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11月に読んだ本の感想など

11月に読んだ本の感想などを書きます。

恩田陸著『蜜蜂と遠雷』

直木賞作品なので読んでみた。
あらすじは、ピアノのコンクールで優勝を目指す若者たちの群像劇というもの。
個人的には約束されたサクセスストーリーを読まされている風に思い、その上で裏切りの展開も特になかったので、評価されているほど名作であるという印象は残らなかった。
ピアノのコンクールが題材ということなので演奏中の描写にはかなり力が入っており、この描写を読むための小説と言ってもいいのかもしれない。
やはり私はこういったキラキラした物語よりも、後述する西村賢太氏や中村文則氏の描くような、泥濘にその身を沈める他なくなってしまう人間たちの話の方が好きだと改めて感じた。

西村賢太著『小銭を数える』

タイトルが気になったので読んでみた。
あらすじは、どうしようもない男がどうしようもない生活を送るというもの。
本当に作中の男はどうしようもなく、彼女の父親から借金をしているにもかかわらず、さらに借金を求め、しまいには自身の機嫌が悪くなると彼女に暴力を振るう。
本当に読んでいて胸糞が悪くなるような話なのだが、私小説ということで、著者本人が体験した出来事であるらしい。
自己中心的な人間の悪質なエゴイズムが嫌というほど身に染みる作品。
また併録されている『焼却炉行き赤ん坊』も同じような屑男が主人公の作品。こちらも破壊的、破滅的な男女の恋愛が描かれている。
非常に面白かった。

西村賢太著『苦役列車』

『小銭を数える』が面白かったので読んでみた。
あらすじは、日雇いで働く19歳の青年が、同じ歳の大学生と日雇いでよく一緒になるようになり、まともな生活に戻りかけるものの、結局戻れないというもの。
今作でも人間のエゴイズムについてよく描かれている。主人公貫太の自己中心的なものの考え方には嫌悪感を抱かされるが、同時にまた彼のように生きることができるならばそれはそれで一種の幸せではないかとも思えてきてしまうのが恐ろしい。
現代文学では珍しくなってきている私小説というジャンルを再興させるパワーを持っている作品だと感じる。
非常に面白かった。

中村文則著『迷宮』

中村文則氏の作品はだいたい面白いので読んでみた。
あらすじは、主人公の彼女がかつて起きた未解決殺人事件の生き残りであり、その謎に主人公が惹かれ調べていくというもの。
今作もまた中村文則氏らしく隠喩めいた表現が多々登場する。序盤から終盤まで、終始ミステリアスな雰囲気を醸し出すのが非常に巧みな作家であると感じる。
話のまとめ方としては判然としない部分も多く、その点ではやや不完全燃焼になってしまうが、考察を深くするような読者には勧められる作品であるように思う。

佐藤究著『QJKJQ』

同著者の『テスカトリポカ』が面白かったので読んでみた。
あらすじは、殺人鬼一家の母と兄が消え、長女は父親のことを疑うというもの。
長女の一人称視点で話が進んでいくため、かなり状況の把握が難しい作品。序盤から中盤にかけてのミステリアスな雰囲気の演出は非常に上手く感じる。
少し風呂敷を広げ過ぎたような印象はあるが、それも綺麗に畳みきっている。しかし綺麗に畳まれすぎてしまっていると捉えることもでき、終盤で起きる様々な出来事についても読者の想像しうる範囲を超えたトリックが使われてしまっているため、ミステリとしてはカタルシスを感じづらい印象を受けた。
文章は読みやすく、グロテスクな描写が好きな読者には勧められる一冊。

若桜木虔著『プロ作家養成塾』

タイトルが気になったので読んでみた。
プロ作家になるためのハウトゥー本。
ホラー小説や歴史小説などカテゴリー別に小説の書き方を指南しており、親切であると感じた。また悪文を添削するという方式を取っていたのも面白く感じた。
添削や小説を書く上でのタブーについてよく書かれている一方で、逆に良いものの創作法についてはあまり触れられていないように感じた。小説を書く上で悪い部分を少なくするという点では役に立つが、面白い作品を書くという点では参考になる部分は少ないように思う。

小学館文庫編集部編『超短編! 大どんでん返し』

タイトルでそこまで言うならと思い読んでみた。
どんでん返しのギミックがある4ページほどの短編が様々な作家によって書かれている。
読んでみて、やはり最初にどんでん返しと言ってしまっている分どんでん返し感は薄れてしまうと感じた。
どんでん返しであると言われていなければ面白いと思えるものも、最初から身構えているせいで食らった結末がインパクトに欠けてしまう。あまり喧伝にどんでん返しという言葉は使うべきではないように思う。
米澤穂信著『白木の箱』が特に面白いと感じた。

月刊TVガイド2022年1月号

私のいわゆる推しであるところの轟京子さんのインタビューが乗っているので読んでみた。
記事が短い! 半ページ分くらいしかインタビューが載っていない。また同時進行で夢追翔氏のインタビューも載っているのだが、やはりボリュームが少ない。
1万字インタビューをしろ!
しかしこのようにして雑誌で轟京子さんのインタビューが見られる日が来ることについては嬉しく思う。
いつかはファッション誌で姿を見ることができたなら、それは素晴らしいことだ。

先月も読書量は少なめ。SUKUNA-Xでした。今月は今年ラストなのでもうちょっと本が読めたらいいかなと思います。まあ思うだけなのですが。