。所で、シュテル君が着てるのはステイシーの洋服ですか?リュックも?」

ステイシー「私断捨離とか苦手で、服とかカバンとか使わなくても置いちゃってるんだよね…。しかも実家から持って来た服とかもあって…着なくなったサイズ小さめの奴があったから着せてあげたの。流石にズボンとかは無理だったけど」

シュテル「リュックもステイシーの。魔法石を入れられるから凄く便利!」

ユーラ「ステイシーのダメな所が役に立ちましたね」

ステイシー「ねぇ、その言い方は流石にムカつくよ?」

ユーラ「すみません。そういえば色々疑問に思ったのですが、シュテル君と僕達の星って言語が同じなのですか?」

ステイシー「あ、そういえば…」

シュテル「違うと思う。言葉が分かるのはこの魔法石のおかげ。この魔法石は俺達の星ではとても重要で、他の星に行った時、言葉を翻訳してくれる魔法が自動で発動するんだ」

ユーラ「なんと…魔法石が自動で発動?そんなのこの星の技術にはありませんよ」

シュテル「それにこれは星を移動したり俺達の魔力を抑えたり、色んな力が込められてる。一人一人が持つとても貴重な物。だから、ママも自分の魔法石の近くに居ないとおかしいはずなんだ…」

ユーラ「僕らの星からしたら、オーパーツですね…。この星の技術では説明がつきません」

ステイシー「そっかー、すごいんだね!シュテル君の星って」

シュテル「こ、これが普通だよ」

ステイシー「私たちからしたら凄いって事!…あ、あそこよね?天文博物館、大きい〜」

ユーラ「休日ですし、昨日の番組もあったせいか結構人が多いですね。取り敢えず、レッドステラを見に行きましょう。チケットを買ってくるので待っていて下さい。あ、シュテル君。そのレッドステラ…魔法石の魔力を抑える事は出来ますか?」

シュテル「出来る」

ユーラ「なら良かったです。下手にバレてシュテル君が捕まりでもしたら僕たちも危ないですからね」

ステイシー「ユーラってば慎重過ぎない?」

ユーラ「こういう事は慎重で良いんですよ。…それにほら、あっちを見てみなさい」

ステイシー「なんだか人だかりが出来てる?」

ユーラ「どうやら、館長であるケイビンさんがルルシュさんを連れて博物館前でロケをしているそうです」

ステイシー「てことはあれって、テレビクルー?あ、大きなカメラが見えたかも」

ユーラ「というわけで、2人とも問題は起こさない様に。シュテル君も、お母さんの手掛かりを探る為に博物館に来たんです、冷静でいて下さいね」

シュテル「わ、わかった…」

ユーラ「貴女も、館内では静かにしてるんですよ」

ステイシー「私だけ扱い違くない?」



ケイビン「……と言うわけで、昔からレッドステラを展示している我が博物館は、レッドステラを観測してからこの様な賑わいを見せているんです。質問はいくらでも受け付けますよ〜」

ルルシュ「…はぁ、ケイビンの目立ちたがりな性格は相変わらずだな。今回はバラエティロケだから、ゲストとして私はカメラの前に立つ事はないが…。しかし、昨日おかしな話を観測隊から耳にした事が気掛かりだ。…昨日突然、レッドステラの反応がなくなった。考えられる可能性は、落ちたか消滅したかだが……」

