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【声劇台本】良縁結び(男1:女2:不問1)

登場人物(男:1、女:2、不問:1)

・朱音 糸(あかね いと)/女
高校2年の人間の女子。幽霊や妖怪、神様の類が視える不思議な体質。まっすぐでハッキリ物を言うタイプだが、他者に優しい性格。

・リョク/男
緑ノ超神社と言う縁結びの神社に棲む土地神様。体を壊し療養中。頭が固く素直じゃないが真面目な性格。感情的に怒ってしまう節がある。

・えにし/不問
神社の狛犬で、リョクに仕える神使の少年。見た目や性格は幼い子供で色々突っ走ってしまうのでよくリョクに怒られる。リョクの事は大好きだが、怒られるのが苦手で、色々と黙ってしまう。

・くくる/女
神社の狛犬で、リョクに仕える神使の少女。えにしと真逆の性格で強気で冷静。リョクには逆らわないが、たまに腹黒い所がある。えにしの相棒だが、姉の様な存在。

サブキャラクター(兼ね役可能)
・青木 結依(あおき ゆい)/女
糸の同級生で隣のクラス。糸と同じ体質。オドオドとした性格だが、大人しく心優しい性格。

【時間】約1時間
【あらすじ】
良縁です。糸の目の前には大きな狐の様な耳をした少年だった。彼は糸を見るなりそう言って来た。糸は昔から人ならざるものを視れる体質だった。少年は糸に助けを求めた。その内容は、神様を助けて欲しい、との事だった。


【本編】



えにし「縁、良縁…無縁、無縁…縁」

糸「私には昔から、普通の人には見えない物が視えた。霊感…とも呼ぶのかな…でも、それよりはハッキリ見えて、アニメや漫画に出てくる様な…妖怪の類が見える。そんな事、ありえないでしょ?それが残念ながら見えるの。…私は今、高校生なんだけど、この視える目との付き合いに少し慣れて来てる。しかし…」

えにし「無線、無縁、縁…無縁、良縁」

糸「目の前で猫の様な狐の様な耳をして、ふわふわの尻尾を持った人間の形をした子供の妖怪が人々の行き来を見てはぶつぶつと呟いている。関わらないのが一番なんだけど、あの子の前を何でもない顔で通るのは少し心構えがいる。もし、こちらに声をかけられでもして私が反応してしまえば、見えてるのがバレて何をされるか分った物じゃない。小さい頃、それで何度か怖い目にあったし……やっぱり別の道を通るべき……」

えにし「良縁?」

糸「え!?」

えにし「…お姉さん、良縁の気配です」

糸「え、えぇ!?」

えにし「あれ、お姉さん…」

糸「しまった…!」

えにし「見えてるんですか?えにしの事」

糸「っ……、み、視えてない!」

走り出す糸。

えにし「待って!助けてください!!」

糸「え?」

泣き出しそうな表情のえにし。

えにし「待ってぇ、うっ、助けて欲しいんです…。えにしの、ご主人様…を助けて…」

糸「え、ちょ…泣いてる?……えぇっと……」

えにし「うっ、ひくっ…」

糸「……」

えにし「リョクさまぁ……」

糸「っ、……人がいない所まで行くからついておいで」

えにし「はい…」



糸「ここの公園は人が少ないわ。私は糸。朱音糸よ。君は?」

えにし「えにし、と申します…。僕はあそこの山にある神社から来た狛犬で、神に使える神使(しんし)と呼ばれるものです」

糸「……はぁ」

えにし「我が主、縁結びの神であるリョク様が床に伏せてしまわれて、リョク様に変わってこの土地をパトロールしていたのです」

糸「……そっかぁ………。うーん、今まで話しかけてくる奴は居たけど、狛犬に神様かぁ…頭痛くなってきた…」

えにし「糸様はえにしのお話を信じてくれますか?」

糸「え、あ…まぁ、一応……」

えにし「お優しい方なんですね!では、えにしの願いを聞き届けてはいただけませんか?」

糸「願い?」

えにし「先程話したリョク様なんですが…その方の見張りをして欲しいのです」

糸「み、見張り?」

えにし「リョク様の看病はえにしの相棒であるもう一体の狛犬が努めているんですが、えにしみたいに相棒も看病以外にやる事があるのでその間の見張りを糸様にお願いしたいんです!」

