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【声劇台本】乙女ゲームの主人公に転生したらしいんだけど、悪役令嬢がいい子過ぎる!(男1:女4:不問1)

登場人物(男:1、女:4、不問:1)

・スフィア・ミレイニ/女
現代の日本から乙女ゲームの世界に転生し、立場は主人公。学年は高等部。誰にでも優しくまっすぐな性格。人が困ってたら放って置けない。鈍感。

・チェルシー・ブレーゼル/女
現代の日本から乙女ゲームの世界に転生し、立場はモブ令嬢。学年は高等部で、スフィア達より一つ上。ゲーム好きでお調子者。行動力に長けていて、スフィアに助言をしてくれる。

・ヴィオラ・クラエッタ/女
乙女ゲームの登場人物で、立場は悪役令嬢。リアム王子の婚約者。学年高等部で、スフィアと同じクラス。気品はあるが、誰にでも平等に思いやる優しい性格。

・リアム・ヴィンネルト/男
乙女ゲームの登場人物で、立場は攻略対象である第一王子。学年は高等部で、スフィアとは同級生。毅然とした立ち振る舞いだが、好きな相手には言葉足らずな所がある。

・ルーイ・ヴィンネルト/不問
乙女ゲームの登場人物で、立場は隠し攻略対象である第二王子。リアムの弟。学年は小学部で、よく高等部に遊びに来ている。少し臆病だが、みんなの事が大好きでみんなの癒し。

・アンナ/女
乙女ゲームの登場人物で、立場はルーイ専属のメイド。あまり感情に起伏はないが、ルーイがスフィア達と触れ合い、明るくなっていくにつれ、それを嬉しく思っている。

【時間】約60分
【あらすじ】平民だったスフィアは、母の再婚を機に貴族が通う学園に転入する事になった。そこで小学部の男の子を助けたら、王子が話しかけて来た。ここは乙女ゲーム『愛の誓い』の世界だった。しかし、登場した悪役令嬢と言う立場の令嬢はとても優しくいじめをする様な性格ではなくて……。


【本編】



スフィア「拝啓、元の世界のお父さんお母さん。私は目が覚めるととある異世界の人間に転生していました。新たな名前はスフィア・ミレイニ。記憶が戻ったのは数年前、私は平民の少女となっていて平和に暮らしていたのです。しかしある日こっちの世界のお母さんが再婚しました。ちなみにお父さんは私が生まれる直前に亡くなっているそうです。長く女手一つで私を育ててくれたお母さん。でも、その相手がなんと有数の貴族の男性らしく、私はその人のツテで……なんと王族も通うと言う超名門学校に転入が決まってしまったのです!元の世界のお父さんお母さん…こんなキラキラした学校なんて、まるでアニメやゲームの世界そのもの。私の立場って乙女ゲームの主人公みたいな立ち位置…それは考えすぎか…でも、私なんかがこんな世界で生きていける気がしないです……はぁ」

校門をくぐるスフィア。

スフィア「校舎までの道のりが長過ぎて、永遠と続いてるみたい…。うぅ、キラキラしすぎてお腹が痛いわ…。でもお母さんや新しいお父さんに言われてこんな凄い学校に通わせて貰ってるんだ…。頑張って…目立たないように生きなければ……」

ルーイ「うわぁ!」

スフィア「え?」

ルーイ「いたた……うぅ…」

スフィア「子供?ここ高等部の校舎なのに?…君、大丈夫?」

ルーイ「え…?」

スフィア「転んじゃった?怪我は?…膝ちょっと擦りむいちゃったのかぁ…血も少し出てるね…」

ルーイ「あ、あの…」

スフィア「お、ハンカチあった!水で洗わないといけないけど、一旦このハンカチを巻きつけとくね」

ルーイ「よ、汚れてしまいます…!」

スフィア「いいの、血で服が汚れるよりマシじゃない?」

ルーイ「あ、ありがとう…」

スフィア「ふふ、でも君何でここに?見た所小学部の子だよね?」

ルーイ「ぼ、僕は…」

リアム「ルーイ!」

アンナ「ルーイ様、大丈夫ですか?」

リアム「…君は」

スフィア「あ、えっと…保護者の方?この子、転んじゃったみたいで…」

アンナ「貴女、失礼ですがこのお方にその様な口の利き方は無礼に当たります!」

スフィア「え?」

リアム「アンナ、良い。…ルーイを助けてくれたのかい?見た所君、例の転入生かな?」

アンナ「リアム様がお話になっていたあの?」

スフィア「例の…ってどういうこと…ですか?」

リアム「元平民の転入生…と聞いているが」

スフィア「…私の事でしょうね」

ルーイ「君が…?」

リアム「…そうか。私はリアム・ヴェンネルト、弟のルーイが世話になったね。礼を言う」

スフィア「……ヴェンネルト…って、この国の名前……」

リアム「そうだよ。私はこの国の第一王子だからね」

スフィア「王子……じゃあその子は第二王子…?」

ルーイ「は、はい!」

アンナ「ですのでそのような口の利き方は…!」

スフィア「大変申し訳御座いませんー!!」

アンナ「え?」

スフィア「知らなかったとはいえ大変無礼な口を利きまくってほんとすいません!まじ、土下座でも靴を舐めるでもしますので、どうか死刑だけはぁ!こっちの世界の両親に申し訳なくなりますのでぇ!」

