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ボム環境は真実か? という目線から真紅の契りドラフト環境に関する雑感をまとめる

・はじめに~結論箇条書き~


最初に、箇条書きで見解を示しておこう。 

・レアの価値が普段以上に高い 

・強レアを有し、それらに対処する手段もコモンに複数ある黒がベストカラー 

・バットリ/インスタント除去でシャクれる前提であれば赤いビートダウンが強い 

・青はアンダードラフトされている限り狙い目 

・白アグロは厳しい

・ボム環境?


 真紅の契りはボム環境だ、と言われているのを見かける。シールドは言わずもがな、ドラフトさえもレアに支配されている、と。これは単なる印象に過ぎないのか、それとも本当にそうなのか。

 筆者の考えるボムの基準は

1.効果(あるいはスタッツ)に対しコスト設定が低い。

2.即対処しないとゲーム終了レベルのアドバンテージ/盤面を産む。

3.触られにくい。

4.出した瞬間のインパクトが大きく、劣勢をひっくり返せる。

 上記4項目のうち2つ以上を満たすものである。たとえば、おそらく真紅の契り最強のカードである『アヴァブルックの世話人』は2,3,4を満たしている。

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 また、非パーマネント呪文には上記を複数満たすものが滅多にない(念のため付言するが、これは非パーマネント呪文は常にボムたりえない、という意味ではない。ラヴニカの献身の『集団強制』などは2,3,4を満たすので立派なボム)。

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 以上を踏まえて筆者が独断で選定したS級レアをご覧いただこう。

ボムリスト1

ボムリスト2

ボムリスト3

※ゲラルフはぎりぎりボムといった程度の評価であり、ここを下限だと認識していただきたい。また、『恐怖のドールハウス』は他のレアに比べセットアップが必要な点、有力なETBを持つクリーチャーがいなければややインパクトに欠ける点、共にほかのレアより一歩落ちる(ゲラルフとほぼ互角)が、引けば必ず採用できる無色のカードである点を高く評価してボムとした。濫用と特に相性がいいカードなので、青と黒(またお前か)で特に有用なカードである。逆に、コピートークンには裏面がないため両面との相性は悪い。

 全レア84種中、ボムと呼んで差しつかえのないものだけで23種ある。1/4以上の割合だ。

 次に、これらのレアの色の分布をみてみよう。

無題

 一見して明らかなのが黒の割合の高さだ。単色でも最多の6種類を有しており、多色を含めると更に増して3割5分を超す。顔ぶれも、出されただけで萎えること請け合いの連中だ。

 赤も単色で黒に次ぐ2位、多色は緑赤、黒赤の両面を受け入れられると恵まれている。残るバント3色は団子だが、どうしようもなさが群を抜く『アヴァブルックの世話人』と『船砕きの怪物』を擁する緑と青が同着、ワーストが白。『信仰縛りの審判官』(の裏面)もかなりどうしようもないが、3ターンの猶予がある時点で前二者と並ぶとは考えられない(繰り返すが、ハイレベルな争いをしているだけであって凡なレアなど歯牙にかけない強さの前提の話である)。

 これ以外、1ランク落ちるが喜んでピックするレベルのカード(オリヴィアや過充電縫合体)も含めると、1-1でレアをピックする確率は他の環境に比してかなり高いだろう。自分が土地やしょうもないレアを引いている横でデーモンや世話人を引かれていたら愚痴りたくもなろうというものだ。

 しかし、レアの価値が高いのはリミテッドでは程度の差こそあれ、毎度のことである。与えられたものがすべてのシールドはともかく、ドラフトにおいてはボムに対処できるコモン・アンコモンを十分ピック出来るのであれば、ボム環境とは言い難い。


 次項で、ボムに対抗しうるカードの顔触れを見てみよう。

・ボムに対処しやすい色


 一般的に、カウンターがある青、除去の第一色である黒がボムへの対応に優れる。

 まずは黒。上にあげたボムのうち、『骨の髄まで』で対処できないのはわずか6種だ(『墓所の冒涜者』はETBで仕事をしているが、一応対処可能の範囲に含める)。

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 昨今、黒のコモン確定除去は4マナが多いが、『骨の髄まで』はその中でも環境における重要さでは最上位である。破壊ではないのも、追放なのも偉い。間違いなく黒のトップコモン。

 また、格段に取り回しが悪くはなるが、同じく確定除去である『忌まわしき儀式』もコモンにいる。こちらは安くピック出来るのが最大の魅力。

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 アンコモンではあるが『英雄の破滅』もある。これは説明不要だろう。

