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祈りについて

僕は窓のない部屋に住んでいる。
だから、壁に穴を開けた。

穴からは新興宗教団体の本部が見える。
顔を金色に塗り「縦横無尽」と書かれた白い十二一重をまとい
阿修羅の様に手が6本ある男が左右2本の両手を合せ唱えている。

「誠とは時空の行為なり、、意を表すこと丑寅の方に
 我を崇めよ 光をもてい 怨 閻魔羅蛇 亜餓者傍珂」

両手2本しか合わせないのは後の4本の腕は、背中にひっ付けてある
作り物だからだ。

そう、単なるニセモノ、、、

やつもニセモノ、やつを慕い群がる信者もニセモノ

この穴から見えるこの世全てがニセモノなんだ。

月夜を睨み、そう思うたびにヘドが出るほどの憤りが身体ぜんぶを包みこむ ー  僕はすべてを壊したくなった。

昨日から用意していた吹き矢を穴に通した。信者が帰り、偽教祖が
一人になる深夜2時、吹き矢の先には毒が塗られてある。
二酸化炭素を胸いっぱい吸い込みこの世に対する憎しみ共々
一気に吹き出した。
矢は空気の隙間をピユ〜ンと音をたて白塗りと地肌の見え隠れする
偽教祖の太った首筋にシュッパッと刺さった。

蠢く教祖の動きが止まったのはそれから2分とたたなかった。

少年は偽教祖と入れ替わってやろう。どうせニセモノ、、、
明日僕が白塗りで十二一重をまとい6本の手で適当な事を
言っても分からない。そこで馬鹿な信者を言葉巧みに操り
爆弾をつくらせて、この世界を・・このちっぽけなニセモノだらけの世界を一瞬でぶち壊してやる、と考えていた。

「1999年ノストラダムスが予言したアンゴルモアの大王に
僕がなってやる。」
小さな声で少年は自らの意思を再確認した。

少年は両親を知らない。学校も行かない。もちろん友人もない。
僕が生まれた事で得した人間もいない。過去の記憶がない、、、
ただ、ノストラダムスは尊敬していた。全てノストラダムス中心に
生きてきた。

「でも、1999年地球は滅びなんかしない、しないんだよノスちゃんよ〜
だから、僕が貴方の名を汚さぬようアンゴルモアの大王になってやるよ〜」

ブツクサ言いながら少年は偽教祖が倒れている本部に忍び込んだ。
小さな穴から見ている教祖は小さく見えたが、目の前にある亡骸は案外でかかった。

「こいつ〜素顔はどんな面してやがるんだ」

持参したアンモニア水でドウランを拭いてやった。
どこかで見た顔、なじみのある顔

アッ   貴方は


「ノ・ノ・ノ・・・ノスちゃん」


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