アンナ「え、ちょっと…そんな地面に額を擦り付けなくても…!」

ルーイ「お、お兄様!この人は僕を助けてくれただけなのでどうかお慈悲を…!」

リアム「…まずは全員話を聞こうか…。転入生、弟を助けてくれた君にそんな事はしないよ。むしろ人見知りのルーイが初対面の君を庇ってるんだ。顔を上げてくれ」

スフィア「は、はい…」

リアム「改めて、今日から君は私の同級生となる。名は?」

スフィア「す、スフィア・ミレイニと申しますです…」

リアム「スフィア。これからよろしくね」

スフィア「はい…」

リアム「アンナ、ルーイの手当をしないといけないだろうから医務室に行こう」

アンナ「分かりました。ルーイ様、体を抱えてよろしいですか?」

ルーイ「あ、歩けるので、大丈夫、です」

リアム「では、行こうか」

ルーイ「す、スフィア…ありがとう…!またね」

スフィア「あ、…はい……」

去っていく3人。



チェルシー「おっもしろい展開だねこりゃぁ…」

スフィア「え?」

チェルシー「おっと失礼、転入生ちゃん。私はチェルシー・ブレーゼル。君の一個上の学年かな」

スフィア「せ、先輩さん…?」

チェルシー「そうそう。で、君がスフィア嬢だね。いやぁ君かぁ…そうかそういえばこんな展開だった…!」

スフィア「え?え?…何のことですか?」

チェルシー「となると次の展開は…んふふぅ。私は一旦身を潜ませてもらうよ。て事で頑張って〜」

スフィア「はい!?ちょっと、何処行くの!?」

走り去るチェルシー。

ヴィオラ「そこの貴女!」

スフィア「今度は誰!?」

ヴィオラ「私はヴィオラ・クラエッタ。この学園に通うリアム殿下の許嫁ですわ」

スフィア「…お、おぉ」

ヴィオラ「貴女、先程第二王子であるルーイ様を助けたでしょう?」

スフィア「は、はひ…」

ヴィオラ「貴女…」

スフィア「え?なな、何かまずかったですか!?…何かこれ乙女ゲーム物の宣戦布告シーンみたいな感じがするのは気のせい?」

ヴィオラ「素晴らしい行動力でしたわ!」

スフィア「へ?」

ヴィオラ「第二王子とは言え、他の生徒は臆して近付けない。なのに貴女は救命を第一に考え、ルーイ様を助けハンカチに血が付く事に一切の躊躇(ためら)いも見せない…、なんて素晴らしいのでしょう!」

スフィア「……え?」

ヴィオラ「私、感動致しました。元平民だから少々心配しておりましたの。でも杞憂でしたわ。むしろ勝手な想像で悪い印象を持ってしまい申し訳ありません」

スフィア「いえ、そんな…頭を下げないで下さい…」

ヴィオラ「貴女、スフィアと言うのでしょう?よければ休み時間に校内を案内しますわ。貴女、私と同じクラスでしてよ」

スフィア「えぇ!?王子様の許嫁様と同じクラスなんすか!?」

ヴィオラ「驚く事でして?貴女も今や貴族階級なのよ」

スフィア「あ、そうか…いやでも…この展開は予想外というか…」

ヴィオラ「何を仰てるのかは分かりませんが、貴女はまず職員室へ行かなければならない筈ですわ。では、また教室でお会いしましょう。それでは」

ヴィオラ、去る。

スフィア「……なんだったんだ?」



チェルシー「この展開きちゃー!」

スフィア「おわぁ!びっくりしたぁ!?」

チェルシー「これこれぇ、乙女ゲーム『愛の誓い』の序盤!スフィアの言動がおかしいけどストーリーはまんま同じ〜」

スフィア「…チェルシー…先輩?」

チェルシー「おっと、主人公。ごめんね〜ただのモブ生徒がはしゃいじゃって〜」

スフィア「『愛の誓い』って、どこの会社のゲームっすか?」

チェルシー「え?」

スフィア「まさかとは思いますけど、ここ乙女ゲームの世界ですか?」

チェルシー「……君、前世の記憶があるのかい?」

スフィア「前世は日本生まれ日本育ちのしがないOLでした。ゲームはよくやってましたが知らないタイトルです」

チェルシー「…話が変わった。主人公スフィア、放課後裏庭に来てくれるかい?」

スフィア「…裏庭の場所…知らないっす」

チェルシー「…ヴィオラに聞いとけ」


放課後。

スフィア「で、あの…チェルシー先輩も前世の記憶をお持ちなんすか?」

チェルシー「順を追っていけば長くなる話だ。そこのベンチで喋ろうではないか。放課後なんだから、時間はたっぷりあるだろう?」

スフィア「そうですけど…。隣、失礼します」

チェルシー「まず、私も君も前世の記憶がある。しかも異世界転生というものを知っている者同士だ。しかし、スフィア嬢はこのゲームは知らないんだよな?」

スフィア「乙女ゲームに転生するって漫画は読んだ事ありますけど、実際にゲームをやった事はないですね。FPSとかオンライン対戦の方が好きでしたし」

チェルシー「そっちかぁ…私は一人寂しくお一人様用のゲームばかりだったからなぁ…」

スフィア「じゃあここって、やっぱり乙女ゲームの世界なんですか?」

チェルシー「そう、ここは前世で私もやったことのある『愛の誓い』と言う乙女ゲームだ。正直そこまでメジャーなゲームではないんだが、ストーリー展開は王道。元平民の主人公が王子や王族と関わりの深い者達と絆を深め恋へと発展させていくと言うシンデレラストーリーだ」

スフィア「ふむふむ」

チェルシー「最初ルーイ第二王子を助けただろう?そして王子であるリアムが登場する。ルーイを助けた事をきっかけにリアムとのフラグが立つんだ」

スフィア「じゃあ私は今主人公だから、この後も恋愛対象のキャラとフラグが立ってしまうって事?」

チェルシー「そういうことだ。ヴィオラも出てきたから他の登場人物も出て来るだろう…」

スフィア「ヴィオラって、王子の許嫁の…?」

チェルシー「聞いてくれたまえ!ヴィオラは尊いお方なんだ!」

スフィア「え、はぁ?」

チェルシー「ヴィオラはゲームでは悪役令嬢と言う立場で、最終的には主人公と王子から身を引く事になってしまうんだ。あんな優しくて面白いお方がなんと嘆かわしい事かっ…」