糸「え、何でそんな事しないといけないの?」

えにし「神様が死んでしまったらどうしてくれるんですかぁ!?」

糸「何でこっちの話は聞かないの、こいつ!?」

えにし「もふもふ尻尾のえにしが泣いてお願いしてるのに…人間とは薄情だ…」

糸「いくらなんでも強引すぎるでしょ。……でもあそこの神社かぁ。通えなくは無い距離だけど…」

えにし「では、参りましょう!見た所糸様は学生さんであられますね?大丈夫!放課後や休みの日に少しでいいので来て下さればえにしも相棒も助かります故!」

糸「え、ちょっと!?本当に強引過ぎる!」

えにし「では早速参りましょう!」

糸「あ、待って!?引っ張らないで!自分で歩くから!」


神社付近。

えにし「ここが我が主、リョク様がおられます縁結びの緑ノ越(りょくのごえ)神社です」

糸「ここ…家から一番近い神社で何度かお参りした事あるなぁ…」

えにし「この時間の参拝客は多くありませんし、境内も至って静かなので糸様の仰る人目につかないと言う条件は満たせるのでは?」

糸「…単に他の人に見えない物が見えてるから、不思議ちゃん扱いされたくないだけよ」

えにし「確かに、幽霊とかは見える人間はよく聞きますが、妖怪や神様、その使いまで見える人間はそうそう居ませんね」

糸「でしょ?だから周りには霊感が強いとは言った事あるけど、あんたら妖怪と会話まで出来るなんて言ったら、学校に居づらくなっちゃう…」

えにし「…難儀ですねぇ、人間と言うのは…」

糸「そもそもリョク様って神様はどこにいるの?お賽銭箱が置いてるおっきな建物?」

えにし「それは拝殿(はいでん)です。拝殿とは皆さんがお参りする為の場所で、神様の御神体が祀られているのはその奥の建物、本殿(ほんでん) になります。本殿は御神体が祀られてるので、とても神聖な場所となり、一般の方の立ち入りは出来ないんですよ」

糸「へー、なるほどねぇ。…でも、それなら私入る事出来なくない?そもそも部外者なんだから、下手な事して神社の人に怒られるのは嫌だよ?」

えにし「ご安心下さい!御神体が祀られているのは境内にある本殿なのですが、えにし達がこれから向かうのは裏境内なのです!」

糸「う、裏…?」

えにし「裏境内とは、表の世界の境内とは打って変わり完全なる神域。人間は立ち入れません。しかし、神様や神の使いが見えて歓迎された者のみ侵入が許される不思議な世界。今回はえにしが糸様を歓迎します。歓迎された人間は神様が立ち入りを禁ずるまで、自由に表と裏を行き来出来ます。どうです?すごいでしょ?」

糸「す、凄い……設定だね」

えにし「設定ではありません!早速行きますよ、鳥居に入る前に必ず一礼をする事、これは表に行くにも裏に行くにも参拝の礼儀ですからね」

糸「は、はいはい…」

えにし「では、行きましょう!鳥居に入ればそこはもう裏境内への道。えにしに着いてきて下さい!」

糸「あ、待って!えにしくん!」

鳥居に入る二人。



くくる「誰?」

糸「え!?」

えにし「あ、くくるちゃん!ただいまー」

糸「え、えぇ?」

えにし「糸様、この子がえにしの相棒!もう一体の狛犬、くくるちゃん」

糸「へ?あ、確かに…えにしくんと少し似た感じ…」

えにし「くくるちゃん、この子はえにし達が見える人間の朱音糸様だよ」

糸「は、初めまして…。ってか、本当に裏の神社内なの?不思議な感覚はあるけど、見た目特に変わってないような…」

えにし「見た目はあまり変わりませんよ。でも、ここは現世でのえにし達の居住地。訪れる事が出来るのはえにし達神の使いや、神様、妖怪も現れる事があります」

糸「じゃあ、人間は私だけ?」

えにし「はい、でもたまに迷い込む人間はいたりします。俗に言う神隠しと呼ばれる現象は人間がこの裏境内に迷い込む場合もございます」

糸「へー、リアル神隠し状態なんだ今の私…」

くくる「えにし、くくを無視しないで。何で人間を連れてきたの?今までリョク様の代わりって外に出て、今度は人間をこっちに呼んぶとか…いつか何かやらかすと思ってたけど、遂にやったわね…この大バカ…」

えにし「えー!?えにしそこまでバカじゃないよぉ」

くくる「いーえ、あんたはバカよ。人間、糸と言ったかしら?貴女、くく達が見えてるようだけど、このバカになんて言われてきたのです?」

糸「え、えっと…、神様が体調悪いから、くくるちゃんが看病してるけど、他の仕事の間、神様を見ていて欲しい…的な?」

くくる「………えにし」

えにし「なにー、くくるちゃん?」

くくる「私が一度たりとも別作業中に看病してくれる人間が欲しいなんて言った事あった?リョク様はお体の調子が優れないとは言え、前よりお元気よ。何で治りかけのタイミングで人員を増やすの?遅いのよ、このバカ」

