見出し画像

諸星大二郎作品に登場する母親たち

本日は母の日。理想の母親像を追求するのにいい日だということにして、諸星大二郎作品に登場するお母さんから一部をピックアップ。魅惑の母あり、ちょっとアレな母あり、異類お母さんあり。
※ ネタバレを含みます。

1.  『死人帰り(妖怪ハンター)』ひろしのママ

黒いワンピースが印象的なひろしママ。小学生の息子がいるようには見えない。もはや美少女寄り。1974年。

巫女装束もかわいい、もはやヒロイン。夫想いのいい奥さんだけど、死人を蘇らせて町を瘴気に呑ませちゃうのはやりすぎである。子供を利用こそしないものの迷惑を考えもしない感じが、ちょっとちょっとお母さん……って感じ。でも美人だからいいか! 1974年。

2. 『袋の中』「おれ」の母

明確に「上品できれいなお母さん」として造形・描写されている。まあ美人じゃないと成立しない展開だし……。たぶんいいお母さんだろうけど息子が道を踏み外すあたり厳しい母親だったりしたのかもしれない。1978年。

3. 『夢みる機械』健二の母さん

ベルメールの球体関節人形を思わせるエロスのある母さん(の身代わりロボット)。母さん(本体)は夢みる機械の中で「だれの母親でも妻でも国民でもなく なんの義務も責任もおわない」夢をみている。1974年。

4. 『暗黒神話』山門武の母

武の父親は早くに死んでしまい、女手一つで……的な湿っぽさはなく、主人公覚醒のために死ぬ舞台装置みたいな扱い。もはや死ぬために登場したレベル。とはいえ子供のために自分が犠牲になることを選んだ、諸星作品では数少ないタイプの母親キャラクター。1976年。

5. 『海神記』オオタラシ

ようやく「××の母」ではなくネームドキャラが登場。海童(わだつみ)の母の役割を引き受け、海人(あま)を率いて諸地域の神々を統合していく女性。今まで挙げたキャラと違い主体性がある! 血のつながった親子でなくとも見事なお母さんである。1981年~。

6. 『うつぼ舟の女(妖怪ハンター)』みどりの母

常世から来たタイプの母さん。見た目干からびてるっぽいけど常世に帰ったら美人に戻ったりするんだろうか。人間じゃないけど子供を思う気持ちがすてきなお母さん。一番怖いのは人間だよねっていうよくある一言を添えておこう。1992年。

7. 『西遊妖猿伝 大唐篇 玄武門の章』地湧夫人

唐皇帝・李淵の後宮の女であり哪吒太子の母……だけど母である前に一人の女! っていうある意味では気持ちのいいキャラクター。人生楽しそう。でもこの人を母に持ちたいとはあまり思わないなあ……。

アンラッキースケベからの地獄のような展開。悟空が実に気の毒である。1985年。

8. 『BOX ~箱の中に何かいる~』角多光二の母

ここにきて主体性を持たない母親に戻る。ただ、『BOX』は父親が割と重要なポジションだし、母親のキャラが立ってたら逆に主人公の苦悩が引き立たなくなるし、あえての薄味キャラクター造形なのだろう。2015~17年。

9. 『栞と紙魚子シリーズ』クトルーちゃんのママ

栞と紙魚子シリーズのメインヒロインの一人といっても過言ではない。外国?の人だから顔が大きいけどとってもキュートである。かわいい。天然ドジっ子的オーラを持ちつつ、良き妻であり良き母であり、更にいざというときには異界の力を発動させちゃう素敵なママである。第2形態もかっこいい。……1.~8.で挙げてきた母たちと方向性が違いすぎる! 何があった諸星大二郎! 1995年~。

まとめ

初期(70年代)の作品で出てくる母親像は、まつげ多くてワンピース着てる線の細いお母さんが多めで、あくまで記号としての母親として登場している。前髪上げてワンピース着てて、っていう見た目は何に由来するのか、ご存じの方いたら教えてください。

80年代以降は舞台装置にとどまらず自らの意思で動くキャラクターが増える。さらに近年ではかわいいママまで現れ、幅の広がりを見せている。今後さらなる発展を遂げるのか注目していきたい。

言い訳:母親をテーマにまとめる以上『現代間引考』は必須だと思うんですが持ってないので……。

補記

この人もママに入れるべきかけっこう迷った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?