スフィア「はぁ…」

チェルシー「知ってるか?ゲームで登場する悪役令嬢は冷徹冷酷、もしくは我儘で小賢しい印象を受ける。しかしヴィオラはそういった一般的な悪役令嬢のイメージとは違い、優しく一途で面白い存在!それなのにラスト近くで急に主人公への陳腐な虐めを始めて、完全にリアムに愛想を尽かされ婚約を破棄!…何と言う雑な締めくくり…。私はまじでリアム攻略ルートだけは許さない…!」

スフィア「…めっちゃファンじゃないすか」

チェルシー「うん、めっちゃ好き」

スフィア「でも、…そっかぁ。乙女ゲームの転生漫画とか読んだ事ありますけど、私が知ってるのって悪役令嬢に転生して無双する系の奴なんですよね〜。でも私はまさかの主人公になっちゃってるし…知らない作品だから…これからどうしたら良いんでしょう?」

チェルシー「…ふーむ、スフィア嬢…君、王子に気があるか?」

スフィア「イケメンだとは思いましたけど、王子とフラグとかとんでもない」

チェルシー「では、同志よ!共にヴィオラたんの恋路を見守らないか!?」

スフィア「ヴィオラたん…?」

チェルシー「私はヴィオラたんが幸せになれるのなら、泥を啜ったって良い。勿論君の幸せも願おう。だから、…リアムには近づくな!」

スフィア「顔怖いっす…」

チェルシー「わかったね?」

スフィア「近付く気はありません」

チェルシー「よろしい、では転生仲間としてよろしく頼むよスフィア」

スフィア「いえっさー……」


翌日。

アンナ「おはようございます、スフィア・ミレイニ様」

スフィア「え?あ…昨日の…メイドさん?」

アンナ「私、ルーイ様専属の使用人、アンナと申します。学校が始まる前に訪ねてしまって申し訳ありません」

スフィア「いえいえ、全寮制ですから学園までは近いですし問題ないですよ?」

アンナ「それは良かった、そんなに時間はかかりませんので…少々宜しいでしょうか?」

スフィア「はい、何でしょう」

アンナ「ルーイ様」

ルーイ「お、おはよう…ございます…」

スフィア「あ、昨日の!」

ルーイ「ルーイ・ヴェンネルトと…申します…あの、これを…」

スフィア「なにー?…ハンカチ?」

ルーイ「き、昨日のハンカチ…血がついてしまったから…」

アンナ「代わりと言ってはなんですが、ルーイ様がお選びになったハンカチでございます」

スフィア「そんなー、わざわざ良いのに〜!…しかもめっちゃ高そうな…」

ルーイ「お、お礼がしたくて…」

スフィア「……そっか、ありがとうルーイ君」

ルーイ「あっ…は、はい…!」

アンナ「ふふ、良かったですね、ルーイ様」

ルーイ「…す、スフィア」

スフィア「ん?」

ルーイ「ぼ、僕と…友達になって下さい…!」

アンナ「まぁ!」

スフィア「え、私…元平民だよ?そんな奴が王子様と友達って…良いのかな?」

ルーイ「僕は、スフィアと友達になりたいの。…ダメ、ですか?」

スフィア「ダメ…じゃないけど…」

アンナ「是非、なってあげて下さい。ルーイ様は王子と言う立場にあらせられるので、同年代で親しい方が多くないのです。ですから、よく兄であるリアム様の下へ足繁く通っているのです」

