静止画MADを作るときの考え方。

この記事は、静止画MADの”作り方”ではなく、作るときの”考え方”です。
どんな人に向けた記事かというと……
ある日、静止画MADを作りたい!と思い立ち、作るにあたってどんなソフトが必要か調べ、原作と楽曲との組み合わせなども決まり、さぁ、作るぞ!と静止画MAD制作へと一歩を踏み出した途端、
アレ、最初のシーンって何を選べばいいんだろう?
となり、なんとなく著者の名前や楽曲名でイントロを切り抜け、
なんとなくいい感じのシーンを並べて尺を埋めていくような人向けです。
つまり、静止画MADに対しロジックがない方向けの記事です。

自分は約10年ほど、静止画MADを作ってきました。
動画を作るにあたって、なぜこのようにしたのか、具体的な理由があります。そういった論理を提供するのがこの記事です。

具体的な考え、ロジックが身に付けば、「なんとなく」とはおさらば!
きっと、動画作りも楽になり、品質も向上するはず!多分!

では、さっそく本編です。

テーマを決め、考える材料を強固にしよう!

まず初めに、安直なことを言いますが、テーマは大事です。
テーマとは、そのMADで伝えたいことです。
動画を通して、その伝えたいことを表現、冷めた言い方をすれば、説明していくのです。
動画ソフトを立ち上げる前にテーマを明確にすると、動画を作るのが楽になるし、一本筋ができた完成度の高いMADになります。
『なんだよ、そんなの分かってるよ』と思われるかもしれませんが、侮るなかれ。このテーマ作りを明確にするかしないかで、かなり作りやすさが変わってきます。
『カッコいい感じ』とか『明るい感じ』みたいなフワっとしたテーマではなく、できるだけ具体的に伝えたいテーマを決めてください。
なぜなら、全体を考える上でその伝えたいテーマが指標になるからです。

 例:【静止画MAD】ルックバック×ソラニン

このMADでテーマを文章にするなら
「創作活動は無駄だとしても、やる意義がある」です。
テーマをきいただけでは、ハァ??って顔をしかめたくなると思いますが、
ブラウザを閉じるのはちょっと待ってください!
テーマに至る経緯、そして、至ったテーマを利用したMAD制作について
説明するので、もうしばしお付き合いください!

1.テーマの決め方

テーマを具体的に決めるにはどうすればいいのか、説明していきます。
静止画MADを作りたいとき、なにかしら目標があると思います。
「〇〇さんみたいなMADを作りたい」
「自分の技術を試してみたい」
「原作の良さを伝えたい」など、多種多様だと思います。
ですが、それら色々な思惑があれど静止画MADを作るならば、
多分共通している部分があると思います。
それは、原作となる作品を素晴らしいと感じていることです。
原作作品の素晴らしさを伝るてめではなく、
己の技術を披露するために、静止画MAD、という映像媒体を選んだとしても
それは変わらないと思います。

なぜなら、数多ある漫画、ラノベ、エロゲ作品のなかで、ひとつに絞って作ると決めたからには、微量ながらも必ず、その作品を好きであるはずだからです。そして、好きになったからには、自分の心をくすぐる要素、面白いと感じた魅力があったはずなのです。
話をテーマの話に戻します。
テーマを自分で決めるのは難しいです。
ですから、元となる作品の魅力をもとに考えれば
自ずとテーマは生まれてきます。

作品を分解し、魅力の要素を見出そう

「この作品の魅力はなんですか?」
作品の魅力を発見するためには、この質問に答えなければなりません。
いきなり問われても、難しいと感じる人もいるかと思います。
ということで、ここでは作品を分解し、魅力を発見する方法を書きます。

物語を面白くする要素は6つ

この本は、小説を創作する人の向けの本で簡単に内容を言えば
物語を面白くするには6つの要素が大切である、と言及している本です。
逆に言えば物語は、以下の6つの要素に分解できるのです。

1.コンセプト
 設定や世界観、作品内の仕組み
2.人物
 登場人物、キャラクター
3.テーマ
 作品を通して伝えたい事柄
 また、それを読んで感じたメッセージ性
4.構成
 起承転結、序破急といった、物語の転換期をどこへ配置するか
5.シーンの展開
 物語とは出来事の羅列であり、その順番によって効果が変わる。
6.文体
 小説で言えば文章。漫画で言えば画風。

