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ゆきはふる あなたはこない

日本海から湿った冷たい空気が集団でやってきた。

敦賀は昨夜から雪である。
雪がやってくると世界が静かになる。積もった雪に音が吸収されるからだと読んだことがあるが、そんな音響学的な話ではなく、単に外に出る人が減るからだ。視界の中で動くものが無くなると、見た目にも静かになる。
もともと車がないと生きていけない地方都市では、歩いている人を見かけることが少ないのだが、それがほぼゼロになるのが雪の日だ。

しかし、そんな中でも動いている人はいるわけで、この方々が働いてくださるから、今日も無事に生活できている。その代表格が運送業の人だと思っている。冬の敦賀では、日本海が荒れて漁ができない日もあり、港町だからと言って魚介類が必ずあるわけではない。曇天続きで野菜だってそんなには育たない。養豚、養鶏は、近くでやってるところを見たことがない。つまり、食糧自給は圧倒的に間に合ってないのである。だから、運送業が止まってしまうと、途端に食べ物が無くなるのである。

引っ越してきたばかりの一昨年の年末、大雪の日にスーパーに行くと、パンの棚が空っぽだった。ヤマ〇キからの配送が、雪で届かなかったものらしい。とはいえ、近所の自家製酵母パンを販売するパン屋さんは営業していたので、特に困ることはなかった。「そうか、ここでは雪が降るとパンが届かなくなるのだな」と思っただけだった。

昨年のクリスマスの大雪の時には、肉の棚が空っぽだった。いや、正確には、ずっと売れずに残っていた高い牛肉だけ残っていたが、それ以外すっからかんだった。これは案外こまった問題だった。私は、魚釣りは好きだけど、毎日魚を食べたいと思うほど魚が好きではない。何とか肉っぽく加工できないかと魚肉をミンチにしてハンバーグに挑戦してみたが、単なるはんぺんができただけだった。

そして今回の大雪である。さすがに三度目なので学習した私は、昨日のうちに肉を四日分ほど買いこんで冷凍しておいた。だが、見通しが甘かったと言わざるを得ない。野菜が無いのだ。ニンジン、ジャガイモ、玉ねぎなど、保存のきくものはある。葉物野菜が見当たらないのである。仕方ない。ここから数日は、肉じゃが、カレー、シチューで回すしかない。

上の図の中央の赤丸は「敦賀」である。周り中、山に囲まれた海沿いの小さな平野に敦賀はある。ここに入るルートは三つ。北の福井金沢方面からやってくるか、南の京都大阪方面からやってくるか、西の舞鶴方面からやってくるか。雪によって運送業に支障が出ると、どのルートが止まっているかで、敦賀のスーパーから消えるものが変わる。おそらく、一回目に大雪に遭遇した時には、北陸道が止まり北からのパンが来なかった。二回目は京都大阪方面からの荷物が止まって肉が来なかった。そして今回は、よくわからないが、たぶん、西のJAからの配送が来なかったのではないかと思われる。

雪は降る。あなたは来ない。そしてスーパーから食料が消えるのだ。
数日で回復するとわかっているのでまだ落ち着いていられるが、なかなか怖いぞ、この状況。

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