【声劇台本】友人が自分は転生者とか言い出した(男2)

登場人物(男:2)

・岸本(きしもと)
男子高校生。ツッコミ気質。

・結城(ゆうき)
男子高校生。優等生風で自称勇者からの転生者。

【時間】約15分
【ジャンル】コメディ

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【本編】

放課後。

岸本「あっはっはっは、この漫画の主人公…まじか！結城、見ろこれ」

結城「岸本…まーた学校に漫画持ち込んでる…没収されても知らないよ？」

岸本「だーいじょうぶ、この前山本に見つかってもスルーされたし」

結城「それは山本先生が適当なだけでしょ？生活指導の田畑先生に見つかったら終わりだと思うけど……で、それはどんな漫画？」

岸本「転生物だよ。主人公が現世で亡くなって、異世界に転生するやつ」

結城「あー、僕と同じやつね」

岸本「……は？」

結城「ん？」

岸本「何？同じやつって」

結城「そのままの意味だけど？」

岸本「俺、お前は冗談は言わないタイプだと思ってたけど、そんな事言うんだな。もしかして今日ってエイプリルフール？」

結城「4月1日はとうに過ぎてるし、僕は冗談は苦手だよ」

岸本「そのお前が今冗談を言ってんだよ。お前の話が本当だとしたら、お前が転生者って事になるけど？」

結城「その通りだよ」

岸本「……もう面白くねぇから、嘘なら嘘って言え」

結城「嘘じゃないね」

岸本「…結城、お前頭でも打ったのか？病院行く？」

結城「至って正常だし、すぐに信じてくれるとは思ってないよ」

岸本「…まぁ、信じれねぇな」

結城「じゃあ聞いてくれないか？僕の話…」

岸本「え、その話長い？」

結城「まぁまぁ長い」

岸本「…俺この後ちょっと用事が…」

結城「大丈夫、最終下校時刻までには終わらせるから」

岸本「放課後ギリギリまで持ってこうとすんな」

結城「まずは、僕がこっちの世界に来る前の話から始めようか」

岸本「うわ、長くなりそう…」

結城「僕の本当の名前はユウ・シヤーと言って勇者の家系だったんだ」

岸本「びっくりするほど、捻りのない名前だな」

結城「黙って聞け。…僕のいた世界は人間だけじゃなく、魔物も住んでいる危険な世界だったんだ。しかも魔王と言う存在が魔物共を支配していて、僕ら人間にも被害を及ぼしていた」

岸本「ありがちな設定だな」

結城「黙れ。そこで国王様から魔王討伐の命を受けた。僕の他に魔法使いのリンベル、弓使いのチャールズ、ヒーラーのルイス、踊り子のエルーシャ。5人パーティだった」

岸本「踊り子いる？」

結城「踊り子は踊りを踊る事で、全体の攻撃力や防御力を上げる事が出来るんだ」

岸本「あー、サポート役なのか……それって魔法使いでも出来るんじゃね？」

結城「魔法使いのリンベルはアタッカーだ」

岸本「何で魔法使いがアタッカーなんだよ。…攻撃魔法に特化してんのか？」

結城「持ってる杖で攻撃する物理型だ」

岸本「なんでだよ！」

結城「その杖の攻撃力を上げるのは、踊り子であるエルーシャだ」

岸本「何に攻撃力降ってんだよ！」

結城「因みに僕は盾を持ったタンク役だ」

岸本「何で勇者がタンク役なんだ！？」

結城「今時色んな勇者がいるのに何もおかしな事はないだろ」

岸本「それはフィクションだからだろ？漫画とかでは面白い展開だけど、実際それで魔王とかに敵うのかよ！」

結城「お前もだんだん信じ出して来たな？まぁ、待てちゃんと話してやる」

岸本「そのニヤついた顔やめろ」

結城「盾使い、魔法使い、弓使い、ヒーラーと踊り子。これが僕のパーティなんだが、その道のりは苦労と葛藤の日々だった…」

岸本「よくよく聞いたら、遠距離攻撃とか後方支援系が多いな…。でも、魔法使いがアタッカーだろ？…何か理解に苦しむな…」

結城「黙れ、聞け。そして僕らは魔王を倒し終えた」

岸本「苦労と葛藤の日々、端折ったな」

結城「魔王討伐後、王国に帰った僕らは盛大に祭り上げられた。ヒーラーのルイスと踊り子のエルーシャの結婚準備もあったり忙しくも楽しい日々だった」

岸本「お前がヒロインと結婚するんじゃないんだな」

結城「そして、ある日…事件が起きた」

岸本「じ、事件…？」

結城「ルイスが…魔法使いのリンベルと浮気をしたんだ」

岸本「……は？」

結城「結婚式が間近と言うタイミングでの浮気バレ。エルーシャは怒り狂った」

岸本「まぁ、そうだろうな」

結城「ある晩の日だ。ルイスとリンベルは僕と弓使いのチャールズに相談を持ちかけに来ていた。ルイスはエルーシャよりリンベルと結婚したいと言い出す始末。旅の最中ルイスとエルーシャのイチャイチャしたやりとりをうんざりする位見せ付けられていた僕たちは、返答に困っていた」