スフィア「なるほど…アンナさんが良いって言うならいっか。じゃあ今日からルーイ君と私は友達だね!」

ルーイ「は、はい!」

アンナ「ではルーイ様、そろそろ学校の準備があります故、お部屋の方に戻りましょう」

ルーイ「うん!またねスフィア!」

スフィア「またねー」



チェルシー「おーっす主人公〜。今日の調子はどうだー?」

スフィア「おはようございます、先輩…一応先輩も貴族に転生してるんですよね?なんでそんなテンションでいれるんすか?」

チェルシー「まぁ、ちゃんとしろって言われたらちゃんとするよ?でも、今は推し語りを聞いて貰える貴重な存在がいるんだから、固苦しい喋り方はなしじゃん?」

スフィア「朝の通学からそのテンションはキツイですって…」

リアム「やぁ、おはよう」

チェルシー「りりり、リアム王子!?」

スフィア「えぇ!何で王子が!?お、おおおはようございます!」

リアム「そんな気を使わないで、立場があるとは言え私はこの学園の生徒だ。チェルシー・ブレーゼル、君だって私の先輩だろう?」

チェルシー「そそそ、そうですけど…」

スフィア「何で、リアム王子が朝から私たちに話しかけてくれるんですか…?」

リアム「学友に挨拶したら何か問題があるのかい?…なーんて、ただスフィアに感謝したくてね」

スフィア「私に、感謝…?」

リアム「今朝ルーイが君の部屋を尋ねただろう?ルーイが君の事を随分好いているようでね」

スフィア「あ、その様で…」

リアム「迷惑に思うならやめさせる様に言っておくよ。あの子はまだ幼い。感情で動いてしまう所があるんだ」

スフィア「そんな、迷惑だなんてとんでもない!ルーイ君とは友達になりましたし、とても嬉しいですよ」

リアム「そうか、なら私とも友達だね」

スフィア「…え?」

リアム「ルーイと友達なら私とも友達だろう?」

スフィア「…そう言うもの…なんすか?」

リアム「ルーイがあんなに懐くなんて思ってなかったから、私も君の事が気になるんだ。仲良くして欲しい」

チェルシー「…この展開…どう言う事だ?」

リアム「良ければチェルシー嬢も仲良くしてくれないか?」

チェルシー「え、…あ……はい」

リアム「では、私は生徒会の集まりがあるから先に行くよ。二人ともまた会おう」

スフィア「…行っちゃった」

チェルシー「この展開…知らないぞ…?」

スフィア「先輩、さっきからぶつぶつとどうしたんすか?」

チェルシー「いや、何だか違和感が強くてな…。こんな展開は見たことない気がする…」

スフィア「うーん、いくらゲームの世界とは言え全く同じ様に進むとは限らないんじゃないですか?前世の記憶があるとは言え、今生きてるのは生身の人間ですし」

チェルシー「…それもそうか…それは考え込んでも仕方ないな」

スフィア「まさか王子と友達になるとは思いませんでしたけど…」

チェルシー「しかしこれでリアムルートのフラグが完全に立ってしまったな…うぅ、どうすればヴィオラたんを幸せに出来るんだぁ!?」

スフィア「別に王子ルート行くつもりありませんて…」


半年後。

チェルシー「今日で約半年か…なんか…凄まじく怒涛の展開だったな」

スフィア「そっすね…毎日ヴィオラが話しかけてくれるし、王子と友達になってから王子を取り巻く攻略対象達とフラグが立ちまくるし…ゲームの中の主人公ってメンタル強くないすか?あんな美女やイケメン共に囲まれて……半年経ったとは言え私のHP2ですよ」

チェルシー「なんのHPだよ…。でも、モブの私まで攻略対象に近付けるとは思ってもなかったなぁ。あ〜生で浴びるイケメンオーラって魂が浄化されて天国まで飛ばされそうになるわぁ…」

ルーイ「…二人って、たまに二人だけの言葉を話しますね」

チェルシー「ルーイ氏は知らなくていいよぉ」

ルーイ「僕は仲間外れにされてるみたいで寂しいです」

スフィア「あー、ほっぺ膨らませて可愛い〜。先輩、心が浄化されるのってこういう事を言うんですよ〜」

チェルシー「浄化方法は人それぞれだっつーの。それより放課後なのに当然のごとく第二王子がいるってどういう状況?」

ルーイ「僕はスフィアの友達だからスフィアと一緒にいてもいいのです」

スフィア「えへへ〜」

チェルシー「随分懐かれてんね」

スフィア「子供にここまで好かれた事ないから新鮮で嬉しいです〜」

チェルシー「はぁ、しっかしスフィアはヒロインムーブかましまくってるから、今後の展開どうなるのか分からないな…」

スフィア「これ、誰とも付き合わないって選択出来るんすか?」

チェルシー「友情エンドはあったけど、面白みに欠けるな〜」

スフィア「いや、面白いで動く度胸はありませんよ」

ルーイ「ん?」

スフィア「あれ、あっちから誰か来た?」

チェルシー「あ、あれは…!」

ヴィオラ「…あら…先客がいらしたのね」

スフィア「ヴィオラ!」

ヴィオラ「ルーイ様も…みなさん、こちらでお喋りをしていらしたの?」

チェルシー「め、目の前に生ヴィオラたん…!」

ルーイ「…お姉ちゃん、どうしたんですか?何だか元気がない様に見えます」

スフィア「…そう言えば、ヴィオラはいつも明るく元気なのに…何かあったの?」

ヴィオラ「…個人的な事よ…あまり話せる事ではないわ」

スフィア「そんな、…そんな辛そうな顔をしてるのに放って置けと言う方が無理よ」

ヴィオラ「スフィア…」

ルーイ「そうですよ、お姉ちゃんには元気でいて欲しいんです!」

ヴィオラ「ルーイ様…」

チェルシー「…ヴィオラたん…、失礼、ヴィオラ様…貴女を慕い心配する者たちがここに居るのです。貴女はいづれ王妃になるお方、その様なお姿を見せたら誰しもが不安を抱えてしまう。毅然と振る舞うには悩みを吐き出す事も必要なのですよ。ここに居るのは貴女が信頼を置くスフィアとリアム殿下の弟君。そして貴女の大ファンである私。これほど頼れる人選はいないでしょう」

スフィア「ヴィオラを前にして格好付けとる」

チェルシー「話すだけ話してみませんか?」

ヴィオラ「そう…そうですわね…。ありがとう…確かチェルシー様でしたわね。リアム様とスフィアの友人の…お話は聞かせてもらってます」

チェルシー「んがぁ、ヴィオラたんに名前覚えられてるとは…!?」

ヴィオラ「…実は、最近リアム様がお忙しい様子で、全然会えていないの」

スフィア「王子と?」

ヴィオラ「会えたとしても会話は弾まず、気まずい沈黙が流れてしまって…私以外の方と話してる時は楽しそうなのに…」

スフィア「そんな事が…」

ヴィオラ「私の話がつまらないからなのでしょうけど…どうすれば良いのか分からないし……それ以外にも少々気がかりな事もあって……」

スフィア「気掛かりな事?」

ヴィオラ「いえ、これはおそらく気のせいですわ!…とにかく、リアム様との関係が悪くなると今後に支障をきたしますわね…」

ルーイ「お姉ちゃん…」

スフィア「どうしよう先輩…」

チェルシー「うーん、リアム王子がどう思ってるか分からんから何とも言えないね…」

ヴィオラ「そう…ですわよね。すみません、私とリアム様の問題なのに巻き込んでしまって…。頑張って関係を良い物にしてみせますわ。それでは私はこれで…」

スフィア「あ、ヴィオラ……」



ルーイ「お姉ちゃん、大丈夫かな?」

チェルシー「…ヴィオラたんてさ、幼い頃リアムと婚姻を結んでるんだけど、ヴィオラたんはリアムに一目惚れしたんだ。別に二人の仲はよくも悪くもなかったんけどそこの詳しい事はゲームでは言及されてなかったんだよ」

