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GoogleMapにない道の話

昨日、敦賀半島産の水晶を探しに、山に行った話を書いた。

その時、気付いたのだけれど、世の中には「GoogleMapに乗ってない舗装路」というものが存在している。
その証拠がこちら。

一枚目、目的地「♡」目指して動いている青い丸が私。

二枚目。
縮尺が変わっているけれど、同じ道の先を走る私がいる。
目的地を通り過ぎた後も、延々と舗装路がついていたので、どこまで行けるのか試していたのである。
電波が入らず、これ以上明確な地図が落ちてこなくてぼやけているが、体感では、この先1km以上は道路が続いていた。

私は、とても不思議だった。

これが、舗装路が途切れて未舗装路になっている所なら
「車で現地の状況確認をしに来た人が、悪路にビビってしまって、先に進めなくなり地図に載せなかった」
という解釈ができる。
けれど、地図上で道が途切れているポイントの先も、延々と舗装路が続いているのだ。
長年放置されていて、道路の真ん中から草が生えているところもあったけど、走れないことはないし、使っている人(おそらく猟師さん)の痕跡もあった。
だったら、GoogleMapにも載せればいいのに、と思う。

なぜだろう?
なぜ、同じような舗装路なのに、途中までしか載せてないのだろう?
例えば「どこにもつながっていない道路は載せなくていい」というようなルールが、Google社内にあるのだろうか?
いや、でも、それだと半島の先端の行き止まりまで伸びる道路は、どんな立派な国道でも乗せなくていいことになってしまう。

では、山林の所有者が「この先は立ち入り禁止」として、Google社の侵入を拒んでいるのだろうか?
だとしたら、その基準は何なのだろう?
謎を解明したくて、今日は、同じ場所を少し注意して走ってみた。

例えば、こんなふうに鎖が張ってあれば、それ以上は車では進めないので、地図に載せない判断を下すのはわかる。

さすがに、私もこの先にバイクで入る度胸はなかったので、ここに停めて歩いたのだが、舗装路はまだ続いている。
鎖のところからさらに百メートルほど進むと、今度は明らかに人の手で作られた障害物が出てくる。
そんなに入ってほしくないのか。
ますます気になる。

さらに進むと、作業服っぽいものと、片方だけの長靴が落ちている。
なんだろう?

ここで、だれかがクマに襲われたとか?
もしくは、死体遺棄現場とか?

高まる鼓動。
ホラー映画なら「行かなきゃいいのに、なぜ行く?」とみんなが思うところだ。
でも、見に行かずにいられない、下世話な人間だから。

答えは、ここから、すぐのところにあった。
とんでもない量の粗大ごみが、山奥にひっそりと捨てられていたのだ。

軽自動車も見える。
冷蔵庫、洗濯機もあった。

トラックまでひっくり返っている。

これは、昔使われていた、底引き漁かなにかの網かな?

車があるなら当然タイヤも、捨てられている。
一番手前のタイヤなんて、まだ、溝が深いし使えそうなのに。

これらのゴミの山を見て、なんとなく、GoogleMapにここにつながる道を載せていない理由が分かった気がした。
不法投棄に悩まされている地元の人たちが、載せないでくれと訴えたのではないだろうか。

おそらく、ストーリーとしてはこんな感じなのだと思う。

―――(ここから妄想)―――

日本が朝鮮戦争特需に沸き、第二次大戦の痛手から立ち直りつつあったころ、敦賀半島に原発を作る話が持ち上がった。

わずかな山あいの田んぼと海の恵みに頼り、半農半漁の暮らしを営んでいた人たちは、「俺らの海を守れ」と、当然反対する。
ところが、ここにどうしても原発を作りたい人たちは、半島にどんどんお金を落とす。
海沿いにろくな平地もなく、山奥まで田んぼを開拓してきた村の人たちのために、と、山の最深部まで舗装路を作り、各家庭に軽トラやら農機具やらが余裕で買えるだけの保証金を積んだのだ。

誰も住んでいない山奥まで、立派な舗装路がついている理由はこれだろう。
そして、その後どうなったか。
都市への人口集中と少子化で、離農が進み、山奥の田んぼから順々に、耕す人がいなくなった。
つまり耕作放棄地となったのであろう。

上の写真のように「山奥に急に平たい土地が現れて、そこに同じ種類の木ばかりが生えている」となったら、それは、田んぼだったと考えてよいだろう。
実際、国土地理院の地図を確認したら、田んぼを表す「II」が3つ山型に並ぶマークがついていた。
登記上は今も田んぼなのだろうか。
下の写真のように、山の湧水が入り込んできやすいところに作られているため、きっとおいしいお米がとれたのだろう。

元田んぼの近くに、必ず立っている小さな小屋は、農作業用の小屋だったのだろうと思われる。

比較的、最近まで稲作に使われていたようなところには、電気柵や動物を取るための罠なども残っている。
最後まで、頑張ってイノシシやシカから稲を守り、お米を作っていらっしゃったのだろう。

けれど、農家の高齢化と、後継ぎの不在で、山奥の田んぼはどんどん耕作放棄地となった。
先祖伝来の大事な田んぼには、違法なごみ処理業者が押しかけ、最奥地に粗大ごみを捨てに来るようになった。
自衛しようにも人手が足りない集落の人たちは、せめてもの抵抗で道をふさぎ、舗装路を地図に載せないようにしているのではないか。

――――――

これらはすべて私の妄想だ。
けれど、山奥にゴミの山があるのは厳然たる事実で、田んぼが朽ちて山に還りつつあるのも、また事実だ。
本当はどんな物語があって、こうなっているのか。
それを知ってる人に、話を聞いてみたい。

**連続投稿422日目***


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