えにし「えー!?えにし、良かれと思って糸様を連れてきたのにー!」

くくる「頼んで無い!さっさと元の場所まで返して来なさい」

糸「私、犬か何かなの?」

えにし「で、でもでも糸様、良縁だよ!」

くくる「っ!?………確かに、でもそれとこれとは話が別よ」

糸「また出た。何、良縁って…」



リョク「とても良い縁の事。何故かそこの人間と我々との縁は良縁らしい」

糸「え?」

リョク「しかし、裏境内に招き入れるのは早計だ」

えにし「リョク様ー!」

くくる「リョク様、起き上がって大丈夫なんですか?」

リョク「あぁ、今日はマシな方だ。……人間、うちのえにしが勝手な事をした様だ。詫びよう」

糸「あ、いえ…」

リョク「俺はリョクと名乗ってる土地神だ。この境内を去れば元の世界…さっさと立ち去り給え」

糸「え、神様…体は大丈夫なの?」

リョク「人間に心配される程ではない。大方、えにしが大袈裟に言ったのだろう?」

えにし「だって、リョク様が心配で…くくるちゃんも忙しそうだったし…」

リョク「はぁ、多少力が使えないくらい衰弱してしまったが、だいぶ回復している。それより人間を勝手に神域に入れることの方が問題だ。えにし、お前は何をしている!?」

えにし「ご、御免なさい…!」

リョク「くくるも、俺の看病や他の作業があるのは仕方ないが、えにしをちゃんと見張っとけ。こいつは何をしでかすか分かった物ではないだろう」

くくる「っ、申し訳ありません…」

糸「ちょ、ちょっと!それは言い過ぎじゃないですか?」

リョク「何…?」

糸「自分の部下だからって強く当たりすぎ!病人だから、神様だからってそんな言葉は酷いんじゃない?」

リョク「人間が口出しするんじゃない」

糸「口出すよ!だって、えにしくんはあんたの代わりにって土地をパトロールしてるし、くくるちゃんはあんたの看病以外にやる事あるんでしょ?だったらまずはこの子達を責めるんじゃなくて、労うのが先じゃない?神様だからって偉そうにしてる奴、私嫌いなのよね!」

リョク「口を慎め、人間。本来貴様は此処へは入る事は出来ない存在なんだぞ」

糸「好きで連れて来られた訳じゃないわよ。でも、えにしくんが凄い不安そうだったし、私が出来る事なら手伝ってあげようって思ったから来たの。…でも、こんなんがうちを守ってくれてる土地神様なんて残念過ぎるわね!」

リョク「っ、良い度胸だな人間…神に見捨てられる覚悟はあるか?」

糸「あんたみたいな神様ならこっちから願い下げよ!」

えにし「わ、わわっ!お二人とも落ち着いてくださいー!ど、どうしようくくるちゃん…!?」

くくる「元はと言えばあんたのせいでしょ?…でも、これはこれでチャンスかしら」

えにし「え?」

くくる「リョク様、提案が御座います」

リョク「なに?」

くくる「この人間にリョク様の看病を任せませんか?」

リョク「はぁ!?」

糸「えぇ!?」

えにし「えー!?」

くくる「リョク様はまだ完全回復となっておりません。それにくくはリョク様の看病や普段の業務、リョク様の代わりに行える仕事をしています。えにしは外に出かけてますし、少しの時間でもリョク様を見てくれる方がいると大変助かるのです」

糸「くくるちゃん、そんなに大変なんだ…」

くくる「はい、糸様がリョク様を見てくれたら、くくの負担が軽減され過労で倒れる可能性も無くなるでしょう。後、大した額ではありませんが報酬も出しますので」

糸「あ、やります」

リョク「くくる!勝手な事をするんじゃない!」

くくる「ただアルバイトを雇っただけですよ?前より回復してきてるんですから、看病はくくでなくとも宜しいではないですか。それとも…えにしにやらせます?あんな大騒ぎで不器用な奴に任せたら胃に穴空くと思いますが?」

