【男子宝石の最期】 #毎週ショートショートnote
生まれ落ちた時から、硬度だけは一級品。
けれど、透明な輝きもなく、地味すぎて装飾品としては、見向きもされない。
人造ダイヤの製造技術が、未発達だった頃、ヒトは砂粒のようなサイズの結晶しか作れなかった。
けれど、この砂粒は地上の何より硬い。
ならば、と鋸やヤスリに塗され、あらゆるものを削り、磨くことに使われた。
それが俺たち、男子宝石・研磨用ダイヤだ。
気取ったルビー、サファイア、エメラルド。
女子宝石達を、硬い刃で切断し、表面をガリゴリと剥ぎとり、磨く。
さっきまで、蔑んだように俺たちを見下ろしていたやつらは、割られ削られて、泣き叫ぶ。
美しい姿を削り出す、この瞬間がたまらない。
今日も仕事だ。
作業台の上には、10カラットはありそうな、宝石の女王、天然ダイヤモンドがいる。
精一杯立ち向かうが、砂粒サイズの俺たちは、本物の前に力尽きて散り散りになり、流れる水と共に下水に吸い込まれた。
男はいつの世も、女を磨き、消費される存在なのである。
〈おわり〉
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✳︎たらはかにさんが主催する、毎週ショートショートnoteに参加しています。今週のお題は「男子宝石」でした。本当に全く「なんじゃそりゃ」でした。笑
**連続投稿302日目**
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