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【短編声劇台本】人形師が娘そっくりのアンドロイドを作ったらしい…!?(男1:女1:不問1)

登場人物(男:1、女:1、不問:1)

・アキ/男
人形師で妻と娘がいる。夫婦仲は良いが、娘が反抗期気味であまり喋ってくれないのが寂しい。人形師なのだが、アンドロイドを作り出すなど、技術力がバグっている。ハツラツとして明るく感情表現が豊か。親友のリンドウとは男子学生の様なノリになる時がある。

・リンドウ/不問
仕立て屋を営んでいるアキの友人。中性的な人物。性格はクールでツッコミのキレが良い。アキとは親友だが、彼の言動に振り回されてる苦労人。

・ナデシコ/女
アキの娘。思春期で反抗期真っ盛りだが、比較的平和。優しく明るい性格だが、父親の娘大好きアピールがうざい。嫌いではないが素直になれない。リンドウには懐いている。

・人形(ナデシコと兼ね役)
ニコと名付けられるアキによって作り出されたAI搭載のアンドロイド。娘が反抗期で寂しいアキがナデシコそっくりにしてしまった。出来たばかりなのでたまにバグる。

【時間】約20分
【ジャンル】コメディ


【本編】

アキ「遂に…、遂に完成した……!これが、俺の究極作品だぁ!」

リンドウ「長かったねアキ…」

アキ「リンドウ…色々と手伝ってくれて感謝するよ」

リンドウ「どうって事はないさ。でも…この子ちゃんと動くのかな?」

アキ「テストでは問題なかった…人形師アキ、我が人生最高傑作の人形!動いてくれー!スイッチ、オーン!」

人形「…………ピピ…」

リンドウ「おぉ、動いたぞアキ」

アキ「あぁ。でも、ここからだ…!」

人形「パーツ損傷なし。動作に必要なエネルギー供給完了。目を開きます。瞼の動きに問題ありません。視覚から得られる情報を処理しています。1%、2%、3%……4、%……5……」

リンドウ「待て待て待て、お前が作ってたのって人形じゃなかったのか?何でロボットっぽいんだ?」

アキ「ロボットも人形だ!」

リンドウ「私が聞いていたのは喋る機能が付いてるだけの人形だったはずだ!いつからこんなアンドロイド作りの技術を身につけた!?」

アキ「お前が人形の衣装を作ってくれたおかげでこんな可愛らしい見た目になるとはなぁ、良かったなぁ」

人形「8%………9、10%……11……ゥーーーン…」

リンドウ「話を聞け!あとその人形さっきから全然情報の処理出来てないぞ。1%読み込むだけでどんだけかかってんだ!」

アキ「そうカリカリすんなって…動いたばかりで時間はかかるものさ…これからゆっくり、成長していけばいいんだから」

リンドウ「アキ…」

人形「ウーーーーン……」

リンドウ「おい、11から止まったぞ」

アキ「これ99%で永遠に止まるやつかもな。再起動してみるか」

リンドウ「…しかしアキ。お前は何故この子を作り出したんだ?私は仕立て屋として人形の服を作って欲しいと頼まれ、友として手伝える事は手伝って来た。しかもその…その子の見た目なんだが……」

