解放

長針と短針、12で合わさり、音が鳴る。

瞬間、寝息を立てていたはずの男、その目を見開き、ベッドで跳躍。
勢いそのままに部屋のドア蹴破り、ラウンジに出て激しく筋トレ。筋トレ。筋トレ。
身体が痛みと熱を持ち、意識が朦朧オールアウト。

息つく間もまなく、酸欠に喘ぎながら震える手で掴むプロテインシェイカー。
蓋を弾き飛ばすと同時に、容器を反転。
重量に従って落ちるプロテインを浴びる。流し込む。五臓六腑に染み渡る。

パンパンに膨れ上がり張り裂けそうな筋肉に、汗とプロテインに塗れた服が絡みつく。邪魔だ。
全て破り捨て、私は生まれたままの姿になる。
つい先程まで衣服だった布切れを洗濯機に叩き込み、殴るようにスイッチオン。

それを合図に再び駆け出す。
階段転げ落ち、自動ドアに激しく激突。
割れるガラスに、吹き出す血。

しかし、意に介さず。一心不乱に向かうは風呂場。
戦いの跡を全て水に流し、男は力尽き息絶えるのであった。