リョク「…くくる、貴様ぁ」

くくる「糸様はやると仰って下さいました。ここは神様として、広い心をお持ちになった方が宜しいかと」

リョク「くそ…」

糸「よっしゃー、うちの学校バイト禁止だけどこれならいいだろー!」

えにし「やったー!糸様がまた来てくれるー」

くくる「良縁とはまさにこの事♪負担が軽減されてくくは満足です」

リョク「はぁ……」


数日後。

糸「こんにちはー!」

くくる「糸様、本日は早いのですね」

糸「今日は5限で終わりだったからね〜。部活もしてないし真っ直ぐ来ちゃった」

くくる「そうなのですか、リョク様の看病をお願いしてから数日。ほぼ毎日来てますが大丈夫なのですか?」

糸「…私、友達いないし、部活も…変な物見たら動揺しちゃうから入りづらいんだよね…」

くくる「あっ……」

糸「あー、変な事言ってごめんね。リョク様の所行ってくる!」

くくる「…はい」


リョクの寝室。

糸「お邪魔しまーす」

リョク「邪魔だ、帰れ」

糸「器の狭い神様ね。…これが目に入らぬか?」

リョク「そ、それは…!?」

糸「この間私がお昼休みに買って食べきれず持ってきた特製メンチカツパンじゃ。あんたがめっちゃ気に入った奴。欲しかろ〜?欲しかろ〜?」

リョク「ほ、欲しい…」

糸「欲しいー…?」

リョク「欲しい……で、す…」

糸「うむ、素直でよろしい」

リョク「くそ…」

糸「つか、病み上がりでよくそんな重いの食べれるね。結構大きいよ、それ」

リョク「体自体は問題ない。…神の力が前より少なくなっているくらいだ…。いずれ完全回復するだろうが、今はまだその兆しはない」

糸「神様の力?」

リョク「神通力と呼んでいる。神の加護を信仰する者達に与えたり、その神固有の力を発揮するものだ」

糸「その話難しい?長くなる?」

リョク「……例えば、俺は縁結びの神だ。俺が持ってる力は人間同士の縁があるかないか、良縁か無縁か測れるんだ。それは使いである、えにしとくくるにも備わっている」

糸「そう言えばえにしくん、私と出会った時、良縁とか無縁とか言ってた気がする…」

リョク「あいつは外に出て、一体何をしてるのか…。しかしそれで、縁結びを望む者が神社に参拝に来たら、良縁が訪れやすくしてやるんだ」

糸「へー!」

リョク「だが今は、縁が見えづらくてな…。正直えにし達の方がその縁が見えている。下手に縁を結んでしまうと、悲しい犠牲を産んでしまう。俺はそれが嫌で療養に勤めてるんだ…」

糸「何で体壊しちゃったの?力使い過ぎたとか?」

リョク「それもあるが周期的なものだ。人間も時期によって体が弱るだろう?」

糸「あー、今寒暖差が激しくて体調崩れやすいもんね〜」

リョク「そう言う事じゃないんだが…、まぁいい。神の力はすぐには戻らん。早く治すようにしたいが、こればかりはどうにもならないんだ…」

糸「あんたって意外と真面目だね」

リョク「はぁ?」

糸「ここ数日あんたの看病してたけど、あんたって真面目で頑固で…素直じゃないよね。そんな性格してる」

リョク「人間のくせに生意気な口を叩くな。無礼な…」

糸「看病して貰ってる癖に横柄な態度取るとか酷いなー。それに、私の名前は糸。人間って名前じゃない」

リョク「人間は人間だ」

糸「縁結びで人間に優しいくせに目の前で看病してくれてる人間には優しくないのねー」

リョク「俺は頼んでないからな。そもそもお前はバイトだろ?」

糸「そうだけど、私はえにしくんの不安やくくるちゃんの仕事の負担が少しでも減れば良いの。それでバイト代出るならあんたみたいな偏屈神様の相手、いくらでもしてやるわ」

リョク「俺達に構ってないで学生生活を満喫してくれば良い物を…同じ人生は二度とないんだぞ」

糸「友達いないから良いのよ…。それより神様とお喋り出来る体験の方がよっぽど貴重じゃない?」

リョク「…お前、友達いないのか」

糸「哀れみの顔しないでもらって良い?腹立つ」

リョク「…その目のせいか?」

糸「うん、昔さ…他の人に見えない物が見えてそれを他の子に話したら、すっごいバカにされたの。両親も子供の時は話を聞いてくれたけど、大きくなって行くに連れ、いつまでも子供みたいな事を言うのは止めなさいって言われたよね」

リョク「……」

糸「見えてるせいで、妖怪に追いかけられた事もある。正直死ぬかと思った。でも、それを言っても信じて貰えない。あいつらって急に視界に入って来るから毎回超びっくりすんの!そんなん他の子といる時とか誤魔化すのすっごい大変で…だから自然と…誰かといる事が出来なくなったのよ」

リョク「そうか…、それは大変だったな」

糸「…でも、今はすごく気持ちが楽。神様やその使いだとしても、私の話を聞いてくれる人がずっと欲しかった。最初は戸惑ったけど、…ありがとうリョク様」

リョク「……お前の願いが叶ったのなら良い。俺も退屈しなくなったし、あいつらの不安や負担が減ったのなら、こちらこそだ。糸」

糸「…!…へへ」

リョク「…ふっ」


バタバタと足音が聞こえ、扉を強く開けるえにし。

えにし「リョク様ー!ただいま戻りました!あ、糸様、いらっしゃいませ!」

糸「えにしくん!おかえり、今日もパトロー…」

リョク「えにし!廊下は走るな、戸を開ける時は一声かけてから、ゆっくり開けろと何度言えば分かるんだ!?」

えにし「ひっ!…御免なさい」

リョク「また一人で外に出ていたのだろ?何でお前はいつもそうなんだ?俺の言うことも聞かないし…くくるを見習え」

えにし「ご、ごめん…なさ…」

泣き出しそうになるえにし。

糸「ちょっとリョク様、強く言い過ぎよ!…えにしくん、泣かなくて良いのよ。いつもパトロールお疲れ様。えにしくんも菓子パン食べる?今日はいっぱい買ってきちゃったの。えにしくんの好きな甘いのもあるわよ、食べる?」