ルックバックを例にすると……

1.コンセプト
 四コマ漫画をきっかけに「もしも」の世界線からメッセージが届く。
2.人物
 藤野……主人公
 京本……友達、死ぬ
3.テーマ
 創作活動の難しさ、無力さ、そして、尊さ。
4.構成
 長くなるので割愛
5.シーンの展開
 長くなるので割愛
6.文体
 漫画で言えば画風
 コマ割りを単純にしたり、擬音を失くすことにより、リアリティがある。
 物事の重大さを顔の表情や、描きこむことによって伝えている印象。

…………うん、ピンと来てないですよね。はぁ、って感じですよね。
自分で、書いてみて手ごたえの無さに驚いてます。
けど、このあと「なるほど」的なことを書くので、もう少し読んでいただきたい。

ここでいまいちど「この作品の魅力はなんですか?」に戻ります。
例えば、あなたが「ルックバック」読んで魅力に感じた部分と
私が「ルックバック」を読んで魅力に感じた部分とでは、違いが出ます。

自分は「ルックバック」から上に書いた6つの要素を書きましたが、
「ここはこうじゃない?」と言った指摘も生まれるでしょう。
とくにテーマなんかは、人によってとらえ方が変わってくると思います。
ですが、とりあえず、内容については無視していただきたい。
そこは大事ではありません。

つまり、MAD制作に置いて、ここで何が言いたいかというと、
分解した6つの要素の中で、何を強調するか、ということなのです。
強調するか否かの判断基準はあなたが魅力に感じたかどうかです。
あなたが魅力に感じたならば、他の人も魅力に感じます。
そして、その強調する事柄が、ロジックの元になるのです。

例えば「カッコいい」MADが作りたいとして、
元となる作品を「カッコいい」と感じたならば、
件の6つの要素の中に必ず「カッコいい」部分があります。

世界観がハードボイルドで「カッコいい」(コンセプト)
危機的状況を涼しい顔で乗り越える主人公が「カッコいい」(登場人物)
影の濃い画風が「カッコいい」(文体)
といった具合に。

『【静止画MAD】ルックバック×ソラニン』では、
6番目の「文体」を、つまり「画風」強調しています。
私がルックバックの絵柄が素敵に感じたからこそ強調しました。

さっきも書いた通り、
ルックバックは表情を大事にしていると自分は感じました。
なので、
表情のシーンだけは長くして認識できるようにしてあります。

自分が魅力に感じた要素、「表情」を強調させるために
以上のような編集方法になりました。

こういった具合に何を強調したいのか、を決めるだけで
MAD全体の方針が決まってきます。

要素を見抜き、MADで活かそう!

さて、強調する点を決めたとします。あなたが魅力に感じた部分です。
しかし、MADを作り慣れてない方からすれば
強調するにはどうすればいいのか、わからないかと思います。

映像作品を作った人間ならば、具体的な手法を思いつくかと思います。
ですが、この記事を見ている人は初心者の方が多いかと思います。
沢山の静止画MADを見て、映像がどのような効果を生むか理解しよう、的な
そりゃそうだろうけどさ……といったことはここでは言いません。

自分が推薦したい方法は、原作作品から要素を抜き取る方法です。
国語のテストでよく出る問題、
「主人公の気持ちを表した文章はどこですか?」を思い出してください。
私がこれからいう事は、つまりはそういったことです。
あなたが感動したのは、作品の中に、感動するための要素がある
そして、その要素の効果を理解して使えば、感動させれる。

ということです。

ちょっとおさらい。
先にも書いた通り、あなたは静止画MADを作るにあたって、
数多ある物語から、今作ろうと思っている作品を選びました。
理由は、その作品が他よりも優れている(好き)と感じたからですね?
優れていると感じたからには、優れている要素があります。
それが先ほど抜き出した6つの要素です。
先の章で6つの要素から、強調したい部分を選びました。
あなたがより魅力に感じた部分ですね。