スフィア「じゃあ二人の関係性は明確にはよく分からないってことですか?」

チェルシー「スフィアがリアムルートをとってないから、二人の関係はまた違って来ると思うんだ。でも、実際に聞いた方が早い気がするな」

スフィア「聞いた方が早いって…王子に?」

チェルシー「それしかないさ。都合がいい事に私たちはリアムの友達だし、弟のルーイもいる。話くらいは聞けると思う」

スフィア「…確かに王子がヴィオラをどう思ってるか知れたら…ヴィオラの悩みも解消されるでしょうけど…」

ルーイ「聞きに行きましょうスフィア、僕…リアムお兄様とヴィオラお姉ちゃんが仲良くないのは嫌です」

スフィア「ルーイ君…そうだね。大好きな二人には幸せになって欲しいもんね!先輩、早速王子の所に行きましょう」

チェルシー「あー、それなんだが私は野暮用があるから二人で行ってくれ」

スフィア「野暮用?」

チェルシー「うん、…大した事じゃないよ」

スフィア「分かりました…じゃあ行こうかルーイ君」

ルーイ「はい!」

チェルシー「…ゲーム通りなら来週に学園でも開かれるリアムの生誕パーティーだが……」


生徒会室。

スフィア「忙しいのに時間を取ってくれて、ありがとうリアム王子」

リアム「いいや、友人と弟からの誘いを断る理由はないさ。で、私に話って一体なんだい?」

スフィア「単刀直入に聞くわ。王子はヴィオラの事をどう思ってるの?」

リアム「え、ヴィオラ…?」

ルーイ「ヴィオラお姉ちゃんがお兄様と上手く会話が続かないと悩んでいました」

リアム「ヴィオラが…そうか…」

スフィア「ヴィオラは王子を慕ってる。でも、王子の気持ちが分からないと言ってたの。お節介だと思うけど、王子はヴィオラをどう思ってるのか聞きに来たの」

リアム「…心配をかけたようですまない…。何も問題はないよ」

スフィア「問題がなければヴィオラが辛そうな顔しないわ」

リアム「……」

ルーイ「お兄様は、お姉ちゃんとの結婚は嫌なんですか?」

リアム「は?」

ルーイ「言い淀むのはお姉ちゃんを好いていないと受け取られてしまいます。もし、好きな人にその様な態度を取られたら気が気ではありません。ましてやお姉ちゃんはお兄様の婚約者。一番近い所にいる筈の相手を不安にさせるなど、次期国王として恥ずべき事ではありませんか?」

スフィア「ルーイ君…」

リアム「驚いた…随分言う様になったね…ルーイ」

ルーイ「……お姉ちゃんの気持ちを自分に置き換えただけです。もしも、僕の大好きな人が僕にだけ冷たい態度を取るのならそんな悲しい事はありません…。それはお姉ちゃんが今味わっている事…。僕は元気で明るくて優しいヴィオラお姉ちゃんが好きだから…」

リアム「…すまない。スフィア、ルーイ…いらぬ心配をかけてるようだ…」

スフィア「…王子は何故ヴィオラに冷たい態度を取るの?」

リアム「好きでその様な態度を取ってるわけではない。……上手く、喋れないんだ…」

スフィア「え?」

リアム「…ヴィオラは私の大切な婚約者だ。しかし、私は好きな相手にはどうも上手く喋れず黙ってしまうんだ…。すると段々ヴィオラも口数を減らしていってしまい……沈黙が続くのだ…」

スフィア「好きだから…緊張して喋れないの?」

リアム「あぁ…」

ルーイ「意外…お兄様はいつも毅然としてるから…そんなイメージなかったです」

リアム「私だって王子とは言え人間だ。上手くいかない時だってあるさ。それがヴィオラを前にした時ってだけだ…」

スフィア「うーん、両片思いってやつかしら?…じゃあ好意的な気持ちを伝えた事は?」

リアム「…幼少の頃以来ないかもしれないな…パーティとかでは一緒にいる様にしてるが、必要以上の会話はここ最近ないし…」

スフィア「えー…」

ルーイ「何で好きなのにそんな素っ気ない態度を取るんですか」

リアム「…ヴィオラは…歳を重ねる度に美しくなっている。将来王族に加わるにあたり、日々の努力も欠かさない素晴らしい女性だ。それが…堪らなく愛おしいんだが、上手く言葉を紡げないんだ。…どう言えば私の気持ちを言語化出来るのか分からずにいる。…分かっている。このままではいけないと…しかし、どうしようもないのもまた事実……」

スフィア「どうしようもないって…さっきから言い訳染みた事並べてるだけじゃない!」

ルーイ「す、スフィア…?」

スフィア「私はヴィオラの為に王子の気持ちを聞きに来たの。なのに話を聞きゃ壮大な惚気(のろけ)話じゃない。そりゃあ好きな人は特別だから上手く喋れないって気持ちはよく分かるわ。でも、ヴィオラは今凄く悲しんでいる。あの元気で優しいヴィオラが…」