ケイビン「ルルシュ、怖い顔してどうした?美人が眉間に皺を寄せたら人は近寄らんぞ」

ルルシュ「考え事をしてただけだ。それより、オープニングトークは終わったのか?」

ケイビン「あぁ、次は館内に入っての撮影だ」

ルルシュ「分かった。…ケイビン、観測隊からの連絡は受けたのか?」

ケイビン「あぁ、もちろん。考えられるのは落ちたか消滅したかだろ?…公表はまだだよな?」

ルルシュ「民衆の不安を煽ってしまうし、なにより…」

ケイビン「レッドステラが奪われてしまう可能性があるもんな。あれは俺たちの物だ」

ルルシュ「その通り、あれは我らの一族の宝…」

ケイビン「うちはレッドステラを並べて展示できれば、それはそれで安泰だ」

ルルシュ「ふん、展示ねぇ…」

ケイビン「くくっ、じゃあロケの続きに行かないとな」



シュテル「広くて、キラキラした物がいっぱいある…!」

ステイシー「シュテル君は博物館は初めて?」

シュテル「似たような所に行った事ある。でも、ここまで広くて綺麗な物が沢山置いてある場所は初めて…」

ユーラ「宇宙には色んな星がありそうですね。あ、あれですよ。レッドステラ」

シュテル「え?」

ステイシー「おー、大々的に展示されてるのねー」

ケイビン「その通りです!」

ステイシー「きゃ!?」

シュテル「!?」

ユーラ「あ、あなたは…館長、さん?」

ケイビン「はい、ここ天文博物館の館長を務めています、ケイビン・ランタムです。君たちレッドステラを見に来たの?」

ステイシー「は、はい…」

ユーラ「最近、レッドステラが観測されたとテレビで見まして、本物のレッドステラを見に来たんです」

ケイビン「そうかい、そうかい!それは良い、とても良い事だ。で、実物を見た感想は?」

ユーラ「あ、えと…。魔力が封じ込まれてるせいか一見するとただの赤色の石に見えます。でも、研究したらそれは隕石の類だったのですよね?僕、宇宙に関する物って大好きなので、ロマンを感じます」

ケイビン「君は見る目があるね!そう、一見すればただの石だ。でも、それは宇宙から飛来したもの。結果としてそれが出ている。だからこそ、この天文博物館に寄贈された。宇宙からの飛来物があるだけで、天文博物館としての価値も飛躍するって物だ」