ですが、物語は、より細分化できます。

台詞や、描写、コマ割りとか絵、表情や間、
とにかくたくさんの要素の上、作品は成り立ってます。

それら無数の要素は、原作者が読者を感動させるために必要だと感じたから、使われているわけです。
プロが作ったものですから、何にしても、必ず理由があります。

だったら、それを使えばいいじゃない。
そのまま再利用すれば、MADは出来上がります。

とは言っても、本当にそのまま使うのでは面白みもないし、
なにより尺が足りません。だから、添削の作業が必要です。

再びここの部分を例に出します。

この3ページを動画化しています。

ルックバックの原作に置いて、ここでは
主人公、藤野の葛藤が描かれるシーンですね。
「自分が努力している漫画は、世間的に見れば心配される事柄」
世間の価値観に対して、飲まれまいと足掻いているところです。

自分のMADでも、だいたい似たようなことを描いています。

ここで最も描きたいの事柄は藤野の葛藤です。
漫画内にて、それがどこでわかるかと言うと

この表情です。だから、動画ではこの表情を使わないといけません。

ですが、いきなりこの表情を見せられたところで、意味が分かりません。
表情を出す前に、なぜこのような表情をしているのか、説明する必要があります。

では、なぜこのような表情をしているのでしょう?

葛藤しているから、ですね。
漫画を努力して描いているのにもかかわらず、周りからは認められない。
それが単純に苦しいから、このような表情をしたのだと思います。

つまり、この表情を出すまでに、
・漫画を努力して描いている
・周りから認められない

を説明しなければなりません。

どう説明するのか、それは簡単です。
ルックバックを読んで、自分がこう感じたのなら
このように感じた要素がルックバックに存在しているわけです。
つまり、その要素を抜き出せばいいのです。
最初にいった国語のテスト「主人公の気持ちを表した文章はどれ?」です。

・漫画を努力して描いている

は、動画内ではこれより前のシーンで説明しているので、割愛します。
ここで説明するのは

・周りから認めれない

の部分ですね。

ここではお姉ちゃんが藤野が周りからどう見られているのか、
代弁してます。

「あんたさ…いつまでマンガ描いてんの?」
「私のいるカラテ教室来なよ。内申書に書けるよ」
「母さん達さ言わないだけで、アンタん事心配してんだからね
 ずっと部屋に籠ってるしテストは全然ダメだし」

以上が「周りの目」を表現しているお姉ちゃんの言葉です。
動画の尺的に、全部を使うのは無理なので、どれか選ばないといけません。

自分は「あんたさ…いつまでマンガ描いてんの?」を選びました。
ここで台詞として一番いいのは、「母さん達さ……」だと思います。
原作のほうでも、半べそをかく決定的な言葉として使われています。
ですが、「母さん達さ……」は他の台詞にくらべて情報量が多いです。
情報量が多いと短い表示時間では、視聴者は文章を理解することができません。

それに、【静止画MAD】ルックバック×ソラニンでは情緒を大事にしてます。考える余白を作り、視聴者側が動画にのめり込むことを目標に作っています。なので、他と比べ抽象的な「あんたさ……」を選択しました。

こういった具合に
表現したいこと、伝わるための要素の二つを軸に考えていけば、
必然的に使う台詞やコマなどが決まっていきます。

2.MADの構成のテンプレート

さて、細かな部分の考え方を説明しました。
説明できてるのかな? 言葉が足りないかもしれないし、
単純に日本語が下手な気もして、記事としてのクオリティを考えると
自信がないので不安になってきますが、
とりあえず、説明できた体で続けます。

じゃあ、全体の作りはどうすんの?といった疑問がでてくると思います。
ということで、ここでは構成のテンプレートを紹介します。

1分半の動画を作るとして

イントロ:物語の第一前提を説明
Aメロ:事件など、物語のきっかけ
Bメロ:主人公の葛藤、悩み
サビ前:回復の兆し
サビ:逆転、克服
アウトロ:〆る

を目安に自分はいつも構成を組み立てています。

具体例として
【静止画MAD】生きて【君は月夜に光り輝く】

この動画を例にして、構成のテンプレートについて説明していきます。

イントロ

0.00~0.25

まず、イントロで気を付けるべき事柄は2つ
・物語の第一前提を理解させる
・あとの展開を気にならせる 
です。

まず1つ目「物語の第一前提を理解させる」について
第一前提とは、世界観や登場人物、など
物語にのめり込むまでの最低知識です。
異世界ならどういった世界か、
歴史ものなら何時代か、はイントロで説明しておきたいです。
それらを説明しないと、後が理解できず
見る気を失くしてしまうからです。

