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5、6月に読んだ本の感想など

5,6月に読んだ本の感想を書いていきます。

水樹奈々著『深愛』

5月はエッセイ月間として多くエッセイを読んだ中の一冊。
内容は声優である水樹奈々氏が、学生時代から演歌歌手を目指し、最終的に声優という職業へ進んだ自らの半生を振り返るというもの。
読んでみて、まさしく水樹氏は努力の人であることがわかる。世の中には運や天賦の才能によって成功する者も数多くいる中で、水樹氏の現在の声優としての成功は、本人の努力なくしてはありえなかったであろうことを本書から知ることができる。もちろん、その中で幸運な巡り合いというのもあるのだが、それもまた彼女の努力によって引き寄せられたものであった。
やはり、業界の最前線にいる人は、それ相応の努力をしているのだと改めて実感させられた。面白かった。

柴田哲孝著『TENGU』

以前より気になっていたミステリー。
あらすじは、26年前に群馬の寒村で起きた天狗の仕業としか思えない連続殺人事件を、当時も現地で取材をしていた記者の道平が改めて捜査するというもの。
本作の魅力はなんといってもその真相にあるのだが、一目突飛に見えるその真相も、丁寧な伏線の貼り方や精緻なプロットの構成によって、大きな説得力を感じられた。
ミステリーとしても面白いが、当時の村社会や親子の関係、社会情勢や生物学についても深く掘り下げられており、単なる娯楽小説の域に留まらない。
面白かった。

にゃんたこ著『世界は救えないけど豚の角煮は作れる』

エッセイ月刊の中で読んだ一冊。著者であるにゃんたこ氏がYouTube等で活動されていることもあり、読んでみた。
著者本人が小説が好きであることもあるのか、全体的に読みやすい文章だった。
内容としても、YouTubeで見られるような奇人っぷり溢れるエピソードも多くある中で、時折挟まれるやや重たいエピソードでにゃんたこ氏の物事の考え方、捉え方が見られる部分も良かった。
個人的には「平穏な日常に、戦争は突然訪れる」「豚の角煮は生活を救う」「理由なんてない」あたりが好み。
面白かった。

島田雅彦著『カオスの娘』

マシュマロでおすすめの本を聞いたら、島田雅彦氏の著書を勧めていただき、ブックオフに行った際に唯一置かれていたこちらを読んでみた。
あらすじは、シャーマンになることを運命づけられた少年ナルヒコが、破滅に取り憑かれ殺人を繰り返す少女を救い出すというもの。ジャンルはスピリチュアル・ミステリーであるらしい。
ミステリーではあるものの、謎解きというよりもナルヒコがシャーマンになるまでの過程、少女が自らの名前を取り戻す過程、二人が作品中盤で出会う大学教授、真田との関係、その中での少女の心境の変化についてがより深く書かれている。
初めてこういったジャンルの作品を読んだのだが、文章の読みやすさもあり、特に苦なく読むことができた。勧められた著者の別の作品も気になるところである。
面白かった。

朝井リョウ著『死にがいを求めて生きているの』

朝井リョウ氏が好きであり、著作を読み進めている。そのうちの一冊。
あらすじは、智也と雄介という大学生の幼馴染を、様々な人の視点から見ていくというもの。
本作のテーマは、なんと言っても「生きがい」という部分にあると考える。雄介は自らの目標をコロコロと変えながら、彼自身の生きがい、あるいは死にがいを求め続ける。そんな雄介に智也は一体なぜ付き合い続けているのか? やりがいとは、生きがいとは、なんなのか? そんな問いを投げかけられたような気がした。
非常に面白かった。

桜庭一樹著『砂糖菓子の弾丸は打ち抜けない』

以前からタイトルが有名であったので気になっていた作品。
あらすじは、早く社会へ出たいと自衛官を志望する中学生山田なぎさが、都会からやってきた変わり者の転校生、海野藻屑と出会い、藻屑の不思議で理不尽な日常に引き込まれていくというもの。
独特な筆致で書かれる、これまた独特な世界観は、読む人間を選びそうであると感じた。雰囲気としては、大槻ケンヂ氏の青春小説に、サンマの腑のような苦みを添付したようなイメージだろうか。
子供は子供であるが故に自由で、しかし子供であるが故に不自由である。その中でも前に進む、生命の強さを感じられた。


蓮見圭一著『水曜の朝、午前三時』

タイトルの見えない特殊なカバーで、「絶対に泣く!」みたいなことが書いてあったので読んでみた。
あらすじは、45歳で亡くなった翻訳家の直美が遺したテープに、彼女が半生を振り返った内容が吹き込まれており、それを直美の娘の夫が聞いている、というもの。
直美は大阪万博で出会った、彼女の夫でない男、臼井との恋の思い出を回想する。しかし、最終的に直美は臼井でない男と結婚する。
本作は直美が本人の目線で思い出を語っているためか、情景描写や本人の考え方が、彼女の主観的意見により詳細にされていて、入り込みやすい。
なぜこのテープの聞き手が直美の娘の夫なのか? といった部分など、独自の解釈の余地が残る作品。

紗倉まな著『最低。』

AV女優として活動している紗倉まな氏のデビュー作。もちろん主にAVだけで活動している段階から知っている方の作品であったため、読んでみた。
AVや風俗産業に関係する女性を主役とした短編が4作収められている。
各短編共にやや淡白な印象があった。もう少し各キャラクターの心理的な部分を深く掘り下げてもいいように思う。
内容に反して、少女小説のような筆致であるように感じた。ライトに読めるという点では高評価。
本作と比較して、最新作の『春、死なん』の評価が高いので、そちらが気になるところ。今後もお世話になります。

H・P・ラヴクラフト著『ラヴクラフト全集2』

何年か前からTRPGがド流行りし始めて、中でもクトゥルフ神話TRPGと呼ばれるものをよく見かけるので、原典を読んでみた。
この全集には『クトゥルフの呼び声』というクトゥルフ神話の根源たる作品が収録されている。
あらすじは、サーストンが大叔父の遺品について調べていくうちに、謎の宗教団体の存在を知り、そこからさらにその原典を追い求めていくというもの。
古い翻訳作品であるものの、文章は非常に読みやすかった。
個人的にあまりTRPGというものに良い印象を持っていなかったこともあり、そこまで期待をしてはいなかったのだが、なるほど世界観は面白いと感じた。
ラヴクラフトは自らの思い描く世界観を文章として表現することにひどく長けているのであろうことが、この短編だけでも窺い知ることができた。他のクトゥルフ神話の世界観の作品も機会があれば読んでみたいと思う。

加藤雄一著『やんちゃギャルの安城さん』

私のいわゆる推しであるところの、にじさんじというバーチャルライバー事務所に所属している轟京子さんが面白いと言っていたので、読んでみた。
絵が上手い。
安城さん、可愛いね。こんなクラスメートが、欲しかったね。
宇崎ちゃんとか長瀞さんとか、こういう主人公が女の子に振り回される系のラブコメが最近多い気がするけれど、流行っているのだろうか。基本的にはそう言った作品を見ると、ムカついてしまうことが多いのだけれど、この作品ではあまりそれを感じなかった。なぜだろう。絵が、好きだからかな? それとも、ギャルが好きだからかな? どっちもかな?
最近は、街からギャルが、減っている。悲しいね。増えて、欲しいね。
非常に面白かった。

夏になったけれど、どうせ外にも出ないから、たぶん本は読み続けると思います。おすすめの本もたくさん教えてもらったので、色々と読みたいね。