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2月に読んだ本の感想など

2月に読んだ本の感想などを書きます。

若竹千佐子著『おらおらでひとりいぐも』

芥川賞なので読んでみた。
あらすじは、74歳で一人暮らしをしている桃子さんが過去を回想するというもの。
全編を通して岩手弁が使われている場面が多く、慣れていないと読み進めていくのが難しい。また桃子さんの感情がダイレクトに文章に表れるため、読むのに体力を使う。
個人的には共感できる部分が少なく、そこまでハマるような作品ではなかった。この辺りはまた歳を取ってから読むと変わっていくのかもしれない。
全体の文量は短いので、著者や本作が気になるという人は読んでもいいだろう。

城平京『虚構推理』

タイトルが面白そうだったので読んでみた。
あらすじは、事故で死んだアイドルの霊が人を殺しているので、それを巫女の琴子が退治しようと試みるというもの。
かなりくだけた文体で、ほとんどライトノベルのような読み味の作品。特にあまり本編と関係のなさそうな登場キャラクター同士の掛け合いが多く、やや冗長になっているような印象も受けた。
ストーリーの核心についてはタイトルの通り虚構の推理が大きく関わっているが、私はあまり好みのギミックではなかった。
アニメや漫画化もしているようなので、ライト層のミステリファンやアニメ、漫画のファンは読んでみてもいいだろう。

角田光代著『八日目の蝉』

有名なので読んでみた。
子供を誘拐して逃亡を続ける女の話と、誘拐された子供が成長したのちの話が連続で収められている。
前半の誘拐犯の逃亡劇は、誘拐犯の心情がよく描かれていて、ストーリーに入り込みやすいように思う。また逃亡中の緊迫感、緊張感もあり読者を退屈させないようになっていると感じた。
後半のパートでは誘拐された子供の成長した姿を描いており、成長した子供が誘拐犯と同じような道を辿っていくという、人間の不条理さを書いている。
個人的には最後のパートは無くても良いように感じた。
面白かった。

高田崇史著『QED 式の密室』

QEDシリーズなので読んでみた。
あらすじは、安倍晴明の歴史に関する謎を解明しつつ殺人事件もついでに解決するというもの。
今作は殺人事件のトリックと安倍晴明の歴史の謎が大きく結びついており、謎解きパートに関してはシリーズでも屈指のものになっていると感じた。
話自体も短いため、高田崇史作品を未読の人はこの作品から読み始めてもいいだろう。
面白かった。

高田崇史著『QED 〜ventus〜 鎌倉の闇』

QEDシリーズなので読んでみた。
あらすじは鎌倉幕府の謎を解くついでに殺人事件も解決するというもの。
今作では『式の密室』ほか以前の作品にあった内容と被る部分が多く、文章量に対しての満足度自体はそこまで高くなかった。とはいえこの作品で初めてQEDシリーズに触れる読者も想定できるため、致し方ない部分ではある。
謎解き自体は鎌倉幕府の謎、殺人事件の謎共にそこまで大きな衝撃はないが、よくまとまっているという印象を受けた。
面白かった。

曽根圭介著『熱帯夜』

以前読んだ同著者の『鼻』が面白かったので読んでみた。
借金取りに知り合いの妻と人質にされた男の話、老人を徴兵する制度のある世界の話、蘇生した人間が存在する世界の話の三編が収録されている。
どれも読後感が非常に悪く、ホラーとしての完成度が高いものが多いと感じた。特に『あげくの果て』では歯車が狂っていくのを眺めているしかできない感覚に陥り、気分が最悪になる。
面白かった。

来栖夏芽著『人外教室の人間嫌い教師 ヒトマ先生、私たちに人間を教えてくれますか……?』

Vtuberが書いているので読んでみた。
あらすじは、人間が苦手な主人公が人外の通う学校に新人教師として赴任するというもの。
典型的な学園モノライトノベルといった印象だが、使われている日本語やストーリーに大きな破綻は見られず、ちゃんとした小説になっていると感じた。またストーリーや主人公の行動に根拠づけがされていることが多く好印象を受けた。物語の最も主軸であろう感動パートに関してはどこかで見たことがあるような安っぽさを感じたが、それ以降の終盤で予想外の展開があったのが嬉しいところ。
また全ての章で三題噺を使っているが、やや強引な部分があるものの比較的自然に三題を消化しており、その点については作家の手腕があるように思う。
バーチャルユーチューバーが書いた、という部分を除いてもレベルの高いライト文芸であるように感じた。

堀元見著『教養悪口本』

インターネット芸人の本なので読んでみた。
本著はインテリっぽく相手をディスることができるように、さまざまな言い回しの悪口が載せられている非常に性格の悪い本。
使いやすいものから、正直使い所がないようなものまでさまざまな悪口が収められている。一番使いやすいのはやはり「プロールの餌」だろうか。しかしこの項にあった「君の作品を売りたい」の発言はいただけない。あのプロールの餌は完成度が高い方で、本来ならプロールの餌にもなれないほどの完成度の作品がベストセラーと称されてしれっと書店で平積みにされていることも多々ある。もし著者がこのよう作品を読んでしまったら「出版社はこの世に潮騒があるのに、なぜ三文恋愛小説を作ったのか」と憤死してしまうだろう。
いつか「カツレツのように頬ひげを生やしている」を使ってみたいし、本作には載っていないが個人的には「シビリアンコントールに毒されている」も使ってみたい。
ほりぬきチャンネルいつも見てます。

今月はまあまあがんばりました。来月もまあまあがんばりましょう。ヘイヘイヘイガールどんなときも くじけずにがんばりましょう ヘイヘイヘイボーイ かっこ悪い 朝だってがんばりましょう。