アキ「あぁ、そうだよ…なぁ…」

人形「…46……ぱーせ……ん……」

リンドウ「もう良いだろ」

人形「ピピー、情報処理完了。続いてアップデートを」

アキ「リンドウ、話自体が進まないから一旦休憩にしよう」

リンドウ「そうだな」

数時間後。

人形「全ての機能が正常に動いています」

リンドウ「やっと終わったか…何時間かかった?」

アキ「映画2本も観れたしな。でも、これで喋ってくれるんだ…」

人形「クローズドベータ、アンドロイド試作機Nadeshiko。起動します」

アキ「ナデシコ…」

リンドウ「何故、お前の娘の見た目と名前をその子に付けたんだ」

アキ「俺はな、リンドウ…寂しかったんだよ。お前が側にいてくれても、娘のいない現実に耐えられなかったんだ」

リンドウ「アキ……」

アキ「だから、この人形を作った。娘の見た目で娘の声で…会話がしたかったんだ…」

リンドウ「ナデシコちゃんが反抗期で全く口を聞いてくれないからって、現実逃避するんじゃない」

アキ「だってナデシコちゃん、ここ最近パパとお喋りしてくれないんだもんー!ママも出張続きだから家に中々帰って来れないから余計に寂しいんだもんー」

リンドウ「こんなんが旦那なら私だって帰って来たくない」

アキ「ママはお前みたいに冷たくないもんー」

リンドウ「もんとかキモいぞ。…それよりそのナデシコちゃんそっくりに人形を作っておいて、一体どうするもりだ」

人形「どうするつもりだー」

リンドウ「喋った!」

アキ「そりゃ喋るさ、今は俺たちの会話を聞いてたまにオウム返しの様に言葉を発する段階だよ。会話機能は付いてるけど、実際の会話を聞いてる方が理解が早いだろう」

リンドウ「な、なるほど…。つかお前の技術レベルが計り知れない」

人形「はかりしれないー」

アキ「ま、話を戻すけど…俺はただナデシコと喋りたいだけなんだ…。寂しさをこの人形で埋めて、いつか本物のナデシコと言葉を交わしたい…。それだけの為に俺はこの人形を作ったんだ…」

リンドウ「アキ…」

人形「あ、き」

アキ「パパ…と呼んでくれないか?」

人形「……?」

リンドウ「はっきり言ってキモいぞ」

アキ「はぁ!?」

リンドウ「いや、だって実の娘がいるのに娘そっくりの喋るAI搭載のアンドロイド作って、ナデシコちゃんと喋る練習するって…お前だいぶ痛いぞ」

アキ「何て事言うんだ!?」

リンドウ「百歩譲ってナデシコちゃんが…あー、縁起でも無い事言うが、ナデシコちゃんが亡くなってしまっていたのなら悲しい父親に見える。しかし、ただ反抗期で口を聞いて貰えないってだけでアンドロイドを作り出すお前の技術と行動力はバグってるぞ」

人形「ばぐってるぞー」

アキ「なんだよぉお前はよー!友達がこんなに泣いてるのに何でそんな冷たい言葉をかけられんの?だからお前は俺と違って結婚出来ないんだよ!冷たすぎて散々降られまくった可哀想な人は誰でしょうーかー?」

リンドウ「お前、これ以上自分の株を落とす前に口を閉じた方がいいぞ?どんどん痛く見えるし、正直今すぐ友達辞めたい」

人形「ともだちやめたいー」

リンドウ「おい、さっきからこの子、私の言葉しか繰り返してないぞ?」

アキ「パパだよー、パパっていってごらんー?」

リンドウ「きつ…」

人形「きつー」

アキ「なんでだぁ!?」

リンドウ「一旦冷静になれ、そして本物のナデシコちゃんに気付かれない内にこの子をどうにかした方が良い。多分更に嫌われるぞ」

アキ「いやだー、これ以上嫌われたく無い!」

突然扉が開き、ナデシコが入ってくる。

ナデシコ「ただいまー、ねぇリンドウさん来てるのー?」

リンドウ「あ」

アキ「え」

人形「?」

ナデシコ「……パパ、リンドウさん…それ何?」

リンドウ「ナ、ナデシコちゃん…これには深い…いや深くないな」

ナデシコ「パパ!また私そっくりの人形作ったの!?キモいから辞めてっていつも言ってるじゃん!またママに怒ってもらうよ!?」

アキ「ごめんよー!お前が口を聞いてくれないのが寂しくて寂しくてぇ」

ナデシコ「しかも等身大!?ねぇ、これで三体目よ?人形師としての仕事があるくせに材料ちょろまかしてるでしょ!?」

リンドウ「……友達、辞めるか」

人形「やめるかー」

アキ「何でそんな酷い事言うんだよお前らー!」

ナデシコ「ちょ…今この人形喋った!?」

リンドウ「あぁ、この子はAI搭載のアンドロイドなんだと。いつの間にそんな技術を身に付けてたんだか…」

ナデシコ「…そう言えばパパ、いつかアンドロイドを作りたいとか言ってたよね?出来たんだ…!」

アキ「え、うん…」

ナデシコ「私、陰ながら応援してたのよ…。パパっていつも仕事が楽しそうで忙しそうで…ママもあまり家にいないから私…寂しかった。パパはそれに気付いて、いつか私の友達を作ってくれるって昔言ってくれたんだよ」