えにし「…食べる」

糸「よし、それじゃ手を洗って、くくるちゃんを呼んできて?みんなで食べましょう」

えにし「はい…!」

その場を去る、えにし。

リョク「余計な事をするな」

糸「あんたは怒りっぽいわね。そんなんじゃいつか本当に嫌われるわよ。一方的に捲し立てても伝わるものも伝わらないし、相手の言葉も届かない。えにしくんの事大切ならもう少し冷静になりな」

リョク「大きなお世話だ。…居間に行くから、茶を用意しろ」

糸「看病はするけど、私は家政婦じゃないっての!……ったく、本当頭の固いやつ」


数日後。

糸「この間まで晴れ続きだったのに、今日はずっと曇り空だなぁ」

くくる「本日は夕方近くからは雨が降ると聞きましたが」

糸「えー!帰る頃には降ってるかもしれないの!?傘持ってきてない〜」

リョク「予報くらいみんか、愚か者」

糸「いつもは折り畳み傘入れてるもん!今日はたまたま忘れてただけです〜」

リョク「はいはい、言い訳な」

糸「喧嘩売ってるなら買うけど?」

くくる「まぁまぁ、落ち着いて下さい。古い物で宜しければ傘をお貸ししますよ。それとも今日はもうお帰りになりますか?」

糸「傘貸して貰えるんならまだ居るよ。えにしくんも帰って来てないし、くくるちゃんもお仕事あるんだもんね」

くくる「はい、そろそろ戻りますね。ごゆっくりどうぞ、糸様」

糸「ありがとね、くくるちゃん」

リョク「俺は糸がさっさと帰ってくれる方が助かるんだがな」

糸「はぁ?」

くくる「ふふ、リョク様はなんだかんだ糸様がいらっしゃるのを楽しみにしてるのに、そんな事を仰らない方が宜しいですよ?毎日毎日、糸はまだか〜?とか、そろそろ糸が来る時間じゃないか〜?とか聞いてくるじゃないですか」

リョク「くくる!」

くくる「あ、失礼しました。それでは、くくは作業に戻りますので、ふふっ」



リョク「あいつ…」

糸「へっ」

リョク「何をニヤニヤしてる?」

糸「いやぁ?そんなに私が来るの楽しみにしてたのねぇ?」

リョク「……話相手がいて退屈せんだけだ。くくるには俺が伏せてから苦労をかけてるし、えにしは何処かへ出てしまってるし…」

糸「素直になればいいのにぃ」

リョク「お前がその腹の立つ顔をやめん限り、無理だろうな」

糸「はいはい。それより、えにしくんは今日もパトロール?」

リョク「パトロールなんて知らんが、縁が見えるだけでは俺の代わりは務まらん。それよりくくるの手伝いをしてくれる方がいいんだがなぁ。あいつは話を聞かんから困る…」

糸「…まぁ、超マイペースよね。良い子ではあるんだけど、突っ走ちゃうというか、くくるちゃんと比べちゃうと子供らしいと言うか…」

リョク「くくると比べると、あの性格と勝手な行動…謹んで欲しい物だ」

糸「…えにしくんはえにしくんなりに色々考えてる筈よ。そんな事言わないであげて」

リョク「……そう言う物なのか?」

糸「何か子育てに苦戦してるお父さんみたいだよね」

リョク「誰がお父さんだ」

糸「手の掛からないしっかり者の姉とマイペースな弟を持ったお父さん」

リョク「随分具体的だな」

糸「そう見えるんだもん」

リョク「…そうか、ならお前は何だ?」

糸「何だろ?…大変そうなお父さんにアドバイスをする、近所のイケてるお姉さん…かな?」

リョク「出直して来いクソガキ」

糸「何だとどぐされ神様」

①①
ドタドタと廊下を走り、勢いよく扉が開く。

えにし「リョク様!ただいま戻りましたー!」

リョク「!…えにし…」

糸「えにしくん!びっくりしたぁ、おかえ……え?」

リョク「お前…」

えにし「糸様!今日も来て下さっていたのですね!」

糸「そ、それより…服ぼろぼろだし、体濡れてない!?どうしたの?」

えにし「濡れてるのは、ついさっき雨が降り出したからで…服が破けてるのは…その、下級の妖怪が…えっと……」

糸「妖怪?」

えにし「………」

リョク「言えないのか?」

えにし「いえ、言えない事は……でも、」

リョク「もう良い分かった。大方派手に転んで破いたのだろ?妖怪共のせいにするんじゃない。後、何度言えば分かるんだ。廊下を走るな、戸は声をかけてから静かに開けろ。お前は曲がりなりにもうちの神使なんだぞ。主の顔に泥を塗る事をするんじゃない。一体いつになったら俺の言う事を理解出来るんだお前は!」

えにし「ご、ごめんなさい…でも、えにし…」

リョク「何をしてるか知らんが、外をほっつき歩くのもいい加減に止めろ!そんな事よりくくるの手伝いをしないか。お前だけ外に出て、くくるがどれだけ苦労してると思ってる…」

