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会社に勤めながら実質FIREみたいな状況になっているサラリーマンの話

FIRE:「Financial Independence, Retire Early」を略した言葉。
「経済的自立と早期リタイア」という意味。

昨今ビジネス書籍の棚をにぎわすこの「FIRE」という単語ですが、そりゃあそうなればいいけど自分には縁遠いことだと聞き流しておりました。

しかしながら、今年4月からの自らの特殊な状況、FIREという単語のほんとうに目指すところ、それを鑑みるに、「さては俺、FIREしてる...?」と考えずにはいられませんでした。

特殊な状況とはいったいぜんたいなんぞや。
会社に入社して7年目が経とうとしていますが、今年1年は営業研修なのです。これまでは製品開発課に所属していましたが、ちょっと外の勉強をしてこいとのことで、研修が始まりました。

さてもさても、2021年はコロナ禍の真っ只中。そもそも気軽に顧客に挨拶ができる状況ではありません。
また、誰も経験したことのない、日本どころか世界中を巻き込むこの状況、自粛が始まって1年経っても会社はその対応に追われています。

そんな中で研修生のお世話などできるでしょうか?また、たった1年間の研修です。来年には消えるハナタレ坊主に、大事な顧客を任せるほど無責任な会社ではありません。
半端な期間滞在する研修生に、営業のイロハを1から10まで教えることにさして意味はありません。そんな時間もありません。
そうなれば答えは明白です。
放し飼いです。

もちろん日々、営業の方々と同行し、許可が下りた顧客に会い、現場を知り、営業の苦労ややりがいというのは感じ取る機会は与えられています。
しかしながら、ほとんど職場体験です。
わたしに責任という重荷、プレッシャーは皆無です。

定刻に出社
同行する営業から声がかかるまで自由行動
営業と外回りに出発、顧客を何軒かハシゴしながら先輩としゃべる。
夕方前に帰社、定時まで自由行動
残業なしで帰宅。以下同文。

こんな毎日です。
勤続7年目にしてこんな状態が許されています。
自由行動、もちろんサボっているわけではありません。
この状況下で何ができるか、来年のために今からできることは何か、と日々なにかしら相談や思案をしながら忙しくはしています。

はたと気付きました。
わたしは一切お金を生み出していない。
それどころか、昨年までの所属と同じ給料を頂いています。
なんということか、働かずして金を貰えているではないか!

通りで最近毎日が楽しいわけです。
責任がない。
時間がある。
いままで「忙しい」を理由にできなかった「やりたかったこと」が、仕事もプライベートもどちらもゆっくりと時間をかけて取り組むことができているのです。

7年も同じ会社に勤めていれば、やりたいことは無限に思いつきます。
ずっと取りたかった資格の勉強を始めました。
ずっとあいまいにしていた製品に関する知識を、イチから学び直しました。
工場の5S改善活動や、新人教育について行動を始めました。
7つの習慣における第2領域「緊急でなく、重要なこと」、にあたる部分をじっくりと考える機会になりました。

定時退社、リモートの関係上ほぼ週休3日です。
自炊を始めました。
ドラムを始めました。
ウォーキングを始めました。
ソシャゲをやめました。
読書を真面目にするようになりました。
16時間断食を知り、食生活を変えました。
出費の見直しを本気でやり始めました。

価値観が変わり始めました。

「忙しい」とは便利な言葉です。免罪符です。
「忙しい」と言ってしまえば、どんな大事なことも大切なことも後回しにできる魔法の言葉です。
真面目に働き続ければ、この先30年間、60歳、いや70歳までずっと「忙しい」ことでしょう。大事なことは押し入れに入れたまま。

まったく忙しくなくなりました。
まずどんな感情が襲ってきたか。
「どうしたらいいかわからない。」
でした。忙しく日常を消費する生き方しか知らなかったのです。
ありあまる時間に対し、どう立ち向かったらいいのかわかりませんでした。
しかしながら、期間は限られています。1年間、この研修期間を決して無駄にしてはいけない。そう決意し、まず本を読み漁りました。

そこで出会ったのがFIREという単語でした。
資産運用を上手に行い、不労所得によって働くことに縛られずに生きる、というのが通説のようですが、わたしはこう受け取りました。
消費型の生活を辞め、「十分」を知り、自分らしく生きる。

この考えに至ったのは、「お金か人生か 給料がなくても豊かになれる9ステップ」を読んでからです。

とにもかくにも忙しく毎日を浪費してきました。
そして定年退職する管理職、起業して輝く若者たち、金持ち、セミリタイアした人たちを、羨ましく指をくわえて眺めていました。
自分たちがそうなったらどうなるか、そんな未来を想像もできずに。

どこか諦めていたと思います。
自分はきっとああはなれない、普通か、普通以下の人生を歩んで、苦しんで死んでいくのだと。

しかしながら、どうにもそうではないらしい。
会社に居ながらにして、7年目にして新入社員のように、もしくは定年退職寸前の社員のように、誰よりも自由です。このようなプータローの期間と機会を与えてくれた会社に感謝すらしています。FIREは工夫次第で誰しもが実現可能だ。

この状況においてわたしが手に入れた最も大きいものは、労働に見合わない(いい意味の)給料ではなく、ヒマだからとアレコレやるうちに仕事が早いねと上がった評価でもなく、ウォーキングとプチ断食によって手に入れた健康な体でもありません。
時間です。

タイムイズマネー、時間を切り売りしてお金を得る「時は金なり」と昔から言いますが、逆です。
マネーイズタイム、時間こそがなによりも大事だと知りました。
お金に支配されない、それこそがFIREの神髄ではないか、と若輩ながら感じた2021年夏でした。

無情にも2022年4月には忙しい環境に戻ることになります。
「会社は君に、期待も機会もお金も時間もたくさん注ぎ込んできた。来年からは結果を求めます。覚悟しておいてください。」
というのが上司のおそろしい言葉です。
負けないぞ。


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