アキ「ナデシコ…」

ナデシコ「だから私、いつかその友達が出来るのを待ってたと同時に、パパの夢を応援してた……。なのに完成したのが私そっくりってどう言う事よ!?何で見た目も声も私そっくりにしたの!?声とかどうした!?」

アキ「家のあちこちに盗聴器を仕掛けまして…お前の声を少しづつ頂戴して音声合成ソフトの開発を…」

ナデシコ「キモ!?」

アキ「いや流石にお前の部屋と風呂とトイレには付けてないぞ!?お前はよくパパが部屋にこもってる時を見計らってリビングの大きいテレビを占領してるのを知ってたから、主にそこで…」

ナデシコ「どっちにしろキモい!!」

アキ「リンドウ〜、ナデシコが冷たいよぉ」

リンドウ「全てお前が悪い」

人形「おまえがわるいー」

アキ「そんな〜」

ナデシコ「…ていうかさ、この子…どうするの?」

アキ「え?パパがナデシコの代わりとしていっぱいお話するよ」

ナデシコ「キモい」

リンドウ「娘の前で娘の代わりに人形を可愛がる発言はマジで止めろ。ゼロまで下がった好感度をマイナスに振り切るつもりか」

アキ「せっかく作ったのにぃ…ママも見たらびっくりするぞ?」

リンドウ「娘がいるのに娘そっくりの人形を愛てる旦那の姿を見たら、流石に離婚されるぞ」

ナデシコ「……ねぇ、この子の名前は?」

アキ「え?ないよ。だってナデシコの代わりに作ったんだから」

リンドウ「え、お前ナデシコって呼ぼうとしてたのか?」

ナデシコ「キショ」

アキ「えー!?」

ナデシコ「…この子、家に置いとくならちゃんと名前付けてあげないと可哀想よ!」

アキ「え?」

ナデシコ「パパが私の代わりにしようとする前に、そもそもは私の友達として作られてるんだからこの子はもう私の物よ!」

リンドウ「おやおや」

人形「おやー?」

アキ「えー、その人形は俺の寂しさを埋める為に作ったんだぞ!?」

リンドウ「言葉だけ聞くと気持ち悪い」

ナデシコ「もう決まったもん!パパは私達の間に入れてやりませーん!」

アキ「そんなー!」

リンドウ「これで反抗期ってだいぶ平和的だな」

ナデシコ「さて、人形ちゃんに名前をつけてあげよう!何がいいかしら」

アキ「ナデシコの代わりがぁ…」

ナデシコ「パパキモい。…でも私の代わりとして作られたんなら似た名前が良いのかしら?何か双子みたい」

リンドウ「意外とノリノリだねナデシコちゃん…」

人形「のりのりー」

アキ「名前付けるの苦手だから付けるつもりなかったんだけどなぁ…」

リンドウ「ナデシコちゃんの名前付けたのって奥さんだったしな」

ナデシコ「うーん、うーん……。ナデシコ…ナデシコ……2、号……」

リンドウ「ナデシコ2号…?」

アキ「あー、いいじゃん」

リンドウ「良くないだろ。ロボット扱いにも程がある」

ナデシコ「2号。あんたの名前は2号よ!」

リンドウ「ネーミングセンスのなさは父親譲りか…」

人形「に、ゴ?」

アキ「2号」

リンドウ「2号…にご…ニコで良いだろう」

ナデシコ「ニコ?」

リンドウ「そうニコ」

人形「にこ!」

アキ「あらら、気に入ったのかな?」

人形「名前の登録を完了します!『ニコ』、認識しました」

リンドウ「だとさ」

ナデシコ「ニコ、私はナデシコ!これからよろしくね」

人形「…ナデシコ、データを参照。製作者の大事な人と登録されています」

アキ「あ」

リンドウ「…お前、そういうデータも入れてたのか」

ナデシコ「……きも」

アキ「ナデシコー!?」

リンドウ「照れ隠しか…ふふっ、まだ反抗期だもんね」

人形「…アップデートを開始します。アキ、製作者。リンドウ、製作者の親友。ナデシコ、製作者の大事な人。クローズドベータ、アンドロイド試作機Nadeshiko.本体名『ニコ』。………よろしくお願いします。みなさん!」


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