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被害者の中から最強の加害者は生まれる

「自転しながら公転する」「恋愛中毒」「プラナリア」に続く、私にとっての4作目の山本文緒作品は「群青の夜の羽毛布」だ。

とても面白かったし、怖かった。
「恋愛中毒」でもそうだったが、薄幸そうで被害者風の主人公が、纏っているものを徐々に剥がされて、風向きが怪しくなってくるあたりの描写がたまらない。
やっぱり上手な作家さんだなあと思う。

しかしこの面白さは、ネタバレとともに語ってしまうと、台無しになりそうだ。
何度か感想文を書こうと挑戦してみたが、諦めた。

例えば「コンビニ人間」や「おいしいごはんが食べられますように」のような、主人公の精神構造の不可解さに面白さがある作品なら、解説を読んだ後で本編を読んでもきっと面白いだろう。
むしろ、引っかかりがなくなり、理解が深まるのではないかと思う。

けれど山本作品の真骨頂は、「どこにでもいそうな人たちの、ありそうな話の積み重ねで遠くに連れて行かれるところ」にある。
嫌な人は出てきても、理解できない人は出てこない。
どこにも引っかかる事なく、するする読んでいるうちに、世界がぐにゃりとひん曲がる。
そこが怖い。

ああ、ダメだ。
これ以上書いたら、ネタばらししてしまいそうになる。

ひとつだけ、作中の印象的なセリフを挙げて、このnoteを終わりにしようと思う。

「心理学が何よ。そうしたら、私がこうなったのは私の母親のせいじゃない。その母親を育てたのは祖母よ。どうして育てた人間のせいにするのよ」

私はいつも、ここで葛藤する。
これくらい思い切りよく、自分のせいではないと言い切ってみたい。

最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。 サポートは、お年玉みたいなものだと思ってますので、甘やかさず、年一くらいにしておいてください。精進します。