ユーラ「そうですね…」

ステイシー「ユーラ、なんか困ってない?急に館長さんに絡まれるの怖…」

シュテル「……」

ステイシー「シュテル君?…どうかした?」

シュテル「ステイシー、…あれ、ママの魔法石じゃない…そもそも、あれは魔法石でもない」

ステイシー「えぇ!?」

ユーラ「っ!?ちょっと、ステイシー、大きな声は出さないで下さいって…」

ステイシー「あ、いやちょっとシュテル君が…」

ユーラ「え?」

ケイビン「おや、どうしたのかな?」

シュテル「ユーラ…」

ユーラ「…すみません、ケイビンさん。友人の甥っ子が疲れたそうで、休憩所に行こうかと…」

ケイビン「なるほど、ではこの先にラウンジがある。混んでなければそこで休めるだろう」

ユーラ「ありがとうございます」

ステイシー「行こう、シュテル君」

シュテル「う、うん…」


ルルシュ「ったく、あのバカ。急に居なくなりやがって…。あ!あんな所で…客とは言え他人に絡むな……ん?この感覚、レッドステラの気配を感じる…?…どういう事だ?」

ケイビン「おや、ルルシュどうした?」

ルルシュ「っ、ケイビン…どうしたじゃない。勝手に居なくなるな馬鹿者が。今は撮影中だぞ」

ケイビン「はは、すまない。いつもの癖で館内を回ろうとしていた。でも、レッドステラに興味を持ってた子達と話せて楽しかったよ」

ルルシュ「さっきの子達か?」

ケイビン「あぁ」

ルルシュ「………そうか」


館内、ラウンジ。

ユーラ「で、何があったんですか?」

ステイシー「シュテル君が言うには、あのレッドステラ…お母さんの物じゃないし、そもそも魔法石じゃないらしいの」

ユーラ「え?」

シュテル「あれは魔力で覆われただけの石。いくら魔力が抑えられてるとは言え、俺の持ってる魔法石とは別物だし、何よりママの物じゃない」

ステイシー「偽物って事?」

ユーラ「…レプリカの可能性が高そうですね」

ステイシー「じゃあ、本物のレッドステラは何処に?」

ユーラ「…あれを実物と言い張っているのなら、実物がないとおかしいはず」

シュテル「でも、あの石は本物じゃないけど、ママの魔法石の気配はこの博物館からする」

ステイシー「本当に?」

シュテル「うん。魔法石の気配は、俺達には分かる。だから、ママの魔法石はこの中の何処かに絶対ある」

ユーラ「……でしたら、考えられる場所としては、資料などを管理する収蔵庫と言う場所に保管されてる可能性です」

ステイシー「収蔵庫?」

ユーラ「えぇ。貴重な文化財や展示に適さないデリケートな物を最良の状態で保存する場所のことです。ここまで大きな博物館なら、収蔵庫は備わっているでしょう」

ステイシー「じゃあ、そこにシュテル君のお母さんの魔法石があるのね?」

シュテル「ユーラ、それって何処にあるの?」

ユーラ「待って下さい。それはあくまで可能性の話ですし、この博物館の収蔵庫は一般公開されてません」

ステイシー「えー、じゃあどうするの?」

ユーラ「どうしようもないですよ…」

シュテル「……ママ」

ステイシー「……。…ねぇユーラ、その収蔵庫に忍び込めないかな?」

ユーラ「はい!?」

ステイシー「ちょっと、声大きいよ」

ユーラ「いや、…流石に何を考えてるんですか?」

ステイシー「だって、それしかシュテル君を助ける方法が思いつかないもの」

ユーラ「そう…ですけど…」

シュテル「ユーラ…」

ユーラ「危険です…。本当にあるかも分からないのに、バレたら怒られるどころの話ではないですよ」

ステイシー「じゃあ私だけでも行く。シュテル君を助けるの」

シュテル「ステイシー…」

ユーラ「……」

ステイシー「……」

ユーラ「っ、君を…君らを放っておけるわけないでしょう」

ステイシー「ユーラ!」

ユーラ「やるからにはバレないようにしますよ。計画を立てて、キッチリやります」

シュテル「ありがとう、ユーラ」

ステイシー「ユーラの魔法と頭があれば何でも出来るわ」

ユーラ「買い被りすぎです。それにやろうとしてる事は悪い事ですからね」

ステイシー「それは分かってるわよ。でも、シュテル君の為に何か出来たらって思ったんだよね」

ユーラ「…君は本当に極端な方ですね。いつかとんでもない事に巻き込まれますよ」

ステイシー「今がまさにとんでもない事が起こってるじゃない。」

ユーラ「…それもそうですね」

①①
2日後、夜。

