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生きる働く#01 妊娠中に働いて気づいたこと

※この記事は、第1子妊娠中に働いて気づいたことを社内向けにインタビュー形式で記事にしたものです
※2016年に書いたもので、数値や制度など含め内容は当時のものです

100%で働けない

― 妊娠して変化した価値観などはありますか?
会社のESサーベイで「多少きつくても出世したい」か「出世しなくていいのでゆるく働きたい」といった主旨の質問があると思います。私は入社して以来ずっと前者に丸してたんですが、今回初めて後者に丸しました。そもそもきつくないと出世できないのか?疑問ですが、元気じゃないと働けないというのを実感したんです。

― つわりの時期は本当に具合悪そうでしたね。
今までは平日でも終電まで飲んで、寝過ごして知らない場所にいても元気だったので「自分が働けない」という状況を考えたこともありませんでした。でもつわりが酷くて会社に行けないし、出社できても食べれないのに吐くので、血と胃液だけ吐くようになってトイレから自席に戻ってきて、ふと「これは血を吐きながらやる仕事なんだっけ?」と。仕事の代わりはいるけど、自分の身体の代わりは誰もできないなと思いました。当たり前のことですが、私の中では大きな発見でした。

― 自分や家族の体調が悪くなって今まで通り働けなくなることは、誰にでもありえますよね。
なのに今の会社のしくみやオフィスは100%で働ける人を基準に作られているので、そうでない人は例外扱いされます。全員が100%で働けるわけではないし、育児に限らず誰かのケアをしながら働く人が増えている中で、そっちを基準に働き方を考えていかないといけない。駅にエレベーターを設置した方が結果的にみんな嬉しい、みたいなもんだと思います。

― そういった状況の中で、上司にしてもらって嬉しかったことなどあれば教えてください。
そうですね、上司が妊娠中の在宅勤務を人事へかけあってくれたり、部長自身が共働きで子育てしてきたので色々と心配して頻繁に声をかけてくれたり、実際に動いてくれてとても助かりました。
他部門の協業メンバーにも事情を話して、業務を分担したり、打合わせを短くしてもらったり、周囲のメンバーや環境には恵まれていたと思います。

― 妊娠中の在宅勤務ってないんですね、盲点だった
妊娠中の在宅勤務の必要性は強く感じました。(※2020年現在はあります)「会社に行く」って相当元気じゃないとできない。自宅から駅までも駅前のスーパーの前が臭くて通れないから迂回したり、会社のエレベーター内も食堂と人間とタバコの混じったようなわけの分からない臭いで途中下車(笑)、自席に着く頃にはぐったりです。

現状だと、会社に行けない → 仕事がたまる → 2日ぶりに会社に行けたが仕事がたまっているので辛い、という悪循環ですが、会社に行けないだけで自宅であれば10働けなくても3くらいは働けます。体力を温存しながらメールを見れるだけでも本人の身体的、精神的余裕や業務の生産性自体もだいぶ違ってくるでしょう。ジリ貧状態の有休のやりくりともおさらばです。
これは妊娠中に限らず誰にでもあることなので、1か0ではない働き方ができるようにしていきたいですね。管理の観点では1%の不正をなくすことの方が重要視されているように感じますが、80%の従業員の生産性を上げることを考えたいです。

トップが動くと変わる

― 松林さんはアレだね、マララさんやアウン・サン・スー・チーさんみたいだね。

ありがとうございます(?) 打たれたり軟禁されてないですけどね。当初この活動のテーマは「社内託児所をつくろう!」だったんです。でも、社内で聞いてみると「昔アンケート取ったらニーズがなかった」とか「会社まで子どもを連れてくるのは無理だと思う」とか「子どもをビルで遊ばせるなんてかいわいそう」とか、テンプレートのような否定的な意見が多くて面倒だなと感じて(笑)方向転換しました。

― 他社へヒアリングなども行ってましたね。
ニーズが無いとは思っていなかったので、同じみなとみらい地区で社内託児所を設置している日産自動車と三菱重工に行きました。日産では社長が役員会議に参加した時に一定の年齢層の男性しかおらず、これは企業にとっての危機だということで、人材戦略として社内託児所を設置しています。三菱重工も、事業所の役員が積極的に進めたので開設、運営できています。「会社まで連れてくるのが大変」ということに関しては、車通勤の許可や時差通勤などでみなとみらい地区では特に問題は起きていないようです。
全員が社内託児所を使わなくてもいいわけで、ひとつの選択肢として存在することが大事だと思います。これから子育て世代になる社員からも「地域の保育園に入れなかった時の受け皿として社内託児所があるから安心できる」という声が多いそうです。

他に、ベビー用品を扱っているピジョンでは、中々男性社員が育児休職を取得しないので、社長から「男性の育休取得必須」と提案があり、取得率25%(2016年当時)まで上がっているそうです。

― 男性の育休は「取りにくい」と感じてる人も多いようです。
男性ばかりの職場で誰も取ったことがなかったりすると、「嫌な顔されるんじゃないか」とか「戻ってきた時に自分の居場所はなくなっているんじゃないか」とか漠然とした不安があるようです。育休だけが育児ではないのでそれぞれの家庭のやり方がありますが、何度もない機会なので前向きに「取ろう」と思えた人が、自分自身の人生と、これからの人のためにも事例を作っていけるといいなと思います。

― 最後に言いたいことはありますか。
(弊社の)役員で、フルタイムの共働きで育児家事を半々でやってきた人はいるんですかね。いらっしゃったらご連絡頂きたいのですが、中々いないのではないでしょうか。特定の属性や価値観への偏りや、生産性に寄与しない働き方を変えるには、結局はトップが本気で考えて(実感して)、動かないと変わらないですし、逆にトップ動けば変わるんです。
もちろん一人ひとりの意識と行動も重要です。社内のルールも色々ありますが、適度に拡大解釈して、働き方を変えたい人(私も)から少しずつトライアルしていきましょう。
大雪の日に何時間もかけてびしょ濡れになって会社に来るのはもうやめよう!ってことです。
― 僕はあの日びしょ濡れで出社してWEB会議に出たけどね(笑)

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