 また、毛色は異なるが『頭狙い』に関しても一言しておこう。

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 シールドはともかく、ドラフトでは通常『精神腐敗』の居場所はない。しかし、リソースを枯渇させてボムにたどり着かせないという意味で、この環境では一定の評価を与えてもよいカードである。上振れれば除去として機能するし、土地2枚を捨てられたとしてもこの環境では後半余った土地は血でルーティングされることを考えれば決して無駄ではない。もちろん、自分も腐っているこれを血で捨てられる。

 黒はとにかく『骨の髄まで』の価値が非常に高い色だ。これが5手目以降で流れてきたなら今までのピックをすべて捨ててでも黒をやるべきである。

 続けて青。

 『中略』は、『船砕きの怪物』以外すべてに対処可能であり、かつ2マナ域としてもカウントできる。青のトップコモンと言っていいと思う。

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 『精髄の吸引』も、打ち消せない『船砕きの怪物』とクリーチャー部分を消してもしょうがない『信仰縛りの審判官』、置物3種を除くすべてに対処できる。また、青にとっては貴重な血トークン生成手段だ。今はまだ安く拾える段階にあると思うので、おいしく拾っておこう。

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 『洗い落とし』も出ていれば安く拾えるだろう。アンコモンだからと言って間違っても高く取らないように。

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 カウンターの魅力は、黒の除去に比べ格段に安く拾える点にある。構え続けなければいけないうえに後引きが弱いという明確なリスク故だ。カウンター多めの構成にするのであれば、この環境に限った話ではないが3ターン目から構えられるよう、2マナ域をさぼらないこと(『中略』の価値もここにある)。

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 また、インスタントタイミングのアクションを意識して取るべきなのも言うまでもない。要するにカウンターを取っていても、デッキの構成がカウンターを強く使えるようになっていなければ意味がないのだ。それがどんな構成でも強い除去との最大の違いである。

 白はコモンに『激情の報復』及び『シガルダの拘禁』、アンコモンに『勇敢な姿勢』、という計3種がある。

 『勇敢な姿勢』は言うまでもなく、ボムを守るためにも対処にも使える最高の1枚。

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 『激情の報復』は過去のアンコモン(『鑽火の輝き』)の上位互換であり、切除モードも6マナと重くはあるがインスタントタイミングの確定除去なので言うまでもなく重要だ。

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 『シガルダの拘禁』は3マナとギリギリの重さ。濫用された際のマイナスイメージから少し嫌われすぎている傾向があるが、墓地に送らずに済む除去というのは墓地回収も強いこの環境では良い。総じて、他環境の『平和な心』亜種より弱いのは間違いないが、やはり重要な存在である。

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 赤は概ねいつも通り。点数除去しかないため、ボムへの対処という意味では一歩劣る。しかし、除去の質自体は決して悪くない。

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 緑はコモンの『狼の一撃』がすべてではあるが、このカード自体は夜であれば前環境のアンコモンである『直接射撃』に近い性能である。

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 どのみちオンリーワンなので使わざるを得ないが、インスタントなのでシャクれることもあるだろう。

 また、『押し潰す梢』は赤緑、黒緑で除去が薄いならメインに1枚入れておいてもかまわないと思う。腐ったら血でルーティングすればよい。

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 全体として、この環境はスペルの質が低い。最高級のものを通り越してしまうと急に弱くなるのだ。

 では環境の速度はどうだろう。ボムレアの中には効果相応に遅いものも多い。6マナ7マナカードの価値が低い、すなわち2から始まるアグロが強い、速い環境ならナヤカラーでもさっさと相手を倒してしまうことでボムに対処できるのであるが……。

・環境の速度

 は、遅い。一見して明らかなのが2マナ域のアタッカーの層の薄さだろう。真夜中の狩りの集会コモン2種のような、2ターン目に出して継続的にアタックし続けられる2マナ域が存在しない。

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 白緑に割り当てられた訓練は、召喚酔いに影響されるため効果を発揮するのが集会に比べてワンテンポ遅く、そのズレで相手の除去や壁が間に合ってしまうことが多い。また、継続的に誘発させるにはひと工夫が必要で、先手後手を含めて常にかみ合いが要求される。1マナの白いコンバットトリックがないのも、白ベースのアグロを構築する上では痛い。

