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繁殖交配するということ

この画像は、今はうちの子になったボルゾイのローちゃんが大阪で迷子になる前。繁殖犬を6歳で引退し、ステキな里親さん宅に行く予定の頃のワタシとローちゃん。

台メスだったローちゃんの画像が出てきて、ブリーダーだった時のワタシの事を書いてみようと思った。※台メスとはお母さん犬のこと。

スゴイ長文です。

ワタシはね、ほんとは犬よりも超猫好きなんです。
20年前、ワタシは画廊で働いていた頃子供ができない体だから、自分の生きた証が欲しくて、ある猫種の黒猫だけにはまって、ワタシの代わりに子供を産んで欲しいと思ったんです。

ワタシには兄弟姉妹がいません。
だから、ワタシの家系はワタシで終わります。
だから、血統書にワタシのキャッテリー(猫舎)の名前が残る事で、生きた証にしようとしたわけです。

自分の大事な犬猫の子供がほしい。皆一度は思った事があると思います。

純血種とは、作られたものです。スタンダードと言うものがあります。その種の理想形であり、あるべき姿です。健全健康で性格が良く、かつ美しい事。コレを目指して先人が心血を注ぎ、夢や努力や情熱をかけて、血を守って来た事を忘れてはいけません。すごく大切な事です。
ただ単にオスメスいたからではありません。禁忌を避け、健康を第一に、欠点を補い、質を上げる繁殖でなければなりません。
単に自分の家の子の血を継ぐ存在を作るとは、プロのブリーダーにとって失礼な事とワタシは思っています。

たとえ素人だからとか、一回だけだからとて、繁殖をすると言う事=命を作るとは全ての命の幸せを担保する事が義務と考えます。
たとえ、不具であろうと、飼主が見つからなくても。

ワタシはその日から、プロに恥じない様に、超勉強してマイナーな猫種だから海外から本とか取り寄せて、できない英語に悪戦苦闘したり、ブリーダーのところへほぼ毎日通ったり、電話してできる限りの話を聞かせてもらい続けた。ショーにも通った。

歴史やスタンダード、ショーの事、ごはんの事、シャンプーやグルーミング、禁止されている組み合わせ、遺伝子の因子の事や法則とか、かかりやすい病気や獣医の選定、およそ全ての対処の仕方だと思う。経験が無いのだから、知識で追いつこうと思った。

実際に買うと決めた子猫には、勉強しながら、毎日会いに行った。
彼女は、ワタシの台メスと言う立場の猫であるけど、ワタシの子供だった。
ローちゃんと同じ立場だったと言う事です。

皆、仔犬子猫は生後2ヶ月くらいでお迎えすると思うけど、ワタシは4ヶ月になるまで、ブリーダーのところに子猫を置かせてもらった。
なんでかって言うと、親兄弟姉妹といさせる事で社会化をしてもらうためだから。

そうこうしてるうちに、仕事女だったワタシは完全に猫にはまって、残業を一切辞めたら、猫連れ出勤すら可能になってた。

朝は、毎日4:30に起きた。
お裁縫をする為だ。
何の為かと言えば、ショーに出す時に控えのケージに掛けるカバーやカーテンとか敷物を用意する為だ。買えば当時、6万くらいしたかもしれない。お金が惜しかったんじゃない。自分でしてあげたかった。
刺繍もビーズもやった。オーガンジーは海外から取り寄せたりした。
結果1回しか使ってくれなかった、当時7万もした全自動猫トイレすら輸入した。
完全な親バカです。お金に糸目はつけなかった。それはワタシの子供だったから。

そんな全精神力と体力と出来る限りのお金と時間を全て注ぎ込んでたら、ビギナーズラッキーがあって、ワタシの猫は、ショーでチャンピオンクラスに初めてノンタイトルで出た日に、沢山のチャンピオンを負かしてベストインショーを取ったりした。10年に一度あるか無いかの事だと後から聞いた。

