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生きる働く#03 産後の妻の視点

※この記事は、第1子出産後の過ごし方に関して社内向けにインタビュー形式で記事にしたものです
※2017年に書いたもので、数値や制度など含め内容は当時のものです

働き方と暮らし方の両輪で無理なく生活全体を回していく

― 次に奥さんにお聞きします。以前、子どもが産まれても仕事もバリバリ両立したい!とお聞きしましたが、それは変わりませんか?
私がヒアリングしてきた中では「(育休中の)専業主婦状態が耐えられなかった、早く仕事がしたい!」という方が多かったので、私も絶対そのタイプだと思ってましたが、いざ当事者になったらそうでもないなぁと。仕事はこの先長いけど、育児は今しかできないんですよね。

― 5月から職場復帰されてますが、どうですか?
よく「仕事も育児もして大変ですね」的なことを言われますが、夫の方が家事をやってるくらいなので、世の中の想像より大変ではないです。働き方に関しては、在宅勤務や直行直帰、育児時間、育児シフト、使えるものは全部使い、色んな働き方を試しながら、無理なく生活全体を回していきたいと思います。例えば、在宅勤務だったら陽が出ている間に洗濯物を取り込めます。夕立で洗濯物が全滅という悲しい事故もなくなります。お昼休みに、昼ご飯と一緒に夕飯の仕込みをすれば夕方以降の生活に余裕ができます。小さいストレスを減らしていくことが、すごく大事だと思います。

― 時短は取らないんですか?
今のところ取っていません。つわり中に取得したのですが、今の報酬制度だとものすごくお給料が減ることを実感したので。逆に育休中は給料の67%の給付金が出て社会保険料が免除されるので、時短の時より収入が多かったです(笑)
これは男性の育休も同じです。男性が育休を拒む理由で「収入面」というのがありますが、ゼロになってしまうわけではありませんよ。
時短を使うかどうかは、上司や職場、家庭環境によりますね。今はフルタイムでも残業ゼロで働けていますが、最後は自分の身体が一番ですから、ベストな働き方をタイムリーに選択できる人事制度になるといいなと思います。

― 旦那さんは4ヶ月の育休をとりましたが、まだまだ男性の育休取得率というのは低いですよね。旦那さんに対する感謝や期待はありますか?
私の母は他界していて実家には頼れないので、夫に育休を取ってほしいと頼んだところ「絶対に取らない!育休なんて取ったら左遷させられる!」と。『はぁ?』と思いつつ、 根気よく明け方まで何度も説得し、育休経験のある男性社員に相談したり、夫は気付いてないであろう傷つく言葉の数々・・・(一生忘れません)、諸々を差し引くと感謝は残ってませんね(笑) 本気で離婚も考えたので「妊娠中 離婚」で検索したら、ヤフー知恵袋が「大変だからやめたほうがいい」と教えてくれたので踏みとどまりました。ヤフー知恵袋に感謝です。家族のケアをすることは当たり前ですよ。

― そうだったんですね・・・私も短いですが育休を取ったので、父親として当たり前のことをできてよかったです(苦笑)

もちろん育休を取ることが絶対ではないので、夫婦で納得できていれば良いと思います。ただ、夫が仕事をした状態だと気を使って、結果的に夜中も妻が赤ちゃんの世話をすることになり、その後も同じ状態が続きそうだなと。最初が肝心だと思うんですよね。

他人事だと思っていた産後鬱

― 産後はどうでしたか?
産後、乳腺炎で毎日のように助産院に通う日々が続き、それによる産後鬱状態も重なり、横浜市産後母子ケア事業の支援を受けて入院しました。夫に育休を取ってもらわなかったら自殺していたかもしれません。冗談ではなく、どんなにポジティブな人でも産後はそうなってしまう可能性があるのです。乳腺が詰まりやすく、産後4ヶ月くらいはずっと詰まりを繰り返していたので赤ちゃんの世話より大変でした。

― 妊娠出産は本当に何があるか分からないですね。

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嫌いなところが長所になった

― 旦那さんが育休を取って良かったことは他にありますか?
4ヶ月もの間、夫と24時間常に一緒にいるという経験を初めてして、お互いの長所と短所を再発見できたことですね。例えば、離乳食を食べさせるときなんかは、私はせっかちなので子どもが食べるのを嫌がったら後であげればいいやとすぐ諦めるんですが、夫は根気よくあげ続けて、ちゃんと完食させるんです。そうゆう「ひとつのことにこだわる」ことが今までは非効率に思えて嫌でしたが、育児ではかなり重要な性分だなと思ったり。
また、当初夫はおにぎりを握ることすら怪しかったので、義母に頼んで料理の先生をしてもらいまいした。今ではお互いがすベての家事育児をこなせるようになっています。仕事同様に、家庭でも属人化しないことがお互いが不満なく自由を得られるポイントなのかなと思います。

― 確かに、結婚してもそんなにずっと一緒にいることはないでから、今まで知らなかったお互いの価値観が浮き彫りになりそうですね。定年退職後に「夫が毎日家に居て困る」のは、歳を取ってから初めてそういう状況になった、ということの現れなのかもしれませんね。

育休は自分を振返る貴重な時間
今回の育休問題でよく分かったのは、夫は「男は稼がないと意味がない」「会社で早く出世しなければ」と考えていることです。その気持も分かるし構わないのですが、そういった価値観なのに、いまいち自信がないんですよ。それって辛くないのかなぁと思います。この先ずっと健康で同じ会社に勤め続けるかなんて分からないじゃないですか。

私も入社3年目くらいまでは、出産によって仕事にブランクができるのも昇格に影響が出るのもすごく嫌だと思っていました。なぜなら30歳過ぎくらいまで年功序列なので、例えば三十前後で子どもを2人3人と産み、時短を取りながら働くとなると、入社13年目なのに新人の頃と給料が変わらないという事態が起きるんですよ。社内のマネージャーも(特に開発では)女性がほとんどいないですよね。それが良いことだとは全く思わないですが、今すぐには変えられないことなので、そこに囚われて自分の生きたいように生きれないのはもったいない、と考えを変えてからはいい意味で会社への執着がなくなって生きやすくなりました。仕事はゆるくていいということではなく、私の人生は会社だけではない、ということです。

― ありがとうございます。最後に何かこれから出産や育休を控えている人達に伝えたいことはありますか。
出産・育児で得る価値というのは、世のメディアでたくさん語られてるので省略しますが、自分自身を振り返ると、妊娠中は酷いつわりと産後は鬱状態を一時的ですが経験して、心身が健康じゃない状態は非常に辛いということが分かって、普通に生活をしていたら「気づかなかった人の気持ち」というのが存在するんだなと。この気づきって人間としても、私の本業のデザイナーとしてもすごく大事なことのように思います。

あとは、最近育休中にMBA取得!みたいなすごい人もいますが、そこまでハードルを上げなくても色々できるなと思いました。私は子どもの世話をしながら英語の勉強をする方法を編み出して毎日ちょっとずつやったり、10年越しの脱ペーパーゴールドドライバーをしました。そんなもんで十分でしょう。
会社に行かない育休期間は、今まで気づかなかったことに気づき、できなかったことができるようになる、とても貴重な時間でした。キャリアとライフイベントで悩んでいる人がいたら、休職を前向きに捉えて欲しいなと思います。

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