ステイシー「もう真っ暗だねぇ」

ユーラ「深夜ですから」

シュテル「あれから2日経ったけど、今日ママの所に行くんだよね?」

ユーラ「えぇ、幾重にもシュミレーションを行い、なるべく最善の手を最短で考えました。後は、寮外への外泊手続きを済ませないといけなかったので…」

ステイシー「やっぱ私は1人暮らしで良かったかも」

ユーラ「正直魔法を使っても何処まで上手く行くかは分かりませんよ…。館内の構造は把握してますが、警備もいるでしょうし」

シュテル「……ユーラ、収蔵庫って所の場所は分かるの?」

ユーラ「え?…はい、おそらく地下にあると思います。地下への階段はラウンジ近くにありました」

シュテル「ラウンジ…休憩した所だよね?…分かった」

ステイシー「分かった?何が?」

シュテル「その距離ならこの魔法石でワープが出来る。行くよ」

ユーラ「え!?え、えぇ!?」

ステイシー「ほんと!?すごーい!」

シュテル「せーの!」

ラウンジの階段近くに飛ぶ。

ステイシー「わわっ!」

ユーラ「おわっ!?」

シュテル「ここで良い?」

ステイシー「すご!本当にラウンジの階段近くにワープしちゃった」

ユーラ「そ、そんな…ワープなんて高等魔法…強力とは言え、魔法石一つで出来てしまうなんて…」

シュテル「俺達には普通の事なんだけど…」

ユーラ「僕達の星では普通じゃないんですっ」

ステイシー「それより、早く行こう。ここの階段を降りるんでしょ?」

ユーラ「はい、手元だけでも灯りをつけましょう。…ケルツェ」

ステイシー「蝋燭を出現させる魔法…それ私がやったら火を吐くトカゲが出て来たのよね」

ユーラ「それはもう呪文から間違ってませんか?」

シュテル「2人とも、早く」

ステイシー「シュテル君、足下危ないから気を付けて」

①②
地下。

シュテル「…ねぇ、この扉の先から、ママの魔法石の気配がする」

ユーラ「では、此処が収蔵庫ですか」

ステイシー「鍵がかかって、しっかり管理されてるっぽいね。どうするの?」

ユーラ「…鍵開け魔法でどうにかなりそうです。…アンロック」

鍵の開く音。

ステイシー「おぉ、開いた!」

ユーラ「…随分警備が手薄ですね。こんなものなんでしょうか?」

シュテル「中に入ろう」

ステイシー「うん」

ユーラ「あ、待ちなさい。2人とも」

収蔵庫内。

ステイシー「うわぁ、色んな物が置いてるね」

ユーラ「どれも貴重な物でしょうから、触らないように気を付けて下さい」

シュテル「……あ!」

ステイシー「あ、あれって」

ユーラ「これが…今度こそ、本物のレッドステラ?魔力が抑えられてるのを感じます」

ステイシー「シュテル君、どう?」

シュテル「…変な感じ?」

ステイシー「え?」

シュテル「ママがいるのに、居ないみたい」

ユーラ「…どう言う事でしょう?」

ステイシー「でも、これはお母さんの魔法石なんだよね?」

シュテル「それは間違いない。だけど、ママの魔力も感じる。魔法石からするの」

ユーラ「魔法石からお母さんの魔力?」

ステイシー「何それ?魔法石に閉じ込められてるとか?」

ユーラ「…まさか?」

シュテル「……」

ステイシー「え、そのまさか?」

ケイビン「そのまさかだよ。悪い子たち」

ステイシー「!?」

ユーラ「っ、ケイビンさん!」

ケイビン「やぁやぁ、この間レッドステラを見に来た子供たちじゃないか。此処で何をしてるんだい?新しいレッドステラを持って来てくれたのかな?それなら、明るい時間に館長室でお話したのに〜」

ルルシュ「ケイビン、無駄話は無しだ」

ケイビン「はは、そうだねルルシュ。…君たち、大人しくそこの子供とレッドステラを置いて帰りなさい。そしたら不法侵入の件は目を瞑ってあげよう」

ユーラ「ルルシュさんまで…」

ステイシー「何で、忍び込んだ事がバレたの!?」

ユーラ「…しかも、シュテル君がレッドステラを持ってる事まで知ってるなんて…」

ルルシュ「どの一族がレッドステラを発見し、ここに寄贈したと思っている?我がバーセル一族だ。特殊な魔力を察知出来るのも魔法省として、レッドステラの所有者である、私だから出来るのだ」

ケイビン「ルルシュが突然、レッドステラを持った子供がいる。ここに保管してるレッドステラに近付く可能性があると言ってきてね。こうして張っていた訳だ。思いの外早く来てくれて助かったよ」