糸「リョク様…、そんな言い方…」

えにし「ご、ごめんなさっ…でも、えにし…リョク様の代わりに土地をパトロールに…」

リョク「俺がそんな事頼んだか!?」

えにし「っ!」

糸「ちょっとリョク様!…えにしくん、大丈夫だから…」

リョク「糸もえにしを甘やかし過ぎだ、一度しっかり叱った方が…」

糸「だから一方的に捲し立てるなって言ってるでしょ!」

えにし「う、うぅ…うわぁあん!」

糸「あ!えにしくん、待って!何処行くの!?」

リョク「外に出て行ったか…。はぁ、全くあいつは…」

糸「流石に強く言い過ぎよ!捲し立てるなって言ったじゃん!何でえにしくんの話を聞かないの?えにしくん怪我してたのに。このバカ!大バカ!」

リョク「おい、糸…何処へ行くつもりだ」

糸「えにしくんを探しに行くに決まってるでしょ?あんな姿で外に出て、心配よ」

リョク「すぐに戻る。雨も降り出した様だし。お前は家に帰れ。これはうちの問題だ」

糸「問題の主が問題を分かってないのに、えにしくんを放って置けるわけないでしょ!?」

リョク「あ、糸!」

えにしを追いかける糸。

①②

くくる「リョク様、糸様。お声を荒げて一体どうしたのです?」

リョク「くくる…。何でもない」

くくる「あら、糸様は?」

リョク「……出て行ったえにしの後を追って行った。全く、こちとら病人なのに、休ませてくれねぇ…」

くくる「えにしまで出て行ったのですか?あの怪我で…消毒をしようと思ってたのですが…」

リョク「また何処ぞで転んだのだろう。くくるの仕事を増やしおって…」

くくる「消毒をしてやるくらいなんて事ないですよ。えにしは外を見て回って、悪い事をしてる妖怪に注意をしてる事もあるんですから、怪我をしやすいんですよ」

リョク「何?」

くくる「えにしから聞いてないんですか?……結構危険な事をしてるから、リョク様には言わなかったのかしら?…余計な心配をかけない様に」

リョク「あいつ…」

くくる「リョク様が衰弱なされてから、くくもえにしも心配で仕方ありませんでした。たった一人でこの土地を守って来たリョク様の代わりなど、くく達には務まりませんが、出来る事をしているつもりです。例えそれが、リョク様の目の届かない場所で行われていようとも……」

リョク「知っていて黙ってたのか?」

くくる「聞かれていませんし、リョク様はえにしの話を聞いたことがありましたか?」

リョク「……糸と同じ様な事を言うな」

くくる「気になるなら留守番してますよ。傘を忘れずに」

リョク「何で俺が…!」

くくる「神様でも良い悪いの区別は出来るでしょう?」

リョク「……どうしたくくる」

くくる「くくは、糸様の方が正しい事を仰ってると思います。えにしの事を見てるのは、糸様でリョク様はえにしを怒ってばかりです」

リョク「やり取りを聞いていたのか?…それにあれは、えにしが俺の言う事を聞かなかったのが…」

くくる「それはえにしが悪いけど、えにしのやってる事を知ろうとしなかったでしょ?」

リョク「……」

くくる「あの二人が風邪を引かれる前に迎えに行って下さい。温かい物を用意して待っております」

リョク「…はぁ、神使が神を顎で使うとは…。おまけにおれは病人だぞ」

くくる「探しに行くだけなら、神通力は大していらないで筈ですが」

リョク「帰ったら、話合いが必要だな…」

くくる「はい、いってらっしゃいませ」

リョク「行ってくる…」

①③
雨の中。

糸「はぁ、はぁ…、何処に行ったのかな、えにしくん。雨降ってるし……えにしくんが行きそうな所、しらみつぶしに見ていくしかないか…。遠くには行かないと思うけど…。あー、傘持って来るんだったぁ!………あれ…あ!えにしくん!」

えにし「っ!?……糸様?」

糸「この公園にいたのね。助かったわー、ここ人あまり居ないし雨だから尚更ね。さ、早く帰りましょ?」

えにし「……」

糸「…あっち遊具の中で雨宿りしてからにする?あの遊具屋根が付いてるし」

えにし「…はい」

糸「よし、行こうか」

遊具の中。

えにし「……」

糸「服の中までびしょびしょだねぇ。タオル持って来れれば良かったけど、傘すら忘れたから意味ないか」

えにし「…」

糸「…リョク様って怒ってばっかで恐いね。でも、えにしくんはリョク様の事大好きなんだもんね?」

えにし「…はい。大好きです。でも、えにしはくくるちゃんみたいに何でも出来ないから…」

糸「えにしくんは土地をパトロールしてたんでしょ?悪い事が起きない様に…」

えにし「はい、この土地で悪さをする下級妖怪達がいるんですが、そいつらに注意をしていたんです。えにしは神使だけどあまり強くないから…たまに喧嘩になっちゃって、怪我するけど…」

