今は昔、クーピー救急隊といふものありけり
クーピーという文房具をご存知でしょうか?
色鉛筆のような見た目をしながら、クレヨンのように芯しかない文房具です。
色鉛筆のようにこまめに削る必要がない優れモノな反面、こやつ、油断をするとポキッと折れてしまう繊細な代物。
そんなか弱いクーピーを、直すために結成されたのが『クーピー救急隊』でした。
今からおよそ20年前。
とある公立小学校の3年1組で創業したのがクーピー救急隊。
結成のきっかけは、席替えで近くに座った創業者1(私)と創業者2(クラスメイトの女子)が、一緒に落書きをしていた時、折れたクーピーを修復することができないかと考えたところから始まりました。
救急隊…なんて言うとかっこいいけど、まあただポキポキと折れたクーピーを、セロハンテープや液体のりを使って直すだけの部隊です。
しかも部隊とか言いながら、結成当初は2人構成。
えっ?セロハンテープやのりでくっつけたところでまた折れるよね?とお思いですか?
ええ、折れますとも。所詮は子どもの手直しですから。
でも、そんな陳腐な直し方を見て、他のクラスメイトが自分のクーピーも直してほしいと持ってきました。
そして、下手くそなりに修復したクーピーを渡すと、ありがとうと笑顔で伝えてくれます。
ああ私たち、もっと誰かのためにクーピーを直したい!
こうして浮かれた創業者2人は、みんなのクーピーと笑顔を守るため、クーピー救急隊を結成することにしました。
調子に乗って看板なんか描いちゃったり。看板描いてる途中で、力が入りすぎてクーピーが折れちゃったけど。
…本末転倒か。
創業者2人でクーピー救急隊として活動をしていると、どこからともなく仲間が集まってくるようになりました。
誰かのために自分の力を役立てたい!と、それぞれができることを考え、行動に移してくれるのです。
クーピー救急隊の存在をまわりに知らせる広報係。折れたクーピーを探しに出して営業をかける営業係。どう直せばクーピーが長持ちするか考える企画係。
さながら会社の部署のように。
折れて、直して、また折れて。クーピーを直すたび、嬉しそうにしてくれる持ち主と、そんな持ち主を見て嬉しくなるクーピー救急隊員たち。
『誰かのために』という大きな原動力が、私たちを突き動かしていたのです。
直しても直しても折れてしまうクーピー。
直し続けるクーピー救急隊。
小学3年生のクーピー救急隊員たちには、クーピーを元通りにする力なんてなくて、何度も同じようなことを繰り返すのは滑稽に映るかもしれません。
でも、懸命にクーピーを直そうとしていた子どもたちには、確かな『誰かのために』の優しい熱意がありました。
クーピーは折れても、子どもたちの心は決して折れない。
そこに揺るがない気持ちがあったから。
クーピー救急隊から20年。
今では社会の一員として、それなりにベテランとして働いている私。
精一杯取り組んだ仕事に、誰かから「ありがとう」と言われると、心の奥がほわっと温かくなるような気持ちになります。
次も頑張って誰かの役に立てる仕事をしよう。それでまた喜んでもらいたい。
ああ、昔クーピーを直してた時も、同じような気持ちだったな。
クーピー救急隊員として一緒に活動していたかつてのクラスメイト達も、きっとこの空の下、どこかで誰かのために頑張っているはず。
情けは人のためならず。
誰かのためにが自分のために、自分のためにが誰かのためになる。
案外、世の多くの企業も、根底にはクーピー救急隊と通じる考えがあるのかもしれません。
そんなことを思う今日この頃。
以上、もろこしでした!
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