いつ(When)
いつ」に関してはさほど説明していません。
なぜなら、この「君は月夜に光り輝く」に置いて
そこまで「いつ」は重要ではないからです。それに、服装や部屋の内装から
現代とわかります。仮に、昔の話なら、ここで「江戸時代」であることを
説明すべきです。

どこで(Where)
これも説明してません。服装や内装から現代だとわかるからです。
仮に異世界の話なら、世界観を説明すべきだと思います。

誰が(Who)
同じくらいの画角で出しています。
こうすることで2人が主要人物であることを説明しています。

ここでは誰が主人公であるのか、そして二人の関係性
もなんとなくわかるように描写を入れてます。

ヒロインのまみずが病気であることは、
病室と病衣からなんとなくわかるようにして、
「まみずはいつか死ぬ」のテキストで
病気が重いことをなんとなくわかるようにしてます。

2つ目の「あとの展開を気にならせる」について
これは、1つ目と少し矛盾してしまうことを言いますが、
説明過多になってはいけない、ということです。
最初に結末まで言ってしまっては、イントロ以降を見る理由はなくなります。イントロで「どうして?」や「どうなるんだろう?」という
後を見たくなるような仕掛けを作るといいでしょう。

1カット目

1カット目はこれで始まるのですが、これも説明せず後を気にならせる工夫です。これだけ見ても、なんとなく場所を説明していることはわかりますが
どこかまではわかりません。わからないからこそ、次のカットをみたくなるのです。だから、イントロで伝えることはすべて「なんとなく」にとどめています。ここでは隅々まで説明しません。

Aメロ

0.26~0.45

ここでは物語のきっかけとなる部分を説明していきます。
主人公は物語で事件に出会います。いわば物語が動くきっかけです。
「君は月夜に光り輝く」では、
病気で不自由な「まみず」から頼まれごとを受けることで物語が動きます。

ですから、そこをわかるように台詞で説明しています。

次のBメロでは暗くしたいので、ギャップを作るために
このパートは明るい色合いやポップな演出を入れています。

Bメロ

0.45~0.56
主人公の葛藤。悩みごとの部分です。
物語には葛藤があります。敵との闘いです。
敵といっても、物理てきなものから精神的な誘惑まで様々です。
このMADでの葛藤の相手は「迫りくる死」です。

ですので、「まみず」が消えるという描写を連なって出しています。
このBメロで描くべきことは敵の強さや、問題の大きさ
とにかく主人公が落ち込めば落ち込むほど、あとの盛り上がりが活きます。

サビ前

0.56~1.01

サビ前では快復の兆しを出します。
問題解決するためのヒントや、ここが折れていた主人公が奮起するきっかけ
などを描写すると、がサビでの逆転劇がより活きます。
いわば、盛り上げるためのタメの部分がここになります。

このMADではサビで盛り下げているので、
逆に落ち込む兆しを出しています。「まみず」の死がすぐそばまで来ていることをテキストだけで説明しています。

サビ

サビは一番盛り上がる部分です。
ここ至るまで色々積み重ねて、爆発させるようなイメージです。
敵を倒したり、問題解決のパートです。

今回のMADはBADENDなので、盛り下げるために、あえて明るく盛り上げています。病気がなおったかと思うと、それは夢で、
主人公は嫌な現実への未練を失くし、死のうとします。

ですが、ヒロインに止められ、ヒロインは死にます。

サビの前半は、盛り上げに撤して、
サビの後半は、結末まで描いています。

終わりに

はい、ということで、これにて以上です。
……なんか、長いわりに、伝えたいことの1/3も伝わらってない印象ですね。
説明って難しい。

とりあえず、統括して言いたいことは、
伝えたいことを具体的に決め、それが伝わるように動画を作ろう
ってことです。
もしこれを読んでから初めて静止画MADを作る方は
この記事を参考に、良き静止画MADライフを送ってください。
(良き静止画MADライフってなんだ……?)
参考になればの話だがなっ!!

では、ありがとうございました。

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