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西洋油煮

休みの日は夫が夕飯を作る。

自分の好きなものを好きな味付けで食べたいとのことで、私としては、もちろん両手をあげて賛成、どうぞ食べたいものを好きなだけ食べてくださいと思っている。

しかし、夫は買い物に行く前に

「夕飯、何が食べたい?」

と毎回聞く。

自分が食べたいものを作って食べればいいのに。
そして、聞かれるからとりあえず私が食べたいものを言ってみるのだが、リクエストしたものが出てきたことは一回もない。
ことごとく味覚が不一致なのである。

「オムライス」
「子どもかっ!」
「ピザ」
「太るよ」
「ドライカレー」
「カレーなんて料理したうちに入らない」

毎回却下するのになぜ聞くんだろうかと思う。

先日は、聞かれたらおでんと答えるつもりでいたら

「今日はアヒージョを作るぞ」

と張り切って出て行った。
そして夕飯は、たしかにアヒージョっぽいものだった。

タコの足が油地獄から飛び出し助けを求めて虚空を掴もうとしている。
取ったはずのエビの背腸が、何故か全てのエビの背中についたまま紐のように固まって「エビストラップ」になっている。
肉厚の椎茸がドカンドカンと放り込まれて「男の料理」感がすごい。

見た目はイタリアーンなオサレから遠かったけれど、味はちゃんとアヒージョだった。

思ったことがそのまま口に出てしまう私は

「なんか煮物みたいだねー」

と言ってしまい、夫の不興をかった。

「味は美味しいよ」
「ちょうどおでんが食べたかったので、見た目だけでもおでんぽいものが食べられてよかった」

などなどフォローすればするほどドツボにハマり、夫は拗ねていく。

「これ、レシピはどこから?」

と聞くと夫の定番の「クッキングパパ」だと言う。

「だからだよ! だから、なんかこう『西洋油煮』って感じでアヒージョのオシャレっぽさが消えてるんだよ」

と言ったら、西洋油煮というワードがうけたようで

「これからこの西洋油煮を冬の定番料理にしよう」

とご機嫌でごちそうさまをしたのであった。

#社宅妻
#別にオサレでなくても美味ければそれでよし

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