携わって知ったモノづくりの大変さ。だからこそネパールのみんなが心から誇れる商品をつくりたい。ネパール担当牛留 早亜彩
仕事内容や大変なこと、やりがいなど、マザーハウスではたらくリアルをスタッフに聞く「スタッフインタビュー」。
今回はマザーハウスに新卒で入社し、現在はマザーハウス事業でネパール担当をしている、牛留 早亜彩に話を聞きました。
プロフィール
学生アルバイトを経験し、社会人としての一歩もマザーハウスを選んだ理由を教えてください。
もともと、大学で開発学を勉強していて、将来は途上国と関わる仕事がしたいと思っていました。どんな仕事がしたいかを考えながら、JICAの開発コンサルインターンなどにも挑戦してみたんですが…。開発系だと、プロジェクトの期間が終わったら帰国することや、地域に継続的に関われなかったりすることがあり、どうしても、支援する側、される側という上下関係ができているような気がして、対等に関わることができないことに違和感を感じていたんです。
そんな時に、マザーハウスの本を読んだんです。私は、大学の先生の影響もあって、エシカルファッションをテーマに卒論の準備を始めました。その時に、代表・山口の著書、「裸でも生きる」を参考文献として読んで、マザーハウスのことが気になってアルバイトを始めたのがきっかけでした。
もともと持っていた、支援のあり方や、一つ一つの国が途上国としてくくられてしまうこと自体への違和感。それに加えて、マザーハウスでアルバイトとして働くなかで、改めて、一つ一つの国、人が輝ける可能性を持っているという実感とが合わさって、ビジネスを通して、対等な関係で仕事をしたい、商品を通じた自分の仕事で、途上国の可能性を証明していきたいと思って、マザーハウスを選びました。
今は商品をつくり、販売するまで、幅の広いお仕事ですが、大変さ、おもしろさはどんなところですか?
商品開発から、店舗での販売まで、広い軸でモノづくりの上流から下流まで関われることが、おもしろいし、大変だなとも思っています。
モノを一からつくる中で、想像していた通りのものができたり、作った商品へのお客様の反応が良いと、すごく嬉しいんですけど、それをつくり上げるまでのプロセスの大変さと、商品として出したあと、「お客様に気に入っていただけるかな?」という不安は結構大きくて、そのおもしろさと大変さはいつも両隣にあるんですよね。
まさに生産地とお客様を橋渡しする仕事ですよね。生産現場との業務ならではの苦労ややりがいもありますか?
そうですね。生産地のスタッフと一緒に、常に対等に議論をしながら、新しいチャレンジをし続けられることは、入社のときに描いていた姿だなと思います。
ネパールで作る商品のレベルは、年々上がってきてはいるのですが、何か品質上の指摘をしたり、改善をお願いすると、「手仕事だから仕方がないと思う」とか「これ以上は難しいよ」と、一度返してくることが、たまにあるんです。「手仕事」ということに対して、もちろん誇りを持って作ってくれているんだけど、反面、それを言い訳にもできてしまうんですよね。
でも、そういう時は、すぐさまテレビ電話をして、直接顔を見て話します。「お客様がこう思うから、改善しなきゃいけないよね」と誰のために、何のためにつくっているかっていう原点に立ち返ることと、「じゃあ、こうしたらどうだろう」と、一緒にアイデアを出して話し合うようにしているんです。
最初のころは、「仕方ないよ」という反応を受け取ったら、まずショック受けて、「どうしよう、どうしよう」とただただ、あたふたしていたんですけどね。
同じ目線で、相手の立場に立って話すことを大事にしているんですね。
はい、何年か一緒に働くなかで、少しずつですが、ネパールのみんなの国民性というか、特徴もわかってきて、どう話せばわかりあえるかも、掴めてきたかなと思っています。
あるとき、ネパールのみんなは、すぐさま自信満々に「できるさ!」といわず、ちょっと心配だから、少し前置きをおいているのかも?ということに気がついたんです。そこからは、落ち着いて、まずは電話して、話を聞く。そして、こちらの主張も伝えつつ、相手の不安や心配を確認しながら、お互い実現可能な打開策、ベストな案を見つけることに注力するようにしました。
どうしてもメールやチャットの文面では伝わりにくいニュアンスがあったりするし、まずはこちらが真剣に伝えようとする姿勢が大事なんですよね。きちんと面と向かって伝えて、改善したときに「ほら!できたよ!最高!」って一緒に喜ぶことで自信を持ってもらって。そうしてから、次の新しい無茶ぶりをお願いするんです(笑)。
そうやって、相手を理解してコミュニケーションをすることで、次のチャレンジをしてもらえるようになってきました。この頃は、「まあ、サアヤさんがいうなら仕方ないか!」とか、「やってみるよ。」と言ってくれることも多くなってきて、それを言ってもらえたら、「やった!」と思うし、信頼関係ができてきたかなと、嬉しくなります。この繰り返しで、ネパールのみんなの技術が向上したり、良い商品ができたことを実感すると、やってきてよかったなと思います。
これまでのお仕事の中で、思い出深い瞬間はありますか?