糸「え、喧嘩…!?じゃあ、その怪我は喧嘩で?」

えにし「そうですけど、喧嘩する事はあんまりないですよ。転けて怪我する方が多いです」

糸「へー…。でも、凄いね、えにしくん…」

えにし「凄くありません。リョク様が元気な時は境内に居るだけで下級妖怪達は悪い事をしないくらいですから」

糸「えー、リョク様すご」

えにし「でも、今はそれが出来ないから…土地をパトロールしてたんです」

糸「何でリョク様に言ってないの?くくるちゃんには?」

えにし「くくるちゃんには言いました。出来れば止める様にも…でも、止めたら人間に危険が及ぶかもしれない。そう思うと止められなくて…」

糸「…そっか、悪い妖怪に襲われるのって怖いもんね。私も経験ある…もし、私以外に見える子がいたら…そんな目にあって欲しくないもん…。あんな怖い事、経験して欲しくない…」

えにし「やはりお優しいですね、糸様は」

糸「優しいって言うか…優しくしたいんだよね。この目に対して私が優しくされなかったから。私と同じ子が居たら、優しくして仲良くしたいの」

えにし「糸様…」

糸「だから、私を受け入れてくれてる、えにしくんとリョク様には仲良く居て欲しい。嫌なんだ。大好きな人達が悲しんでるの」

えにし「……妖怪は気性が荒いのが多いとリョク様から常々言われていたので、言い出し辛くて…」

糸「そっか…リョク様の性格ならまた怒りそうだもんね……でも、それは心配だから怒るんだろうなぁ。リョク様はくくるちゃんとえにしくんを比べるけど、本当はくくるちゃんもえにしくんも大事に思ってる。素直じゃないだけ」

