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外資系企業 VS 日系企業(JTC) 内部監査の観点から

2024年2月に日経平均株価が1989年12月29日の38,915円を更新しそうだと話題になっております。35年ぶりのことですが、欧米と比較すればあまりに長期間にわたって株価が低迷していたことは間違いなく、日系企業が外資系企業に株価や業績面ではこの30年、劣っていたと言われても反論は難しいでしょう。
Xでも、外資万歳、日系ダメというテーマは頻繁に登場します。また、日本に本社のある歴史のある大企業を揶揄を込めてJTC(Japanese Traditional Companyの略、英語ならTraditional Japanese Companyの方が自然なので、和製英語の一種でしょう)と呼ぶことも日経新聞でも見かけるようになりました。
一口に外資系、日系と言ってもその定義は曖昧ですし、主語としてはあまりにも大きすぎますが、全体的な傾向や人々の抱いているイメージはあると思うので、両者の比較を、特に内部監査という機能・部署の状況を中心に、私の外資系及び日系のグローバル企業での勤務経験をベースに比較してみます。なお、金融機関は規制が強く、内部監査の置かれている状況も他業種と異なっているので、基本的に本記事では金融機関以外の企業を対象と考えています。

外資系、日系のこの記事での定義

外資系といっても、米系とヨーロッパ系、アジア系ではそれぞれカルチャーはかなり違いそうですが、ここでは最も有名な企業の多い、米系企業(米国に本社があり、米国で上場しており、日本に子会社を持つ企業)を前提としたいと思います。
日系は、日本に本社があり、日本で上場しており、ある程度の歴史があっていわゆる日本的経営(終身雇用、企業別組合、年功序列)の影響を強く受けている企業を前提とします。日経225に含まれる会社の多くがこのカテゴリーだと思われます。

外資系と日系の内部監査部門のイメージ

外資系と日系の違いとしてイメージされるのは、まさに上記の「日本的経営」の縛りの強弱とそこから派生する働き方の違いでしょう。組合活動は日系企業でも形骸化していますが、終身雇用・年功序列と、それの引き替えとしてのぬるい人事考課、差の小さい給与体系、働かない能力の低い中高年社員が想起される日系企業に対し、シビアな業績評価と弱いジョブセキュリティ、実力主義の報酬体系が外資系企業のイメージでしょう。
この両者の相違がもろに影響しているのが内部監査部門です。日系企業においては内部監査部門はともすれば引退間際だったり、何らかの理由で他部署に活躍の場がない社員の吹き溜まりになっているケースが珍しくないようです。これは、とりもなおさず終身雇用を維持するための雇用調整弁の一つとして内部監査部門が利用されているということです。
一方、外資系企業、特に米系の内部監査のイメージと言えば、将来の幹部候補社員が組織的な監査を行うといったものです。確かに、そもそも他で使い道がない社員の雇用を守ろうなどという感覚は米系には乏しいですから、そんな人たちが集まる部署というのは想像しにくいです。
ただ、エリート部署というイメージは、General Electric社(GE)のCorporate Audit Staff(CAS)から来ているようです。「GE帝国盛衰史 『最強企業』だった組織はどこで間違えたのか」(トーマス・グリタ他著)によれば、

「(CASは)GEの企業文化を守る護衛隊、トップをめざす若手の登竜門であり、エリート養成のためのもう一つのジョブローテーション」「そのルーツは20世紀初頭にさかのぼり」「GEの上層部は、ほとんどがCASの修了者だ」と述べています。GEは他の米国の多くの会社にその出身者がいますので、これが米系外資の内部監査部門のイメージを形作っている可能性は高いでしょう。

米系企業の内部監査部門の実情

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