ルルシュ「さぁ、その子供とレッドステラを渡せ」

ユーラ「…ここに侵入した事は謝ります!罰だって受けます。ですが、シュテル君を渡す事は出来ません」

ステイシー「シュテル君はこのお母さんのレッドステラを探しに来ただけなんです」

ルルシュ「母親のレッドステラ…ほぉ、ではその中に封じ込められてるのはその子供の母と言うことか、面白いな」

シュテル「え?」

ステイシー「どう言う事?」

①③

ルルシュ「これは我が一族に伝わるレッドステラの話なのだが、特別に教えてやろう。レッドステラを持って来てくれた礼だ。…当時レッドステラを…レッドステラを持っていた女を発見した。我が一族の者はレッドステラの持つ魔力に驚き、レッドステラを譲ってくれと女に言った。しかし、女はそれを拒否したのだ。どうしても研究をしたかった一族の者は、女を黙らせレッドステラを奪った。そしてレッドステラの魔力を試す為、レッドステラの魔力を借り女をレッドステラの中に封じ込めた…。と言う話だ」

シュテル「……じゃあ、魔法石の中にママの気配がするのは、そう言う事…!?」

ケイビン「魔法石…か、こんな強力な魔法石はこの星にはないものだ。ルルシュ、今度はあの子供を徹底的に調べてみないか?」

ルルシュ「そのつもりだ。…捕えるぞ、バインド!」

ステイシー「きゃ、縄が体に巻き付いてきた!」

シュテル「うわ…!」

ユーラ「くそ、解けない…」

ルルシュ「君たちは学生かな?此処まで侵入出来た事は褒めてやるが、大人に勝てると思うなよ?」

シュテル「…ママを返して!」

ルルシュ「安心しろ。君はママと同じ様にしてやるから」

ステイシー「やめて!シュテル君に酷い事しないで」

ルルシュ「黙れ、小娘。レッドステラの価値もわからんガキが」

ステイシー「知ってるわよ!その魔法石はシュテル君の星では大事な物なの!貴方達は本物を此処に保管して、偽物を本物って言って展示してるんでしょ?なら、その魔法石を返してあげてよ…シュテル君のお母さんを解放してあげて!」

ルルシュ「そんな事するつもりはない。いいか、このレッドステラは魔力の塊だ。しかもレッドステラを使えば未知の魔法を使う事が出来る。こんな貴重な物を利用しない手はないだろう?」