 それに比べて、受けるカードの選択肢は各色とも豊富である。赤には1マナ2マナにコモンの火力がそれぞれ存在し、低マナ域の肉質の悪さを十分補える。黒は除去に加えて白黒ライフゲインのパーツ、緑黒タフネスのパーツ共に前のめりなアグロに待ったをかける。青も、ルーターと3/3スピリットという間違いなく安く拾える2マナ域2種類に加え『中略』もあるので、受けには事欠かない。緑、白も2マナは受けに向いたカードはないが3マナになると2/3ライフリンクや『シガルダの拘禁』、1/4リーチ、3/2死んだら1ドロー(これは単純に常に強いが)など粒ぞろいである。

 前項でスペルが弱いと書いたが、攻めるクリーチャーもさほど強くはない。要するにコモンが全体的に今一つなのだ。だいたいにおいて、コモンが弱いときは受けるデッキのほうが強くなりがちであり、お互い決め手を欠くのでゲームが長引きレアの登場率も上がる。よってますます引けたレアの質がそのまま勝敗を左右する……。

・ビートダウンの活路

 では攻めるデッキは無理なのか。それを判断するために、まずアグロが2マナ域を重視するのはなぜなのか、考えてみよう。なぜ構築のように1マナから始まるアグロではないのか。

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 答えはいろいろあるが、カード1枚と交換できる公算の高い1マナクリーチャーが低レアリティに多数存在する見込みはほぼないからである。無視していたら負けるので除去せざるを得ない、あるいは相討ちに持ち込まざるを得ない、そんなパワフルな1マナカードはあったとしてもアンコモン以上だ(構築の強いアグロを思い返してほしいが、コモンクリーチャーはほぼ採用されていないはずだ)。リミテッドでは、相手のカードと1:1交換しないカードをデッキに入れてはいけない。これは大原則である。

 また、重要視するのがなぜ2マナなのか。ありったけ3マナ域を詰め込んだデッキの何がダメなのか。

 手札とマナをきれいに使い切りたいアグロにとって、2+2で動けるようになるのが4ターン目であるのに比べ、3+3は6ターン目であり、そもそもそこに至るまでに土地を6枚引いていなければならない。ダブルアクションを重視せず3マナを順番に出していったとしても毎ターンマナは余るし、相手のカードは4→5と強くなっていくため、そのタイミングでは3マナのカードのインパクトも漸減している。このリスクを受け入れられるほど、2マナと3マナのカードの強さに差はない。

 以上は定石と化している考え方だが、加えて最近のマジックのセットの傾向として4マナからカードはぐっと強くなる。青は4マナパワー3飛行+α、黒は4マナ確定除去、緑は4マナ4/4+αがデフォルトになりつつある。

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 対して、2マナ域のコモンのクオリティは(バニラがほぼ消えた、という意味で底上げはされたが)代り映えしない。パワー3がデフォルトになったりはしていないわけだ。

 また(これは最近に限った話ではないが)、2→3マナ及び4→5マナのカードのクオリティの上昇幅は、1→2、3→4ほど劇的ではない

 脱線しているので結論を書くが、この環境のビートダウン(アグロというほど早くないのでこう表記する)のキーとなるのはこの2種の威迫クリーチャーだ。

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 赤黒である。マナと手札を使い切ることを主眼に2マナ重視のカーブを構成するのと同じように、血トークンで余剰の土地を有効牌に変換しつつマナを使い切ることを主眼に、3、4、5マナのクリーチャーを普段より多めに採用する。ちょっと脂っこい感じ(?)の赤黒が、この環境のビートダウン筆頭。

 もちろん、重くて弱いでは話にならない。普段に比べて一手遅れる公算が高い分、回避能力は重要になる。赤黒は3~5まですべてコモンで威迫を用意できるが、ダブルブロックを強要する威迫はインスタントタイミングでのアクションとの相性がいい。除去、バットリがそれに該当する。

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 つまり、威迫を多く擁し有用インスタントが豊富な赤はビートダウンにおいては黒にも勝る輝きを放つ。クリーチャーがいなければ使えないバットリの多い構成は通常危険だが、そのリスクも血が低減してくれる(そればっか)。

 赤緑も、赤黒には劣るが赤で血トークンが準備でき、緑の1マナジャイグロと肉質に優れる狼男を使えるので悪くない。緑は空きやすく、アンコモン以上を拾いやすいのも大きい。

