『ゼンディカーの夜明け』スポイラー① ジェイスとナヒリ

 ドラえもんのひみつ道具で『ママをたずねて三千キロじょう』というクスリがあります。一粒飲むと、300メートル探さないとママに会えなくなるというものなんですが、未来の人がなんでこんなもん作ったのかがわかりません。

 22世紀の事情に思いを馳せるもすこです。

 『ゼンディカーの夜明け』のスポイラーが出てましたね。といってもジェイスとナヒリの2枚だけですが、ちょっと見てみましょう。

・ジェイスの基本性能

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 またかよと思いますが、3マナPW。キッカーすると総額5マナで、同性能(ただし忠誠度は1)コピーが出てきます。

+1:占術2を行う。

 占術2はまあ0.7ドローくらいの価値はあるものでして、3マナPWのプラスはこのくらいにしておかないとダメでしょう。盤面おさわり厳禁。

+0:カードを引き、その後それを公開する。公開されたカードのCMCに等しい値の忠誠度カウンターをジェイスから取り除く。

 プレイヤーの代わりに自身を傷つける『闇の腹心』といったところでしょうか。引いてから公開するテキストなのは、単純に公開だと2ドロー誘発系のカードと噛み合わないからですね。

・ジェイスの個人的な印象

 第一印象は「ベレレンと似てるな」でした。

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 よく考えたらジェイスは元祖から3マナでしたね……。このジェイスは神ジェイスと同居していた時代があり、併用されていたため"ベレレン"と呼んで区別されることが多いです(筆者もそれに倣っています)。もちろん神には及びませんが、ベレレンもなかなか強力なカードでスタンダードでは結構見かけました。しかし、軽いPWの選択肢が豊富(すぎる)な下環境で使われることは基本ありません。

 それはそれとして、なぜ「ベレレンと似てる」と感じたのかはなんとなくわかっていただけるかと思います。どちらも3マナで投下できる置きドロソで、通常のPWの退場リスクに加えて一定枚数引いたら自壊します。
 基本的に+から入ることは(3マナで置く場合)考えません。なぜかというと、「PWは置いた瞬間が一番弱い」からです。着地した瞬間にアドを取らないPWは基本的に弱いとも言い換えられます。『王家の跡継ぎ』や『空の踊り手、ムー・ヤンリン』と、『最後の望み、リリアナ』や『時を解す者、テフェリー』を相手にした場合の圧力を比べてみてください。また、『時の支配者、テフェリー』がいまいちなのも、+、-いずれもアドを取らないからというのが大きいです(もっとも、こいつの場合はナーセットが多いという今の環境柄もあると思いますが……)。

 ということでまずは0から入り、残って初めてどちらを起動するか考える、という使い方がベースになると思います。ベレレンも全盛期(?)にはカードを2枚引いたあと、忠誠度1のまま放置されていたものでした。
 もっとも、ベレレンのプラスが起動されることが少なかったのは、「PWが盤面に残る=自軍有利あるいは五分の状況下であり、そのタイミングで相手にカードを1枚与えるのはリスキー」な場合が多い故。今度のジェイスは+にリスクはありません。逆に、0起動で即死するリスクはベレレンよりも高いです。ですが、安定を取って占術から入って返しで処理されてしまうと寒い。「忠誠度が1残ったPWは強い」という格言(?)がありますが、こいつは+から入った返しに『探索する獣』に殴られた場合、1残っていてもそんなに強くありません。昨今のスタンダード環境で活躍するPWは基本1枚で完結している事が多いのですが、今回のジェイスはそれに当てはまらないのです。

 弱い!!!

