日記:地元の中古本屋が潰れた

お盆、地元で人通りの少ない夜の時間帯、中学生の時によく行っていた中古本屋に行ったらとうとう潰れていた。

地元は宮城の田舎で、(田舎といってもイオンと寂れた映画館はある程度)ブックオフなども無かったためそこでしか買えない、例えばオタク・グッズの調達などで大変重宝していた。時期的に恐らく例の禍の影響であろう。

初めて訪れたのはたしか小学6年生の時で、友達の付き添いだった。田舎の地元にしては珍しく、ローカルで年季の入ったオタクカルチャーが醸されていた店内は非常に刺激的だった。天井近くの壁に貼られた、色の褪せたアニメ美少女お色気ポスターが、思春期の気恥ずかしさゆえに直視できなかった。その原体験が、今二次元美少女のイラストを描くきっかけになっている。


当時は、うごくメモ帳やニコニコ動画の台頭で東方projectの人気が爆発しており、ネット上では東方(弾幕STG)をPLAYしているのが当然、果てはイージーモードでPLAYするのがキモい というのが常識だった。

アングラ文化が気軽に手に入る関東地方と違って(田舎の中学生並)ブックオフですら無い地元だったが、われらがブックマーケットでは当然のように東方のラインナップがあった。しかしあれらはどういうわけかすべて18禁、当時13歳だった自分は涙を飲んで5年後のリベンジをと胸に誓ったのを覚えている。


今思うと、ブックマーケットにはアダルト、ラノベ、フィギュア、漫画、TCG、ゲームなど中高生男子が必要とする要素がすべて存在した。中学で進級しても、新作ゲームの購入や漫画の新刊を買いに足しげく通った。中学3年生になり、受験勉強で家で遊ぶ時間が持てなかった時にも放課後に立ち寄って漫画の立ち読みをしていた。


時は経ち、高専進学に伴って仙台に移り住んだ後にも、地元に帰省したときには必ず訪れていた。ブックマーケットにはアダルトコーナーの中に同人誌販売ブースがあり、そこには最新の物から十数年前のヴァンパイアシリーズ合同本まであった。田舎でギークが少ない分充実していて、土産に買って帰っていた。

この夏の帰省でも店に行ったが、そこにはもうコテコテのポスターも何もなく、ただ冷たいガラスと安っぽいトタンのファサードだけが残されていた。

あの汗と紙とタバコが混じった独特の臭いが好きだったが、それももう無い。

恐らくチェーンではなく個人経営だったのでもうあの独特の雰囲気に浸ることも無いだろう。取り残された古川のオタク達はどうやって生きていくのか。SNSやネットショッピングの発達でもはや物理店舗すら使うことなく需要を満たしているのだろうか。中学進学頃に剥がされていたあのポスターは一体何のキャラクターだったのか、晩年入口付近に陳列されていた積み木や幼児用玩具は売れていたのだろうか。我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか。月は出ているか?


これは今は亡きbook marketへの鎮魂歌 あの三角の看板が再開発とともに台頭してきたファミレスの看板に変わろうとも、消してあの緑色は忘れない。

さようなら ありがとう また逢う日まで

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