リアム「……」

スフィア「王子がヴィオラを好いてないなら、それも仕方ないとは思ってたけど、好きなのね!?」

リアム「…うん」

スフィア「声が小さい!好きなの!?」

リアム「好きだ」

スフィア「…それで良いのよ」


扉の前で立ち尽くすヴィオラ。

ヴィオラ「あっ…え……」

スフィア「え!?」

ルーイ「ヴィオラお姉ちゃん!?いつからここに…」

ヴィオラ「…たった今…ですわ…ご、ごめんなさい、私その、聞くつもりはなくって…」

スフィア「え、なんか勘違いしてる!?」

リアム「ヴィオラ、今のは…!」

ヴィオラ「ごめんなさい!」

スフィア「あ、待って、ヴィオラ!」

ルーイ「お兄様、今すぐお姉ちゃんを追って下さい!」

リアム「…今行ったところで…私が上手く言葉を言えるものか…」

スフィア「っ、…この弱虫王子!好きな相手を泣かすな!ヴィオラー、待ってー!」

ルーイ「スフィア!……リアムお兄様、僕もスフィアと同意見です。待って下さい!スフィアー、お姉ちゃんー」

リアム「……」

①①

スフィア「…見失った…」

ルーイ「スフィア、お姉ちゃんは?」

スフィア「見失っちゃった…。王子は来なかったのね」

ルーイ「うん…」

アンナ「あら、ルーイ様、こちらにいらしたのですか?スフィア様も」

ルーイ「アンナ!」

スフィア「こんにちはアンナさん」

アンナ「ご無沙汰しております。ルーイ様をお迎えに参りまして裏庭に行ったのですが、チェルシー様にリアム様の所に向かったとお聞きしまして」

ルーイ「そうだったんだ。…もう用事は済んだから帰るよ、アンナ」

アンナ「かしこまりました」

ルーイ「じゃあまたね、スフィア」

スフィア「うん、またね」

アンナ「……あの、つかぬ事をお伺いしますが、スフィア様学園生活はいかがでしょうか?」

スフィア「え?いかが…って、普通に楽しいですよ?まぁ、今日はちょっと辛い事はあったけど…」

アンナ「そうですか…。いえ、少々気になる事を耳にしたもので…」

スフィア「気になる事?」

アンナ「…スフィア様がクラスメイトにいじめられてると言う噂です」

ルーイ「え!そうなの!?」

スフィア「全く身に覚えがない」

アンナ「そうなんですか?なら良いのですが…」

スフィア「…何でそんな噂が?」

アンナ「私は聞いただけなので分かりませんが、やはり元平民というのと王子達と仲が良い事をよく思っていない方がいらっしゃるのではないでしょうか?」

スフィア「なるほど…?でも、私誰からもいじめられてないし、むしろヴィオラとか友達いるし…」

アンナ「では根も葉もない噂なのですね。なら良かったです」

ルーイ「スフィア、もしいじめられたら言って!僕がスフィアを守るからね!」

スフィア「えー、ありがと〜ルーイ君!」

ルーイ「本気なんだけど…」

アンナ「では、参りましょうかルーイ様。失礼します、スフィア様」

ルーイ「また明日も来るから!」

スフィア「うん、バイバーイ」

ルーイとアンナ、去る。

スフィア「……いじめなんて、何で?」

①②
翌日。

チェルシー「…まじかぁ。昨日そんな事があったとはなぁ…つーか、そんなアニメみたいなオチある?」

スフィア「実際起こったんスよ。勘違いだって言おうにも、今日はヴィオラ学校休んでたし…」

チェルシー「…そうか」

スフィア「一体どうすれば良いんでしょう?私に関する変な噂もあるみたいだし…」

チェルシー「…いじめか?」

スフィア「え?先輩知ってるんすか?」

チェルシー「あ、あぁ…私も聞いた程度だがな。それは真実か?」

スフィア「な訳ないですって。ヴィオラのおかげで平和そのものッスよ」

チェルシー「……てなると」

スフィア「先輩?」

チェルシー「…スフィア、確認だがリアムルートは目指してないよな?」

スフィア「はぁ?目指してませんよ。王子にはヴィオラがいるんですから!」

チェルシー「…分かった。やはりこれは私の宿命らしい…」

スフィア「何言ってんすか?」

チェルシー「スフィア!私は私の運命を真っ当してみせる」

スフィア「だから何を…」

チェルシー「モブ令嬢としてヴィオラたんを救う!それが私のなすべきことだ!来週のパーティー、そこが最終決戦だ!」

スフィア「来週のパーティー…王子の誕生日パーティーを学園内でも行うって奴っすよね?流石王族…」

チェルシー「そこはヴィオラたんが婚約破棄を言い渡されるタイミングなんだ」

スフィア「え」

チェルシー「だが、スフィアはリアムルートを進んでない。このまま行けば婚約破棄はないが、婚約破棄の原因であるスフィアがいじめられてると言う噂は流れてる…」

スフィア「そう言えば、ヴィオラは私へのいじめを行って王子に愛想を尽かされるって言ってましたね…。でも、ヴィオラは私をいじめてないし、王子もヴィオラを好きなのに?」

チェルシー「あくまでゲーム通りに進めばだ。でも、今ここが私達のリアルの世界。ヴィオラと王子の幸せを願うなら、絶対に二人の婚約破棄を阻止したい。そして、勘違いを正して寄りを戻させるんだ」

スフィア「はい!」

チェルシー「裏作業は私に任せろ。スフィアはリアムやヴィオラたんの様子を見ていてくれ。出来ればヴィオラたんの誤解を解ければ良いが…」

スフィア「逃げられたらどうしようもないですけど、頑張ってみます」

チェルシー「絶対ハッピーエンドを迎えるぞ!」

スフィア「おー!」

①③
数日後。

リアム「皆、今日は私の生誕パーティーに参加してくれて感謝する。存分に楽しんでくれると私としても嬉しい限りだーー」

スフィア「…何も出来ずにパーティーが始まっちゃったぁ…。パーティー前だからみんな忙しそうで全然近づけなかったしなぁ…王子はちょっと元気なさそうだし、隣に立ってるヴィオラも顔が引き攣ってない?あれじゃあ全く仲良さそうに見えない…一体どうしたら…」