現地、ネパールのパートナーでサリナというスタッフがいるのですが、来日したときに会った日本のお客様を覚えてくれたことですね。
私は、ネパール駐在から一度帰国をして、ファブリックマザーハウス(今の「E.」イードット)というアパレルの新事業に携わることになりました。その新店舗として池袋東武店のオープンをしたときに、いつも一緒に生産をしてくれているサリナに、私の大好きな池袋のお客様に合ってほしくて、日本に来てもらって、イベントをしたんです。
帰国後、サリナに会ったお客様が、新作の商品を買ってくださったので、写真を撮らせていただいたんですね。サリナに見てほしくて、写真を送ったら、「イベントの時に〇〇してたお客様だよね?すごく似合っているねー。また新作つくらなきゃね!」って言ってくれたんです。当たり前のことのように思うかもしれないのですが、遠くネパールにいるサリナが、一度だけ会ったお客様をきちんと覚えていてくれたことが、すごく嬉しかったんです。
この出会いがサリナにとって、次の仕事の原動力になっていることがわかって、お客様のために良いものを作ろうという同じ想いが、より強くなったという実感が持てたできごとでした。
牛留さんがこんな仲間と働けたらと思うのはどんな人ですか?
そうですね。私は生産地の、言葉も文化も異なるメンバーと仕事をしているので、特にそう思うのかもしれないですが、他の人のことを理解して、一緒に進もうと努力ができるというのは、とても大事だなと思っています。
生産地に限らずですが、お店、事務所など、いろんな立場に立つ人がいるし、いろんな背景をもって働いている人がいる会社だからこそ、どこまで深く理解できるかは別として、相手のことを理解したい、一緒にがんばりたいと思えるような人が向いているんじゃないかなと思います。結果的に、それはお客様を知り、求めていることを理解することにも活きていて、何のために仕事をし、ブランドを成長させるのかという、ぶれない軸をみんなが持つことにつながるんじゃないかなと思います。
それともう一つ、起こることを、自分事としてとらえて、自身でアクションをとれる人の方が楽しいんじゃないかと思います。何かが落ちてくることを常に待っている姿勢よりも、自分がやるんだと思ってチャレンジする方が、合っている気がします。ただその反面、みんながそれぞれの場所で一生懸命に進みすぎるときがあるので、意識的に息を抜く時間をつくって、余裕を持てるようにすることも大切にしようと思っています。
これから、どんな挑戦をしてみたいですか?
もっともっと、よりネパールらしい手仕事を現地で見つけて、モノづくりをしてみたいと思っています。
今はコロナの影響でなかなか現地にいけなくて、お互い持っている知識やアイディアを持ち寄って商品をつくっている状態です。そのプロセスも思考錯誤があっておもしろいし、現地に行けないなりの挑戦がつまっています。でも、もともと現地に根付いていて、彼らが当たり前と思っているけど、実はすばらしい手仕事が、まだまだたくさんあると思うんです。それを見つけて、ネパールのみんなが「え、これこんなにかっこよくなるの!すごい!」と心から思えて、さらに自分たちの仕事を誇れるような商品を一緒につくりたいです。
「ネパールにはこんなすてきな素材や技術があって、こんなにすてきなものを作れるみんななんです」って証明したいし、お客様にもそんな驚きや感動を届けていければと思っています。
読んでいただいてありがとうございました!マザーハウスをもっといろいろな角度から楽しんでいただける毎日の出来事を、生産地やお店からお届けしていきます!