ケイビン「俺はそんな貴重な物を保管出来る事自体が重要だ。厳重に保管をする事を条件にうちに寄贈されたんだからな」

ステイシー「展示してるのは偽物でしょ!?本物は返してあげなさいよ!」

ルルシュ「何度も同じことをのたまうな。君は頭が悪いのかい?このレッドステラは、貴重な物だ。そう易々と返すわけないだろ?」

ステイシー「元はシュテル君のお母さんのよ、シュテル君の星の物なの」

ルルシュ「しつこいガキだ。ケイビン、黙らせるぞ」

ケイビン「子供相手に怖い大人だねぇ。さて、何の魔法で黙らせようか?」

①④

ユーラ「やめろ!…くそ、縄は解けないし、…このままではステイシーが…」

シュテル「……だめ」

ユーラ「え?」

シュテル「ステイシーをいじめるな!」

ユーラ「っ!?シュテル君の魔力が跳ね上がった?」

ルルシュ「何だ!?」

ケイビン「レッドステラを持ってる子供からだ」

シュテル「ユーラ、ステイシーを助けて!魔力を強化する」

ユーラ「うっ、魔力が溢れ出してくる…?シュテル君からの魔力供給ですか!?でも、ここまでの量とは…」

ルルシュ「まずはそっちから黙らせるか!」

ユーラ「魔法解除!…これで動けます。今度はこっちが縛り上げます、バインド!」

ルルシュ「くっ!」

ケイビン「うわぁ!?」

ユーラ「ルルシュさんには逃げられたか…」

ケイビン「くそ、子供の使った魔法なのに、解けない…!?」

ルルシュ「魔力供給で力が跳ね上がったのだろう。私の魔法を秒で解除したしな」

ユーラ「ステイシーとシュテル君の縄も解きます。魔法解除!」

ステイシー「あ、解けた…。凄い、ユーラ」

ユーラ「シュテル君のおかげですよ」

ルルシュ「くくっ、やはりレッドステラは…レッドステラを持つ者の力は凄まじいな…!俄然手に入れたくなった!まずは貴様からだ少年、風魔法トルネード!」

ユーラ「防御魔法を展開します、ガーディアン!」

ルルシュ「バカめ、気を取られたな?私の狙いはこっちのガキだ!気を失わせてレッドステラを奪わせて貰うぞ!雷魔法サンダーボルト!」

シュテル「っ!?」

ステイシー「シュテル君!危ない!!…っあ!?」

①⑤

シュテル「え…」

ユーラ「ステイ…シー…?」

ルルシュ「はは、子供を庇ったか。まぁいい」

ケイビン「ルルシュ、ここは収蔵庫なんだから派手は魔法はやめてくれ」

ルルシュ「すまない。だが、うるさいのがひとつ消えたよ」

シュテル「ステイシー?ステイシー…」

ステイシー「……っ」

ユーラ「そんな、ステイシー!」

ルルシュ「さぁ、そろそろ終わりにしようじゃないか。レッドステラを渡せ」

シュテル「よくも…」

ルルシュ「ん?」

シュテル「よくもステイシーをぉ!!」

ルルシュ「っ!?」

シュテル「ステイシーは、ママを探してた俺を助けてくれて、協力してくれた優しい人なんだ!そんなステイシーを…よくも…!」

ケイビン「な、何だこの光は!?あの子供の体が発光してる!?」

ルルシュ「魔力を帯びた光?くっ、なんて眩しさだ!?」

ケイビン「うわぁ!」

ルルシュ「あぁあ!?」

光が収まる。

ユーラ「うっ……、え…今の光は、一体…」

シュテル「…はぁ」

ルルシュ「うっ……」

ケイビン「…っく…」

ユーラ「…ルルシュさんとケイビンさん…気を失ってます?」

シュテル「発光魔法を使った。魔法石で俺の魔力を解放したから、強力になった。当分は目を覚さないと思う」

ユーラ「そうですか…。あ、ステイシー!」

シュテル「ステイシー…」

ユーラ「治癒魔法を…くっ、雷魔法が背中を焼いてる。治せるか…」

シュテル「ユーラ、俺の力をもっと貸すから、ステイシーを助けて」

ユーラ「…治癒魔法はどんなに魔力があっても治せる限界があります…医学に通じてるほど精度は高いですが、これは僕には治せません…病院にも間に合うか…」

シュテル「そんな…このままじゃステイシーが…」

ユーラ「分かってます!僕だってステイシーを助けたい、でも…どうすればいいんだ」

シュテル「ユーラ…」

①⑥

ユーラ「ステイシー、ステイシー…」

シュテル「……」

母『その子を助けたいの?シュテル』

シュテル「え?」

ユーラ「…今の声は?」

母『助けたいの?シュテル』