犬で言うJKCみたいな団体の2種あるショーにそれぞれ出してたから、その子のおかげでアワードパーティーにも両方出たし、黒猫だったからブラックコーニッシュレックスオブザイヤーも受賞して、世界一になったりもした。嬉しかった。

調子こいたワタシはお婿さんを探した。生意気にいろんなオファーを断り、日本にいないと判断した。で、外産を入れた。 
ワタシの2頭めの猫はワシントンから来た。
ワタシの周りの人達は優しく、ワタシにいろんな知識を授けてくれた。海外のブリーダーを紹介してくれたり、当時あった検疫の対処、通関の方法、感謝しても感謝しきれない。

英語でブリーダーに手紙も書いた。ベルギーに行かせるつもりだったナショナルウィナーの子を日本人のHitomi に譲ると言ってくれた時、死ぬほど嬉しかった。 
当時は日本に犬猫を譲る事に関して海外のブリーダーは嫌がったからだ。今の中国を思ってください。

ショーに行き続け、そうこうしてるうちに子猫を産ませてた。いわゆる繁殖をしてワタシはブリーダーになった。
多分猫関係で年間300万くらいは使っていたはずだ。でも、お金じゃないんだ。

ショーは3年やった。 
石の上にも3年だから。
文字でしか書いていないスタンダードを自分なりに理解して、ワタシの理想像も定まっていた。
その頃、我が子の学芸会のつもりで楽しかったショーが嫌いになっていた。研鑽の場であり勝負の世界だったからだ。競ってこそ華、負けて落ちれば泥だと思った。そして、スタンダードは当たり前、かつ華が無ければいけないと思う様になっていた。

産まれた猫は可愛いくて可愛くて、売る事も考えられず、実際できなかった。
が、しかし、ワタシが作り出した猫はワタシの思うスタンダードでは無かった。
可愛くて愛しくても、ここだけは譲れなかった。ちょっとプロっぽいでしょ。笑
そして葛藤したけど、理想を追求しすぎたらワタシの家は、猫屋敷になると踏んだ。結果、半分素人で半分しかプロになれなかった。と言う事かもしれない。

で、自分の中途半端さに気がついたから、全てを避妊去勢してショーもブリードも辞めたんだ。
どちらか避妊去勢は、片方すれば済む事だけど、平等にした。
ストレスと疾患のリスクを回避し、少しでも長く一緒に居たいから。皆ワタシより先に逝ってしまうワタシの子供だから。

それでも、理想は捨てきれず待った。ワタシが作らなくても、他の人に任せれば良い。
それを待てば良いと思った。
結果、14年待った。ワタシはバカなんだと思う。

自分の名前が血統書に残る事など、最早どうでも良くなっていた。猫という種類の理想の子供との暮らしがワタシの全てだったからだ。

そして、20年が経ち、こんなメールを書く日が来た。

『ワタシは12年保護活動をする者です。しかも、元ある猫種のブリーダーです。ショーに出陳し、その猫種の黒だけにこだわりブリーディングして、その種では世界一にした事もあります。猫を売った事は一度もありません。全てショーを辞めた時に避妊去勢して一緒に暮らしています。

繁殖すると言う事を皆様実に簡単におっしゃいます。
〇〇ちゃんの子供が見たいと♀の飼主どころか、♂の飼主までおっしゃいます。

素人繁殖の危険性を全く理解されないまま、犬は安産だからとか、子供がいないから代わりにとか、〇〇の子だから…と理由は様々です。

ボルゾイに関しては、一回のお産で10頭程出産します。離乳するまで、2時間おきの人工哺乳も必要である事をご存知でしょうか?
人間の手で作られた種とは、たいがい母親のお乳だけでは足りません。

母犬は命をかけて仔犬を産みます。仔犬は無事に生まれない事もままあります。だから多産なのです。五体満足で生まれない場合もあります。

あまり知られていませんが、ボルゾイは原種に近く遺伝性疾患は少ないと言われていますが、現状、変性性脊髄症、股関節形成不全、骨折の多発、バイアイ、心疾患、甲状腺機能低下症等を私は実際に確認しています。データ化されていない遺伝疾患は想像を超えて存在すると認識しています。
ワタシは、プロではない繁殖屋を潰す目的の為、疾患に悩むオーナーさん宅の子たちの血統書を毎日読んでいます。

