見出し画像

ゲートルーラー炎上に学ぶ現代カードゲームのプロモーション

「タイトルで惹きつけようとするな!」
はい、申し訳ないです。しかし、今回のことには口を出さずにはいられなかった。2020.12.26、一つの新作カードゲームが発売されました。それが「ゲートルーラー」。池っち店長の愛称で知られる池田芳正氏が考案した新作であり、カードショップ「カードキングダム」のフランチャイジー及びカードゲーム「バディファイト」の考案は、真っ当に功績されることだと思います。
そんな池田氏の新作なのですが、この年の瀬に……炎上をしてしまっています…。正直、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」と感じている人が多くいるなと外野から見ていることは私自身あります。しかしそれでも、プロモーションの仕方が「やっちゃったな〜」と感じて眺めてしまうところがあります。

「10年代」と「20年代」の広報正答の変化

率直にいえば、池田氏が「正解」を履き違えてるのではないかと感じている次第です。
2010年代、かつて池田氏が今以上にディメンションゼロやバディファイトなどバリバリ監修していた時期(以下、「10年代」と言います)から、満を辞してのゲートルーラー発売の2020年(以下、「20年代」と言います)。明らかに業界の潮流は変わったなと一ゲーマーからは見て取れています。
例えば遊戯王。かつて私は遊戯王の公式ツイッターアカウントに対してこのような感想を抱いていました。

「【公式】遊戯王OCG@YuGiOh_OCG_INFO」をフォローしてから、どうにも拭えない違和感がありました。
違和感が確信に変わったのが、マジック・ザ・ギャザリングとの比較を考えだしたときです。「マジック:ザ・ギャザリング@mtgjp」をフォローし、これまたうなっていたのですが、ようやく理解ができました。
2つのタイムラインを見て、明確に違いを感じるのは、「人間味」と思います。
遊戯王担当も広報として十二分の攻めをしているのですが、「企画!大会宣伝!ルールガイド!」とまじめに展開していることが仇となってか、目が滑っていき、頭に残らないんですよね。
一方MTGはどうか。もちろん連載記事の紹介とか大会宣伝があれども、たまに担当がカードの評価を個人的に語っており、中に人間がいることを感じやすいんですよね。口調もかなりフランクです。
あと、プライバシーポリシーの方針の違いかもしれませんが、写真(絵)の使い方。遊戯王担当が一切写真に人物を載せていないのに対し、MTG担当は積極的にプレイ中の写真を載せており、動きがあるんですよね。
やってみてください。さーっと互いのタイムラインを流し、どんなツイートがありましたか?と質問されたとき、ぱっと思い浮かぶのは、動きのある写真があるようなツイートではなかったですか?
個人的に思うには、企業のツイッター担当ってのはこのように客と目線を合わせた語り口でなければ、返信・対話が期待できなくてツイッターの意味がない。それならCMでいいのだから、もうちょっと遊戯王担当には歩み寄ってほしいと思っています。
傷つくかもしれない、けど、そして単語の使い方として間違っているのは承知しているのですが、遊戯王担当には「不気味の谷」を感じています。
あまりにも企画の方向性が全体的に似ていることから(例:私の大好きな○○の遊戯王OCGカード)、熱意が伝わらなく、BOTっぽさを感じてしまうんです。ある意味、自動生成でできてしまうのは、というえもしれぬ不安感が。
「デュエルリツイル」(アニメの放映時間制限内のリツイート数で新カードを公開するハッシュタグ)のような双方向性で面白い試みもあるのですから、もうちょっと担当としての人間味、もっといえば色気を出して欲しいと思いました。
(2015.11.10に他媒体で執筆した「遊戯王のツイッター担当はもうちょっと色気を出してもいいと思う」より引用)

また、マジックザギャザリングの公式ツイッターアカウントについても、以下のような感想を抱いていました。

「カラデシュ領事府」とは、カードゲーム「マジック・ザ・ギャザリング」に登場している架空の施設です。
その施設がリアル世界にてツイッターアカウントを開設して、その中で博物館等の「展示品」をプロモートするという取り組みをしていました。
言い換えれば、発売パック「カラデシュ」の展示品(アーティファクトカード)や人物(クリーチャーカード)の宣伝アカウントですね。
単なる宣伝ではない新しい没入感を見出す取り組み。このツイッターアカウントを見た瞬間、唸りました。
ファンタジー世界として圧倒的な深度を誇るマジック・ザ・ギャザリングであるからこそできた取り組みだ!と。
もちろんプロモーションのみならず、丁寧な「それっぽい」普通のツイートもしており、その完成度に深みを出しています。
このやり方は、これから先もいろんな世界に広がってほしい。
これまでも色々なゲームで、いわゆる公式アカウントというものはあったものの、フォロワーとの対話を中心にしており世界観の構築にまでには迫っていない印象でした。
こういう「割り切り」で、一つ線を引いたやり方、アリなのではないでしょうか。
(2016.9.20に他媒体で執筆した「カラデシュ領事府のツイッターアカウントに唸った話」より引用)