えにし「それは…分かって…ます。でも、……」

糸「頭固いから、話を聞いてくれるか分かんないもんねぇ、リョク様…」

えにし「はい…」

糸「……」

えにし「……」

糸「…雨、強くなって来たね。まだ帰りたくない?」

えにし「……」

糸「私が話してあげるから…帰らない?」

えにし「……」

糸「…うーん、なら今日はうちに来る?」

えにし「え?」

糸「一回頭を冷やす必要があるわ、えにしくんもリョク様も。だから今日は私の家でお泊まりしよ?」

えにし「……いいのですか?」

糸「うん、いいよ!」

①④

リョク「ダメに決まってるだろ」

糸「おわ!?」

えにし「り…リョク様!?」

糸「びっくりしたぁ!いつの間にいたのあんた!?」

リョク「俺の力を使えば見つけるのなんて容易い。お前らがこの遊具の中に入った辺りから気配を消して話は聞いていた」

糸「ずっと聞いてたんかい!てか、回復仕切ってないのに力使ったの!?雨こんな降ってるのに体調悪化するわよ!?」

リョク「……くくるに焚き付けられただけだし、大して力も使ってない」

えにし「リョク様…」

リョク「…話は聞いていた。今回は、ちゃんと…。…今まですまなかったな、えにし」

えにし「い、いえ…だってえにしが悪いから…」

リョク「あぁ、お前が悪いことも俺が悪いこともある。だから帰ってちゃんと話し合おう?糸と話をして落ち着いたろ?」

えにし「…はい」

リョク「俺も話を聞いていてだいぶ冷静になった。くくるからも話を聞いたし…これ以上は本当に風邪を引く。そっちの方が、俺は心配だ」

えにし「……」

糸「帰ろう、えにしくん」

えにし「……帰っていいんですか?リョク様…」

リョク「良いに決まっている。お前はうちの神使だ。俺の代わりに…いつもありがとうな、えにし」

えにし「……はい!」

①⑤
裏境内。

リョク「帰ったぞ、くくる」

糸「ただいまー」

くくる「リョク様!糸様も。…えにし?」

リョク「疲れて寝てしまった様だ」

糸「びしょびしょのえにしくんをおぶったからリョク様も背中濡れちゃったね。くくるちゃん、タオルある?」

リョク「悪いが、着替えも頼む」

くくる「お風呂の用意もして来ます!」

糸「あ、私も手伝う…」

くくる「先にタオルをお持ちしますので、中に上がらないでください!」

糸「ご、ごめん…」

くくる「すぐにお持ちしますので、少々お待ち下さい!」

奥へ去るくくる。

糸「はぁ、服びしょびしょ〜、帰ってお母さんにどう言い訳しよ〜…」

リョク「今日は泊まるか?」

糸「ありがたい申し出だけど、私友達いないから…親がなんて言うか…」

リョク「友人だろ、えにしとくくるとは…」

糸「…いいの?」

リョク「この俺が許可を出したんだ。今日だけだぞ」

糸「後でお母さんに連絡する」

リョク「うむ」

糸「…ありがと」

リョク「……糸」

糸「ん?」

リョク「人間であるお前が此処まで干渉してくるとは思っていなかった…えにしの事色々とありがとう」

糸「……」

リョク「なんだその鳩が豆鉄砲くらった様な顔は…」

糸「リョク様からありがとうって言われるって、なんかむず痒いね」

リョク「前言撤回だ、クソガキ」

糸「冗談だって……放っておけなかっただけ。多分えにしくんと出会ってから、ずっとリョク様を心配してたえにしくんの事を…放って置けなかった」

リョク「…お人好しだな」

糸「かもね。でも、別に私は嫌いじゃないよ。私のこの性格…」

リョク「あぁ、少し無鉄砲だが、悪くないと思う」

糸「へへ」

戻ってくる、くくる。

くくる「お待たせしました!タオルです、糸様」

糸「ありがとう、くくるちゃん」

くくる「先にえにしを寝室に運びましょう。そしたら湯浴みの方を」

リョク「あぁ…糸、先に入れ。お前の方が雨で体が冷えてるだろ」

糸「では、お言葉に甘えて〜」

くくる「服もある物ですが用意します。今のお召し物も早く乾かさないと…」

リョク「泊まる予定だからな。しっかり乾かしてやってくれ」

くくる「え、…はい、分かりました!こちらへ、糸様」

糸「ありがとー」

リョク「…糸」

糸「ん?」

リョク「お前、良縁の予感だ。俺たち以外とのな…」

糸「それって…」

リョク「それはお前次第だが、これからもえにしと遊んでやってくれ。そしたら運気は上がる」

糸「…うん!」

リョク「お前は、俺たちを変えた。次はお前の番となる。焦らず、気負い過ぎず、その縁を見定めた時、それは長く永く続く、良縁となるだろう」

糸「うん、ありがとう神様!」

くくる「…さぁ、こちらへ」

糸「うん」

風呂場へ去る二人。

リョク「…これから少しづつ、俺たちも変わっていこうな、えにし」

えにし「んぅ…リョク…さまぁ…えにし……リョク様の…為に……んんぅ…」

リョク「…あぁ、ありがとう」

①⑥
後日、公園。

えにし「それでね、それでね!今は妖怪達に舐められない様にリョク様に稽古を付けて貰ってるんだ!」

糸「そっか、良かったね」

えにし「はい!それもこれも全部糸様のお陰です」

糸「そんな事ないよ。えにしくんが頑張ってリョク様とお話したからでしょ?」

えにし「でも、きっかけをくれたのは糸様です!糸様、ありがとうございます!」

糸「えへへ…そう言われると悪い気はしないなぁ♪」

えにし「では、そろそろ裏境内に向かいましょうか」

糸「放課後、学校まで迎えに来てくれるなんて思ってなかったからびっくりしたー。慌てて公園まで来ちゃったもんね」

えにし「ごめんなさい…。早く糸様に会いたくて…」

糸「…怒ってないよ。びっくりしただけで、迎えに来てくれてとっても嬉しかったから」

えにし「ほんとですか?」

糸「本当に決まってるじゃん」

えにし「やったぁ!」

糸「へへっ」

二人に近付く人影。

結依「あ、あの…!」

糸「え?」

えにし「んぅ?」

結依「あ、あ……」

糸「えっと…どちら様?私と同じ制服だけど、同じ学校の人?」

結依「あ、はい…青木結依と言います…2年C組で」

糸「え、隣のクラス!?…私は朱音糸。B組よ」

えにし「えにしはえにしー」

糸「…ふっ、あ!ごめん…」

結依「朱音さんとえにしくん?初めまして…」

糸「うん、初めましてー………え?」

えにし「え?」

結依「え?」

糸「え、青木さん…もしかしてだけど…私以外に何か見えてる?」

結依「え?朱音さんの隣に大きな動物の耳と尻尾をした男の子の事?やっぱり、この子って幽霊や妖怪の類?」

糸「え!?えにしくんの事見えてるの!?」

えにし「えにしは幽霊でも妖怪でもありません!えにしは神様の使い、神使です!」

結依「そ、そうなんだ、ごめんね!」

糸「うっそ…かなり身近な所に同じ目を持った子が居るとは…」

結依「私もびっくり…さっき学校の校門でえにしくんに話しかけられてる朱音さんを見つけて、まさかと思って後を追って来ちゃったの…」

糸「そうなんだ…いやー、分かんないもんだねぇ!」

結依「ふふっ、そうだね…」

えにし「……良縁だ」

糸「え?」

えにし「良縁!糸様と結依様、良縁です!」

糸「…え、…あっ!……そっか。良縁かぁ…」

結依「良縁…?」

糸「青木さん、連絡先交換しない?ヤバいのが見える者同士、意見交換として連絡取り合おうよ」

結依「え!いいんですか?」

糸「いーよいーよ!この縁、大事にしたいんだ!」

結依「縁…。……はい!宜しくお願いします、朱音さん」

糸「よろしく!」

えにし「糸様に…糸様に人間のお友達がぁ…!急いでリョク様とくくるちゃんに報告しなきゃー!」

糸「えぇ!?気が早過ぎでしょ!ちょっと待ってえにしくん!…あーもう、来て青木さん!」

結依「え、ど、何処へ!?」

糸「縁結びの偏屈神様の所!」


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