大概の疾患は、高齢出産を避け、事前の遺伝子検査にて防ぐ事ができます。遺伝子検査は現在の日本の会社では信頼性に乏しく、多くのブリーダーは海外に依頼しています。クリア同士の交配、片親がキャリアの場合には必ずクリアを交配せねばなりません。生まれた子供はクリアとそうでない子が必ず生まれます。
クリアでない子を知識の無い方に譲る場合、繁殖制限をかけなければならないと考えます。未来の遺伝性疾患を防ぐ為です。

プロのブリーダーでも、ここまでやる方は稀です。しかし、ブリーディングとはこうあるべきと考えます。遺伝子とは遺伝情報の組み合わせです。性格も病も受け継ぐのです。必要最低条件として、ブリーダーは、健康な個体を作出せねばならないのです。

また、スタンダードも念頭に置かなくてはなりません。スタンダードとは犬種のあるべき姿形や健全性の基本や理想です。コレを理解できない方がするべきではありません。先人が築き上げてきた物を壊してはならないのです。その成果をショーで確認せねばなりません、精査精進して、よい性格で美しい個体を作出してゆき、血を守り、次の世代へ引き継ぐ事がブリーダーの務めです。自分は素人だから…これは違います。
ブリーディングすれば繁殖者です。繁殖者には責任があるのです。

メンデルの法則の理解は当たり前です。してはならない組み合わせをしてはいけません。ボルゾイの禁忌をご存知でしょうか?ミスカラーがわかりますか?ラインブリードの意味がわかりますか?アウトクロスが何故必要かわかりますか?人間の手で作り上げた命である以上、全生命の幸せを生涯に渡り担保する責任も生じます。

実際に非常に短絡的な理由で交配をされ、♂がいつも乗るようになったとか、気性が荒くなったとか(人工交配がわりとデフォルトです。♂を守るためです)上手に大きく育たない。お腹が緩い。こんなはずではなかったなど、行き先に困り多頭飼育による崩壊すらあります。

ワタシが繁殖屋とカテゴライズする人々は、上記を行なっていません。それどころか欠陥がわかっていても平気で繁殖に使います。下半身付随の台メスを私は知っています。涙がでます。それでも、簡単すぎる動物取扱業を持ち、単に♂と♀でヒート毎に交配をし続け、25%での近親交配はJKCでも認める有様です。♀は死ぬまで産ませ続けます。犬は一生ヒートがあるからです。常識的なブリーダーは初ヒートは飛ばし、出産は生涯2回。間隔を開け6歳までには引退です。 
生まれた仔犬は社会化が済む4ヵ月から5ヵ月で兄弟同士を親から離すのが理想とワタシは考えますが、日本人は幼ければ幼い程良いという誤った考えの元、生後49日で生体市場に並ばせます。血統書の偽造をしてもっと幼い状態で出荷したりします。哺乳の不足による飢餓状態を維持し、販売期間を伸ばす為にフードを少なくします。結果、小さく身体が弱く、疾患を抱え、社会化できにくく、問題が生じても相談する相手が獣医しかいない。これがペットショップに並ぶ子たちです。
獣医はブリーダーではありません。その種に精通し、的確なアドバイスをできる知識はありません。

以上をご理解頂けた上での繁殖をご希望であるならば、ワタシに止める権利はありません。動物取扱業が無くても、犬の飼主は一回の交配、必要経費での譲渡は認められているからです。

種は違えど、多分プロのブリーダーであったワタシが保護活動をする意味を解っていただけましたでしょうか?

もしご理解いただけましたら、安易な繁殖をしようとしている方を止めてはいただけませんでしょうか🙏。

ご不快な内容等ございましたら、平にご容赦くださいませ。
保護ボルゾイを無くしたいが為の事でございます。』

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