 しかし、これはインスタントでシャクれる前提の話ということを忘れないでほしい。普段リミテッドをやらないプレイヤーも多くプレイしている環境初期のアリーナのラダー、それも低ランクレベルであれば(失礼な言い方になってしまうが)いくらでもシャクらせてくれるためバットリ多めの構成がベストだ。一方、それなりに慣れたプレイヤーが増えてくる環境中期~後期、あるいは高ランク帯ではシャクらせてもらうのもそう簡単ではなく、肉質に劣る赤が用いるバットリはリスクのほうが目立つ。赤がベストカラーだという意見の多くが、インスタントでシャクれる前提に立っているという認識はしておいたほうがいい。

 ではシャクれない相手にはどうすればいいのかは、わからない。俺が知りたい。

 あと、黒緑はマルチのアンコモンに依存しすぎて弱いのでデーモンや世話人クラスのボムがない限りやらないほうがいい。

・ベストカラー

 黒。もっともボムレアが多く、コモンでその多くに対処でき、ボム待ちのコントロールデッキ、濫用やライフゲインのシナジー、血トークンを活用したアグロいずれもこなす黒は、カードパワーと受け入れに優れた文句なしのベストカラー。

 優良除去と血トークン、威迫による中堅ビートとバランスが良い赤、カウンターという唯一無二の強みを安く拾える青がそれに次ぐ。

 白と緑はあえて優劣をつける必要性もない。黒との相性やボムへの対処で白が勝り、赤との相性、狼男特有の上振れのしやすさは緑のほうが上といったところか。

 黒>赤=青>白=緑 である。もっとも、青に関してはカウンターが高く見られ始めた場合評価を少し落とすことに留意してほしい。あくまで、安く拾えるカードで相手のボムに対処できるところに一番の価値がある色である。また、青白はコモンの束になってしまうと異次元に弱いが、アンコモン以上を安く拾える位置に座った場合かなり強力なアーキタイプであり、この先研究が進めば黒赤ができなかった時の逃げ道として有用な可能性がある。

・おまけ 過小評価されているコモン

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 白アグロ/ライフゲインのキーパーツ。後から出てくるすべてのクリーチャーにちょっとしたバフをかけてくれる。訓練をやる(やらざるを得ないポジションになった)なら1枚目は相当高く見てもいい。青白飛行でも、飛行だけで3マナ2/1飛行の訓練を誘発させられるようになるので重要。システムクリーチャーは1マナでも強い

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 2マナのパーツが弱い場合、いっそこれでキャントリップしつつスキップするのも手だ。赤黒はもちろん、白や緑ではライフリンクを得られないものの、一度通して訓練を誘発させさえすればそこから連鎖させて継続的に殴れる、という場面では重宝する。もちろん高く取るものではないが現状不当に安く感じる。

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 未開地はいつも過小評価されている。特に色を決め切れていない序盤で流れてきた1枚目は、最優秀クラスの除去以外のコモンより優先していい。後半パックで引いたボムの受け入れにもなる。

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 パワー上昇も血トークン生成も白系アグロにとって貴重な効果。だが、装備品の常として2枚以上は絶対にいらないので取るタイミングに注意。繰り返すが安く拾ったカードを強く使う、その方法を知るのが大切だ。

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 実は青赤をやるならキーパーツたり得るんじゃないかと思う人。青が安い前提ではあるが、タップインスタントやバウンス、カウンターを駆使して相手のターンに動き続ける構成にすればマストアタックのリスクを限りなく低くできるし、ここに除去を吐かせることも可能。どうせ死ぬほど流れてくるし、かき集めて専用デッキが組めないか画策中。

・おわりに

 以上、ボムレア環境という目線から開始して真紅の契りリミテッド環境の雑感を記した。えらく長文となってしまったが、書きたいと思っていたことはだいたい書いてしまえて満足している。

 終わりに書くことではないかもしれないが、この記事はいわゆる必勝法の伝授を目的としたものではない。そんなものは存在しない。ドラフト、特にピック段階では他プレイヤーとの評価のすり合わせが重要で、"同じ環境でもこんな風に理解している人がいる"ことを知るのは単純にプラスとなる、という理解のもとに筆者の考えを述べたまでである。

 また、安易な「この環境はこの色をやりましょう、この色はやらないほうがいいですよ」式の記事ではなく、基礎となる考え方をおさらいしつつ環境の在り方を観察することで、次以降の環境にも生かせる、リミテッド筋を鍛える一助となるものを目指した。ちょっとごちゃごちゃしてしまったがご容赦いただきたい。



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