シュテル「この声、ママ?…ママなの?」

ユーラ「シュテル君!お母さんの魔法石が光ってます」

シュテル「ママ?…ステイシーを助けられるの?…お願い、ステイシーを助けて!」

母『分かったわ』

光に包まれる。

ユーラ「う、眩しい……え、女の人が現れた!?…まさか、この人が…」

シュテル「ママ…!」

母「シュテル…会いたかったわ…。でも、まずはこの子ね。傷よ、治りなさい」

ユーラ「っ、傷が…綺麗になくなっていく…凄い」

ステイシー「んっ、……あれ、私…」

シュテル「ステイシー!」

ユーラ「良かった…ステイシー…!」

ステイシー「わ、どうしたの2人とも?…え、どちら様?…ん?何で館長さんと魔法省の人が倒れてるの…?一体何があったの?」

母「お初にお目にかかります。私はシュテルの母、ストラと申します。この度はシュテルを助けてくれて、私を解放してくれて本当にありがとう」

ステイシー「シュテル君の…お母さん?」

母「シュテルが力を解放したお陰で、私の魔法石が反応し封印を解除する事が出来たの」

ユーラ「君がシュテル君を庇って怪我したのを治してくれたんですよ。あの2人はシュテル君が撃退したんです」

ステイシー「あ、ありがとうございます!てか、シュテル君凄い!ありがとうね!」

シュテル「そんな、俺は…ステイシーが怪我したのが許せなくて…」

母「強くなったわね、シュテル。私を探しに来たり、本当にありがとう」

シュテル「…だって、帰って来なくて、心配だった…」

母「えぇ、心配かけてごめんなさい。薬草は手に入れてるから、帰りましょう」

シュテル「うん、うん…!」

ステイシー「…良かった」

ユーラ「えぇ」

母「貴方達もありがとう。お礼と言ってはなんだけれど、今日の事…あの2人の記憶から消してあげる」

ステイシー「え!?そんな事出来るの?」

ユーラ「記憶操作魔法は超高難易度魔法で、数分の記憶を消すのだって普通は出来ないのに!?」

母「この星はまだまだ発展途中なのね。大丈夫、これくらい簡単だから…記憶よ消えろ……これで良いわ」

ステイシー「まじか…すご…」

ユーラ「あぁ、もう色んなことが起き過ぎて頭痛いです…」

母「まずは此処から出ましょう。何処か開けた場所はないかしら?」

ステイシー「開けた場所?」

ユーラ「…あそこは?ステイシーがよく自主練してる学校の裏山」

ステイシー「あぁ、良いかもね」

母「分かったわ。そこへワープしましょう」

ステイシー「え、また飛ぶの?」

母「行きますよ。それっ」

①⑦
裏山。

ステイシー「きゃ!」

ユーラ「わわっ」

母「此処で合ってるかしら?」

ステイシー「すご、一瞬で裏山まで飛んじゃった…!」

ユーラ「今日だけで色んな事が起き過ぎてます…」

母「では帰りましょうかシュテル」

シュテル「うん!妹とばあちゃんが待ってるよ」

ステイシー「シュテル君…」

シュテル「…本当にありがとうステイシー、ユーラ。2人のお陰でママを助けられた」

ステイシー「うぅん、お母さんが無事で良かった。妹ちゃん、良くなるといいね」

ユーラ「どうか、お気を付けて」

シュテル「2人とも大好き!」

ステイシー「うん、また遊ぼうね」

シュテル「うん!」

ユーラ「元気でね」

シュテル「うん!」

母「では、名残惜しいけど行きましょうシュテル」

シュテル「うん…、またねステイシー、ユーラ!」

ステイシー「またね!」

ユーラ「さようなら」

シュテル「ばいばい!」

母「…我が故郷へ向かいましょう。飛んでいけ、飛行星」

ステイシー「わっ、流れ星みたいに飛んでいちゃった!」

ユーラ「キラキラして綺麗ですね…!」

①⑧

ステイシー「……あーぁ、あっという間に見えなくなっちゃった…」

ユーラ「…夜が空けていきます。今日も学校でしたよね」

ステイシー「…休んでいいかな?」

ユーラ「…僕も今日はサボります。どっと疲れて来ました…」

ステイシー「うち来る?」

ユーラ「…はい、眠くて仕方ないので」

ステイシー「優等生のユーラが1人暮らしの女子の部屋に来るとか…とんでもない噂が流れそうね〜」

ユーラ「その時はその時ですし、別に君との仲は周知の事実ですから、そう思われても気になりません」

ステイシー「なーんか、癪に触るのは私だけ?」

