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ちょちょぎれる

カミさん「ヒゲ、脱毛しな…」

嫁「今日、脱毛してきた。ヒゲ、脱毛しな。」
??
妻「割引券が付くんだって。ヒゲ、脱毛しておいでよ。」
???

ひょんなことから、ヒゲ脱毛を行うことになった。
理由はあるようでない。
ネットで体験予約を入れて、とりあえず150本抜くことになった。

11月某日、都内某所「MEN'S T○C」に私はいた。
もちろん、脱毛150本の体験予約をしているから。

予約時間より15分ほど早く入店し予約している旨を伝えると、ロビーにて待つように促された。
雑居ビルのワンフロアは内装が小綺麗で清潔感にあふれていた。
壁にかかったモニタには「サンドウィッ○マン」さんが何やら楽しげである。富澤さんのあごにはたくましいヒゲが蓄えられていた。

間もなくして個室に通され、施術される内容やヒゲの生える仕組みやら周期やらの説明を受け、各種同意書にサインをした。

説明はおおむねこんな感じである。

  • ヒゲは今見えている分が毛根全体のX%である

  • 毎回全体のX%を抜いていくことで最後の0%に近づけていく

  • 脱毛は1本あたり○○円である

  • 一度脱毛しても2~3週ほどで別の毛根から生えてくる

  • 脱毛機械が2種類あって、痛いのと痛いのがマシなのがある

  • 使用する脱毛機械によって一本あたりの単価が変わる

  • 会員になって本数前払いにするとお得(駅前留学方式か?)

しかし、なにやらやけに早口でまくし立ててくる。
何か不安要素や、聞かれたくないことでもあるのか、はたまた体験脱毛などというお金にならない仕事はとっとと切り上げたいのか?
たどたどしい説明であった。
たどたどしい説明のあと、体験費用500円を支払った。

とりあえず、超絶割引の体験150本にしか興味が無かったので、適当に聞き流して施術することにした。
150本で口と顎含めた全体は難しいとのことだったので、希望として鼻の下と唇の下を重点的にお願いした。
顎はひげ剃りで負けてもさほど気になるまい、という自己判断である。

施術室に通され寝台に乗るように促される。
高い。
ハコ馬的なものもなく、よじ登る必要がある。
高い。
靴を脱いで寝台に乗る際に「よっこらしょ」と声が出た。
高い。

仰向けになって待つこと数分。
施術氏が現れ、機械の説明と、これから150本抜く旨を説明した。
その際、痛ければ途中で施術をやめたり、少し休憩したりといったこともできる、ということだ。
ふむ。休憩はともかく施術の取りやめはこの期に及んであり得ない。
しかし、このやりとりは歯科医での例のアレに近い気がした。

全てを承諾し、施術が開始される。
まずは本数の少ない唇下の2本が抜かれる。


ぴっ

ぴぴっ


(ぎゃ~~~~~~~!!!)※心の声


ぴっ

ぴぴっ

(くっ、ころ…文字数!!!)※心の声


施術氏「はい、下の2本終わりました~」
私「すごい痛いですねコレ(泣笑)」
施術氏「そうなんですよ~、じゃ、上いっちゃいますね~」


ぴっ
ぴぴっ
ぴっ
ぴぴっ

毛を抜かれるたびに、何か大事な大変なものを失っていく気がする。

ぴっ
ぴぴっ
ぴっ
ぴぴっ

施術前にトイレに行くか聞かれたが、行けばよかった…

ぴっ
ぴぴっ
ぴっ
ぴぴっ

あと何回やれば終わるんだろう…(遠い目)※アイマスクされている

ぴっ
ぴぴっ
ぴっ
ぴぴっ

あ、目元から水分が…(アイマスクされている)※涙

ぴっ
ぴぴっ
ぴっ
ぴぴっ

施術氏「はい、終了です」
私「ハァ、ハァ、ハァ…」
私「いゃあぁ…思わず泣いちゃいましたよ(´;ω;`)、痛いですねコレ」
施術氏「そうなんですよ~、特にお肌が乾燥していると痛いんですよ~」
施術氏「では、冷却しますのでジェルと保冷剤持ってきますね~」

その後、体感で10分は保冷剤が来なかった。早く冷やしてほしい。
ひりひりするのだ。
そもそも、施術前の説明で早く長く冷やすほど、施術部の赤い腫れが引くのが早いと言っていたじゃぁあないか。

数分後、ラップに包まれたふにゃふにゃの保冷剤が来た。
これがデフォルトなのか、冷えた保冷剤が無かったのか。
顔に当てた瞬間は冷たかったがほどなくして常温になった。

冷やすこと15分ほど。
施術が全て終わり、荷物をもってロビーで待てとのこと。
言われたとおりロビーで待った。
モニタでは相変わらず富澤さんがひげを蓄えていらっしゃる。
私はチョロくもなくなり、既にツルツルである。

その後、残りのヒゲ、顎部分の見積もりと、今現在生えていない毛根から出るであろう未来のヒゲの見積もり書を貰い、たどたどしい説明を受けた。
私は既に顔で笑って心で泣いていたので(半泣き)適当にごまかして帰宅した。

妻からLINEが来た。
妻「いまどこ?」
私「終わったところ…泣いた」


終わったのが夕食時だったので、脱毛時の注意事項である当日の禁酒を無視し、黒ホッピーを飲んだ。
スタッフは皆女性で、何故か白衣のようなユニフォームだった。