ルーイ「大丈夫?スフィア」

スフィア「ルーイ君!君も来てたの?…あれ、アンナさんは?」

ルーイ「用事があるとかでスフィアを探して一緒にいる様に言われた」

スフィア「え、アンナさんがルーイ君を私に任せて用事?なんなんだろう、気になるけど」

ルーイ「僕はスフィアと二人で嬉しいよ。…でも、元気ないね。お兄様達、まだ誤解が解けてないの?」

スフィア「うん、今日中に誤解を解きたいんだけど…」

ルーイ「…話しかけに行こう!僕が付いてるからお兄様達もお話聞いてくれるかもしれないよ」

スフィア「ほんと?ありがとうルーイ君、王子も挨拶が終わったみたいだし、早速行こう」

ルーイ「うん」

リアムとヴィオラのそばに行く二人。

スフィア「王子、誕生日おめでとう!ヴィオラ、今日はとても綺麗だね」

リアム「あ、ありがとうスフィア…」

ヴィオラ「スフィア……ありがとうございます」

スフィア「……あのさ」

ヴィオラ「スフィア、リアム様をお願いしてもよろしいかしら?」

スフィア「え?」

リアム「ヴィオラ?一体何を…」

ヴィオラ「私、耐えられませんの。今の環境が…。リアム様がスフィアに好意を寄せている事、スフィアをいじめてる主犯が私だと噂されてる事が…」

リアム「何!?」

スフィア「えぇ!?ちょっと待って、ヴィオラ!」

ヴィオラ「だから私、この学園を去ります。婚約も取り消す様に掛け合います!こんな浅ましい私はリアム様にふさわしくありません…。友達であるスフィアに酷い事をした覚えはありませんが…何か気に触る事をしてしまったのでしょう…これ以上悪い噂が流れれば、スフィアにも悪いですわ」

スフィア「待って待って!何言ってんの?王子が私を好き?ヴィオラが私をいじめてる?な訳ないでしょ!?」

ルーイ「お姉ちゃんリアムお兄様がスフィアを好きだって言ったのは誤解なんだよ!」

リアム「そうだ、スフィアの事は友人として好きだが、恋愛感情ではない。私は……私は……その」

スフィア「あーもうまた言い淀む!良い加減にしなさいよ!?」

リアム「っ…」

ルーイ「ちょっ、大きな声で話してたら周りがざわついてきたよ…」

ヴィオラ「…でも、あの時スフィアに向かって好きだと仰っていたではないですか?」

スフィア「それはタイミングが悪かったの!私の聞き方も悪かったし、ヴィオラが来ることを想定してなかった。…本当にごめん。でもね、私はヴィオラが大好きだからヴィオラを助けようと思ってあの時王子の所へ行ったの。確認したい事があったから」

ヴィオラ「確認…?」

ルーイ「スフィア、ここからはお兄様から言って貰おう」

スフィア「…そうだね、良い?王子」

リアム「……」

スフィア「このまま何も言わないなら本当に婚約破棄されるかもしれないよ?」

リアム「っ…それは…」

ヴィオラ「……」

リアム「…分かった」

①④

ヴィオラ「…リアム様?」

リアム「…ヴィオラ、すまない」

ヴィオラ「え?」

リアム「不安な思いをさせていた事はずっと分かっていた。でも、私から何も言えなかったのは情けない話だ。ヴィオラ…その、私は……」

スフィア「言え、言えぇ…!」

ルーイ「言って兄様ぁ…!」

リアム「っ〜……、ヴィオラ、婚約破棄は認めない。お前は俺の妻となるんだ!」

ヴィオラ「え!…でも…、リアム様はスフィアを…」

リアム「あれは間違いだ。あの時スフィアに……お前を、好きかと聞かれたからそう答えたまでだ。まるでスフィアに告白している様に見えるタイミングをお前が見てしまっただけだ!勘違いなんだ!俺が好きなのは……俺が、好き…なのは…ヴィオラ、君だけだ…!」

ヴィオラ「っ…!?」

リアム「俺が妻に迎えたいのは君しかいない。君の美しさも優しさも努力も全てが愛おしい。だから、婚約を解消するなんて言わないでくれ」

ヴィオラ「リアム様…私もリアム様を慕っております。その様なお言葉…嬉しいですわ…!」

スフィア「よっしゃぁ!」

ルーイ「勘違いを直せたね!」

ヴィオラ「ですが、…私はスフィアをいじめたと噂があります…そんな噂がある女など、リアム様に相応しくないのではないでしょうか?」

スフィア「いや、だからヴィオラにいじめられた覚えはないんだって!」

リアム「ヴィオラ、君も身に覚えがないんだろう?…まさか、そうまでして俺との結婚が嫌なのか…!?」

ヴィオラ「そんな訳ありません!私は始めてお会いした時から貴方様をお慕い申ております!」

リアム「ヴィ、ヴィオラ…実は私も、初めて会った時から君を…」

ヴィオラ「そ、そうなんですの…!」

リアム「ヴィオラ…!」

ヴィオラ「リアム様…!」

スフィア「悪いけど、一旦二人の世界から帰って来て!」

ルーイ「じゃあ噂の元凶は一体何処から…?」

リアム「誰も心辺りはないのか?」

スフィア「全く…」

ヴィオラ「ありませんわ…」

全員「……?」

①⑤
会場の扉が開く。

チェルシー「呼ばれて参上!私が登場ー!!」

スフィア「チェルシー先輩!?…誰も呼んでないッス」

アンナ「私もおります。遅れてしまい申し訳ありません」

ルーイ「アンナ!」

リアム「珍しい組み合わせだね…。勢いよく会場の扉を開けて派手な登場だけど…、何かあったのかい?」

チェルシー「アンナさんと協力して、スフィアがいじめられてるって噂の謎を暴いていたのよ」

ヴィオラ「なんですって!」

アンナ「私とチェルシー様は噂の出所を調べていました。その結果がこちらです」

数枚の紙を渡す。

リアム「この紙は一体何だ?……この学園の生徒の名前が記載されているが…」

チェルシー「そいつらが、ヴィオラたんがスフィアをいじめていたと言う噂を流した奴らです」

スフィア「え!?」

ヴィオラ「…同じクラスの方やよくお話してくださった方の名前まで…これは本当の事なんですの?」

チェルシー「…今、こそこそと顔を隠して会場から逃げようとしてる奴らは、ここに書いてある名前のご令嬢達ですよ」

ヴィオラ「一体何で…」

チェルシー「そんなの簡単です。元平民のスフィアが気に食わない。そしてそんな元平民に良くしてるヴィオラ様が許せなかったんですよ」

ヴィオラ「どうして…」

チェルシー「あいつらはヴィオラたんを未来の王妃としか見てない。何が望みか、そんなんヴィオラたんのバックだ。それが自分たちの物じゃなくスフィアの物になるのが嫌らしい」