ユーラ「行きますよ」

ステイシー「うん!………また会えるかな?」

ユーラ「さぁ。でも、会えると良いですね」

ステイシー「…そうだね」

①⑨
数日後。

ユーラ「ステイシー、また裏山で自主練ですか?」

ステイシー「石からお花を咲かせる魔法…ダンシングフラワーにはならなくなったけど、今度は食虫植物ばかり出るんだよねぇ…」

ユーラ「何でですか……それより、このニュース見ました?」

ステイシー「ニュース?何の?」

ユーラ「再生しますよ」

ケイビン『レッドステラが盗まれたんです!収蔵庫に保管していたはずのレッドステラがぁ!』

ルルシュ『おい!レッドステラは展示してるだろ、おかしな事を言うな!ケイビン』

ケイビン『ルルシュ、君も知ってるだろう?レッドステラが盗まれたのに何だその態度は!』

ルルシュ『それは管理を怠ったお前のせいだろ?それより余計なことを言うのはやめないか!』

記者1『どう言うことですか?現在展示されてるのは偽物だったのですか?』

記者2『あれは本物と公言していたじゃないですか!?説明をお願いします』

ケイビン『あ、そ、…それは…』

ルルシュ『えっとぉ…』

ステイシー「ありゃ〜、質問攻めされてる…」

ユーラ「あの時の記憶はちゃんとなくなってるみたいですね…。偽物を本物と偽って展示してた事が反感を買い、炎上してるみたいですよ」

ステイシー「そうなんだ…」

ユーラ「…ステイシー、最近元気ないですが大丈夫ですか?」

ステイシー「え、…何で?」

ユーラ「幼馴染ですよ。それくらい分かります」

ステイシー「……私さ、あの時何も出来なかったじゃない?」

ユーラ「博物館に潜入した時ですか?」

ステイシー「ユーラは魔法を使って助けてくれたし、シュテル君が2人を気絶させたり…。私がもっと魔法を使えてたら、怪我だってしなかったかもしれないのに…」

ユーラ「……」

ステイシー「だから私って、本当に役立たずだなって…」

ユーラ「そんな事ありませんよ。魔法が下手くそなのに捨て身であんな強力な魔法に立ちはだかって…君は誰よりも強い人です。君が庇わないとシュテル君は大怪我を負っていたでしょうし、僕らも捕まっていた……。流石に危険すぎるので二度とやらないで下さい」

ステイシー「ユーラ…」

ユーラ「それに、君の優しさがシュテル君の力を引き出させ、僕に力をくれたんです。本当、ステイシーは僕の自慢の親友ですよ」

ステイシー「えへへ、そう言われると嬉しいな!」

ユーラ「でも、魔法の精度はあげた方がいいですね」

ステイシー「…はーい」

ユーラ「…それより、今度はいつ会えますかね?」

ステイシー「…シュテル君とお母さん、無事に星まで帰れたかな…。また会いたいなぁ」

ユーラ「えぇ、知らない世界の事…もっと聞きたかったです」

ステイシー「妹ちゃんも…元気になると良いな…」

沈黙。

ユーラ「今日は帰りますか。明日は休みですけど、何処か行きますか?」

ステイシー「そうだね、くよくよしてても仕方ないから遊びに行こう!」

ユーラ「では、何処にしましょうか」

ステイシー「うーん、最近出来たオシャレなカフェとか?スイーツが絶品なんだって」

ユーラ「良いですね、そこにしますか」

ステイシー「案内は任せなさ……あれ、ねぇ…なんか空…赤く光ってない?」

ユーラ「え?…流れ星…ですか?いや、違う…ってか、こっちに向かって来てませんか!?」

ステイシー「これって……もしかして!」

シュテル「遊びに来たよ!ステイシー、ユーラ!」

ステイシー「シュテル君!」

ユーラ「嘘でしょう!?」

シュテル「言ったでしょ?またねって!」

ステイシー「…言ってた!もう来てくれたの?」

シュテル「うん!早く会いたくて、妹も元気になってきたんだ」

ステイシー「そっか、よかったね!」

ユーラ「…全く、何度もびっくりさせますね、シュテル君は」

シュテル「二人共、俺と遊んでくれる?」

ステイシー「うん、遊ぼう!いっぱい遊ぼう!ね、ユーラ?」

ユーラ「えぇ、遊びましょう。明日は学校が休みですし、いっぱい遊びましょう!」

シュテル「うん!」


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