端的にまとめれば、10年代について私は、カードゲームに対して「MTGをベースにもうちょっと世界観の深みを教えて欲しい」というスタンスでした。
そして時は流れて20年代。これらツイッター(広報)の方向性がどうなっているか。特に遊戯王の広報が飛び抜けて洗練された印象があります。

こういった世界観を交えたラフイラストを紹介してみたり、

こういったお馬鹿とユーモアの境目を走り回るyoutube動画をアップしたりする(私は大好きです)。
明らかにコナミの方針に余裕が出てきたんだなと外野から見てそう思います。

一方、マジックザギャザリングも手をこまねいているわけではなく、

ハイファンタジーな世界観を強みとしていたゲームでありつつも、ツイッター上では頭身を崩してみたり、4コマを展開してみたり、MTGを組み込んだラブコメ漫画「すべての人類を破壊する。それらは再生できない」が連載されていたりと、おおよそ黎明期には考えられなかったプロモーションが展開されています。語弊を恐れずに言うなら「遊戯王型」。柔軟性の変換には驚きを隠せません。
その考え方で言うと、遊戯王が「MTG型」に進化を遂げていった。世界観の深みをうまくアピールするようになりつつもサテライトショップとの連携で気持ちよく土壌を広げていったわけです。

(※記事制作の伏線)

先駆者は、ここ数年の変遷に驕ることなく路線を乗り換えた。
遊戯王はMTGの、MTGは遊戯王のいいところを学び合って共存共栄を遂げ、新時代のプロモーションを行なっています。

ゲートルーラー広報方法の「誤解」

さて、前置きは長かったですが、ここからが本題。
一方、ゲートルーラーのプロモーションは多くが池っち店長個人アカウント内でやっているのですが、多かれ少なかれその個人アカウントが炎上癖がついてしまっていることから、カードゲームそのものの世界観は面白そうなのに十全に魅力が伝わらない環境にある印象です。
私自身が思うのは、こう言った「カリスマ型プロデューサーが世界観を説明する」やり方がウケたのは90年代・00年代のやり方だったと思うんですよ。それこそ『ミニ四ファイター』とか『高橋名人』の時代の。私も子供時代のホビーのプロモーションを見ていたからよくわかる。そして池田氏の子供時代にそういったプロモーションでワクワクしていただろうから、なおさらその幻想が「自分のようなカリスマが説明する世界観で、みんながワクワクしないはずがない!」と脳内を支配しているんですよね。わかります、わかるんですよ。
ただ、本人がカリスマだろうがカリスマじゃなかろうが(ここではそのことについては言及しません)、もうこのやり方には訴求力はないんですよね!
ユーザー側から見て、いろんな暇つぶしが溢れる昨今、世界観に浸かるのに障害があるコンテンツってのは「疲れる」んですよ。カードゲーム的に言えば「1ターンで没入したい」。
だから気持ちよく世界観に辿り着ける・楽しめる、遊戯王・MTG型プロモーションがこのご時世には適切であった。池田氏の個人アカウントで行われるゲートルーラーのプロモーションは「この人が作ったゲームである」とか「個人アカウント特有の統一されない世界観説明表現」とか「そもそも個人アカウントだからゲートルーラー以外の話題もタイムラインに流れる」とかノイズが多すぎるんです。これは『生まれてまもないゲームだから』みたいな言い訳は絶対通じず、そこのプロモーションは絶対逆算して準備するためのマイルストーンを構築しなければいけなかった。そこを先走って展開されてしまうと、ここはもう取り返しがつかないんです(導線上、「池田氏アカウントと公式アカウント、どちらを見ればいいの?」がその後に絶対に付き纏うため)。
ゲートルーラーにも公式アカウントはあるのですが、世界観説明という一番デリシャスなところを持っていかれたため、悲しいかな、動画説明botになってしまっているのが現状……(かつての遊戯王公式ツイッターアカウントのような)。ここは公式アカウント側は苦虫を噛んでいるのではないかなと思います。

私はとても「カードゲーマーの総意」になれるほどのメンタルではないですが、この意見、「かつてのカードゲーマー」であり「今はデジタルカードゲームに慣れてしまったカードゲーム理解マン」であり、「ある程度大人になってしまった」人間のマジョリティなんじゃないかなと思います。
いかがでしょうか。記事返信とかツイッターとかで、それこそ世界の「総意」を眺めてみたいなと思い、記事をしたためた次第です。

対戦、よろしくお願いします。

(アイキャッチイラストのバナー及び「ゲートルーラー」の著作権は株式会社大遊に帰属します)

いずれいっぱい記事を書いた暁にでも、コーヒーでもおごってやってください……!