ヴィオラ「…なんて傲慢な……。私は平民と言う立場であったスフィアを哀れに思っていましたけど、彼女の優しさや真っ直ぐさを見てお友達になりたいと思っただけですのに…!」

スフィア「ヴィオラ…」

リアム「これが本当なら学園の空気が悪くなるな…」

アンナ「名前は全てリストアップしております」

リアム「分かった。一度この者達を呼び出し、話を聞いてみよう。処罰はその後だ」

ルーイ「スフィアとお姉ちゃんを傷付けるなんて許せない!」

スフィア「まぁ、私は直接被害受けてないからなんとも言えないんだけど…」

アンナ「しかし、実害が出てからでは危険だったかもしれませんよ?」

スフィア「あー、そう考えるとそうか…未然に防いだって事だもんね」

チェルシー「ただ単にスフィアが鈍ちんなだけだったんじゃね?」

スフィア「先輩酷いッス!」

ヴィオラ「チェルシー、アンナ」

チェルシー「は、はい!?」

アンナ「何でしょう?ヴィオラ様」

ヴィオラ「どうもありがとう。二人のおかげでいじめの件も解決しましたわ」

リアム「この後は大変そうだけど、私からも礼を言う。ヴィオラを助けてくれてありがとう」

アンナ「身に余るお言葉…!お役に立てたのなら、光栄でございます」

チェルシー「ヴィ、ヴィヴィ…ヴィオラたんにありがとうって…ありがとうってぇ…」

ヴィオラ「チェルシー、あなたの行動力は本当に素晴らしいですわ!貴女がお友達で良かった…!」

チェルシー「………」

ヴィオラ「チェ、チェルシー?どうしたの?凄い顔で固まってしまいましたわ!」

スフィア「推しにお友達って言われてキャパオーバーしたな…」

ルーイ「ふふ、チェルシーって本当にお姉ちゃんが大好きなんだね」

リアム「しかし、これで引っかかっていた問題はなくなった…改めてパーティーを再開しようか」

ヴィオラ「はい!」

①⑥

スフィア「よっしゃー!これでハピエン〜!」

ルーイ「……」

アンナ「ルーイ様?いかがいたしました?」

ルーイ「…よし!」

スフィア「ほら、いつまでほうけてんスか先輩!」

チェルシー「……はっ!…あぁ、幸せ過ぎて意識がどっか行ってしまっていた…」

スフィア「しっかりして下さい。これで無事友情エンドですよ!色々トラブルはありましたけど、ヴィオラも王子と婚約解消されなくて良かったスね!」

チェルシー「そうだな…。ここまでこれたのは私に協力してくれたスフィアのおかげだ」

スフィア「こちらこそ…先輩の助言がなければどうなっていたか…」

チェルシー「まぁ、私好みの展開を突き進んだだけだ」

スフィア「…そう思うと一番傲慢なの先輩じゃないッスか」

チェルシー「まぁまぁ、今は友情ハピエンを噛み締めようぜ!」

スフィア「何か納得出来ない…」

ルーイ「スフィア!」

スフィア「ん?ルーイ君、どうしたの?」

ルーイ「ス、スフィア…その……」

スフィア「うん?」

チェルシー「……あれ?」

ルーイ「ぼ、僕…僕と……僕と結婚して下さい!!」

リアム「え!?」

ヴィオラ「えぇ!?」

アンナ「まぁ!」

スフィア「……はいぃぃ!?」

チェルシー「あーーーー!!」

ルーイ「チェルシー、うるさい!今僕は大事な告白をしてる所なんだよ!」

チェルシー「す、すいません…いや、この展開思い出したぞ!」

スフィア「え、どういう事ッスか?」

チェルシー「スフィア、最初ルーイを助けた時ハンカチを渡したよな?」

スフィア「はい…」

チェルシー「その後、ルーイにハンカチを貰ったか!?」

スフィア「あー、はい。ルーイ君が寮に来てくれて、新しいハンカチをくれました」

チェルシー「……マジか、超激レア運任せのルーイルート行ってたのか!?」

スフィア「……ルーイルート!?ルーイ君も攻略対象だったんスかぁ!?」

チェルシー「この私が何度挑戦しても攻略出来なかったイベントだ…そのせいでスッカリ忘れてたよ…。だから、知らない展開がチラホラあったんだな」

ルーイ「何の話をしてるか分かりませんが、スフィア、僕の求婚を受けてくれますか!?」

スフィア「えぇ!そんな結婚なんて…ルーイ君はまだ小さいし、私も学生だし…」

リアム「婚約なら今からでも早くないよ?私とヴィオラはルーイより小さい頃に婚約をしたんだから」

ヴィオラ「そうですわ。それにスフィアの階級なら王族との婚姻も問題ありません。何より私達のお友達なんですから、全力で応援いたします!ふふ、将来スフィアと義姉妹になりますわね!」

アンナ「スフィア様、ルーイ様をよろしくお願いします!」

スフィア「待て待て待て!何で求婚を受ける事になってんのよ!?」

ルーイ「え、スフィアは僕の事好きじゃないの…!?」

スフィア「えぇ!?そんな事はないけど…」

ルーイ「じゃあ、僕のお嫁さんになってくれる!?」

スフィア「うぅ…そんなキラキラした顔で迫って来ないで…!先輩、助けて下さい!」

チェルシー「すまん。このルートに入ったらルーイ攻略は確定なんだ」

スフィア「…つまり、逃げ道はないと?」

チェルシー「あぁ、良かったじゃないか。将来王族入りだぞ!是非、仲良くしてくれ」

スフィア「王族入りは荷が重いってぇ!」

ルーイ「スフィア、答えて下さい!」

スフィア「もうちょっと考えさせてぇぇえ!!」

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