岸本「ルイス、クズだな」

結城「あいつはクズだ…チャールズがリンベルを想っていたのを知っていて、関係を持っていたなんて…おまけにいつもイチャイチャしてたエルーシャを裏切って…」

岸本「お前のパーティ、恋愛関係でドロドロし過ぎだろ」

結城「リンベルもどういう神経してんだ…。エルーシャはよくルイスとの関係をリンベルに話してたから二人が付き合ってるのは確実に分かってるはずだ。チャールズもリンベルに分かりやすくアタックしてたのに…」

岸本「お前抜きで関係出来上がり過ぎてね？」

結城「そういえばリンベルはチャールズにもルイスにも距離が近かった気がする…。僕には一定の距離を取ってたのに…」

岸本「お前嫌われてんの？」

結城「あ、話を戻そう…。ルイスとリンベルが僕とチャールズに相談を持ちかけて来た時、ナイフを持ったエルーシャが乗り込んできた」

岸本「怖っ」

結城「しかもそのナイフ、攻撃力が上がっていた」

岸本「そこは聞いてない」

結城「ナイフを振り回してルイスとリンベルを狙ったエルーシャの前に僕は盾もないのに、ついエルーシャの前に立ってしまった…」

岸本「まさか、それで…」

結城「怒りで我を忘れてたのか、刺されたのはチャールズだった」

岸本「なんでだよ！」

結城「チャールズを刺した事で我に返ったのか、エルーシャは落ち着き、そのまま連行されて行った。チャールズは…」

岸本「チャ、チャールズは…」

結城「無事だった」

岸本「無事なのかよ！その流れ死んだと思ったじゃん！……じゃお前はいつ死んだんだよ！？」

結城「その後、エルーシャを連行する為に馬車が来たんだが、馬が暴れて馬車が横転したんだ。その時の事故に巻き込まれて亡くなったんだと思う」

岸本「お前が死ぬとこだいぶまとめたな」

結城「まぁ、その前の出来事を話しておかないとちょっと繋がらなくてね」

岸本「…うぅん、話は面白かったけど、やっぱ信じ難いな…」

結城「だろうね。でも、これは僕にとって本当にあった話なんだ」

岸本「…異世界転生の話ってさ、生まれた時から記憶があるとか、急に前世の記憶が芽生えるとかあるけど、お前はどうなん？」

結城「急に芽生えた感じかなー」

岸本「それっていつ？」

結城「2週間前」

岸本「最近！？」

結城「この間、数日学校を休んだ事があったでしょ？あの時高熱にうなされてたんだけど、熱が引いてから記憶が芽生えたんだよねぇ」

岸本「えぇ！？なんの違和感もなく戻って来たよな！？どういう心境だったんだよ！」

結城「何も？前世の記憶と今の結城志音(しおん)の記憶が二つあるって感じ」

岸本「そんなもんなのかよ…。前世と今世の記憶違いや、周りとの温度差で苦労するもんかと思ってたのに…」

結城「それはフィクションだからだし、魔物のいない比較的平和な世界に転生してちょっと拍子抜け感はあるけど、とても充実してるよ。岸本っていう友達もいるし」

岸本「結城…」

結城「戦いに明け暮れて、仲間達のドロドロとした恋愛模様もない。穏やかなものだ」

岸本「…結城、確かにそういった物はないだろうけどさ。俺たち、今年受験生だぜ」

結城「……」

岸本「お前赤点多いのに大丈夫か？」

結城「それは記憶が戻る前の僕が悪い」

岸本「逃げんな」

結城「もう帰る時間だろ？帰ろう、岸本」

岸本「現実から逃げんな？勉強教えてやんねぇぞ」

結城「なんだい、君は！ヤンキー面しといて勉強が出来るってずるくないかいその設定！」

岸本「設定言うな！お前こそ優等生の見た目で何で勉強出来ない！」

結城「それは、記憶が戻ったばかりだからだ！」

岸本「嘘つけ！その前から赤点ばっかだろうが！さっきも自分で言っただろ！？」

結城「あー、聞こえない聞こえない！漫画持ち込んでる事、田畑先生にチクるから！」

岸本「あー！やめろやめろ、面倒くせぇ事になるから！」

結城「はは！じゃあ捕まえてみな！おっさきー！」

岸本「待てこらタンク野郎！」

結城「あっ……」

岸本「お、何立ち止まってんだよ！捕まえられる気満々……って、げぇ！？田畑先生！？……あ、いや、その…い、今帰ろうとしてただけで廊下を走っていたわけでは……え！何か落ちた？あ、それは…その、漫画……ですかね？…え、あ！それ結城君が持って来てた奴です！」

結城「はあぁ！？お前のだろ！」

岸本「結城君のです！俺は勝手に鞄に入れられただけで無関係で……え、同罪？そんな、待って！それ買ったばかりなんすよぉ！」

結城「バカ…」

岸本「俺の漫画ぁ…」

結城「(どうやらこの世界での生活は、前の生活と比べて平和その物だけど、その世界での大変な事はある。でも、この世界で生き抜けるには今はこの友人が必要不可欠だと思う)」

岸本「お前のせいだからなぁ、結城ぃ」

結城「なんでだよ！」

終