 ……嘘です。今回のジェイスには隠し玉(隠れてない)があります。それがキッカーです。

・キッカーできれば強い。キッカーしない選択肢があるのも強い。

 ベレレンと今回のジェイス最大の違いは「マナ域の可変性」です。これがまさに、「1枚で完結する」の条件を満たす要素です。お供がいれば占術2しつつ引けます(テキスト読み上げ)。過去の5マナジェイスである『秘密の解明者、ジェイス』の+1よりも強力です。

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 また、1枚のカードでPWが複数並ぶということは、返しのクリーチャー1体・除去1枚では対処されないということを意味します。能力のランダム性・忠誠度の上げにくさにより壊れやすいという性質を二重の意味で解決する、このキッカーはかなりのナイスデザインです。

 マナ域が可変のPWには、『自然に仕える者、ニッサ』という先例がありました。

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 +で占術、0で忠誠度依存のアド取り能力、土地がめくれると強い、など共通点が多々あります。本当はベレレンではなくまずこちらを想起してしかるべきだったのではないか? と思えるほどです(書いていて存在を思い出しました)。このカードもスタンダード現役時は環境を席巻したとは到底言えませんが、複数のアーキタイプで使われていました。このニッサはカラデシュブロックのお隣、アモンケットが初出。この時期は機体や低マナのクリーチャーが強く、PWは『反逆の先導者、チャンドラ』や『ウルザの後継、カーン』、あるいは『ドミナリアの英雄、テフェリー』といったレジェンドクラスでないと使われにくかったのですが、それでも採用例があるのです。マナ域が可変というのはそれくらい強い。

 トークン生成がETB能力なため、能力スタックでジェイス本体に『取り除き』や『迅速な終わり』を喰らった場合忠誠度1のコピーが残るのみ、という弱点(?)はありますが、その場合もマナは損しますがアドは取れています。というか、即除去されるとマナ損なのは大体のPWがそうです。PWに対処しやすい相手にはどうせ除去られるのだからさっさと3マナで置いて利確すればいいだけ。じっくりいくマッチアップや、グダったときにはキッカー。この汎用性の高さが、今回のジェイス最大の魅力と言えます。

・どんなデッキに入る?

 他のカード次第としか言えない部分なので、今のスタンダードに存在して相性のいいカードから考察してみましょう。

 『エルズペス、死に打ち勝つ』。

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 経験者は解ると思いますがこのカード、3章で何も釣れなかったときの残念度がヤバいです。3マナナーセットレベルで壊れやすいやつがいれば別ですが、3テフェですら(妙な表現ですが)ペス勝つが要求する壊れやすさのレベルに達していませんでした。ジェイスはナーセットの穴を埋めるには十分な性能を持っていそうです。

 『トレイリアの大魔導師、バリン』。

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 死にそうなジェイスを回収。ドロー。土地が伸びてるから今度はキッカーで出し直し。ついでに言うと、トークンを潰しつつ本体を殴れるのでキッカーされた相手のジェイスにも強い

『空の粉砕』。

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 3マナでジェイスを出してラス。4でラスして5でジェイス。どちらでもハマります。

『自然の怒りのタイタン、ウーロ』。

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 土地が伸びて良し、死んで脱出のタネにして良し。難点があるとすれば、ウーロが強すぎてせっかくの新カード、ジェイスが霞むことくらいでしょう。

『雷の頂点、ヴァドロック』。

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 釣る。これに限った話ではなく、変容や(おそらく他にもたくさん収録されるであろう)キッカーなど、「見立てのマナコストより実際運用するコストのほうが高い」カードは相性がいいです。忠誠度を減らしすぎることなく、効果の大きいカードが手札に入るため。

 基本は青白ベースのコントロール、ミッドレンジでの採用になりそう。何のひねりもないですが、しかし、スタンダードのローテーション直後はアグロが優良なクリーチャーの選択肢に乏しく、コントロールが一番勝ちやすい環境なことが多い(と八十岡翔太さんが仰っていた)です。5マナニッサがローテーションすればウギンもより強くなりますし、とうとうヘビーコントロールの時代が来るやもしれません。

おわりに

 さて、次はナヒリ……と行きたいところですがなんか疲れたので、続きはまた次回にします。


 この記事や話題にしたカードについて、諸君からの感想を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Twitter、Twitter、Twitter)で(日本語か英語、もしくはケチュア語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、筆者のモチベが上がった日にお会いしよう。

 その日まで、あなたのジェイスがめくるのが、引き裂かれし永劫、エムラクールでありますように。


(Tr. MOSUKODESUYO "Hocho" Mosuko)




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