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#2 小さいブルーカラーを所有せよ

#1はこちら

2020年に会社を退社し淡路島に引っ越した
相変わらずインターネットを活用したビジネスで生計を立てており、周りからは「IT企業の社長さん」と呼ばれている
作業服を着たおっちゃん達がうちの会社もホームページを持った方がいいか、TikTokはどうやって投稿すればいいか、インフルエンサーに紹介してもらうにはどうすればいいか、と聞いてくる
全て必要ない、と答えている

ある日いつものように庭先で地元の大工と煙草を吸っていると昔の話になった
若い頃に一度だけ、神社の建築に携わったことがあるそうだ
神社仏閣を建てる際は、釘や金物は一切使わず木材をミリ単位で加工しパズルのようにはめ込んで建てていく「木組み」という伝統的な工法が用いられる
この工法には一流の技術が必要で、神社仏閣からオファーをもらった大工はこれ以上ない最高の実績を手に入れることができる
そんな神社の屋根の補修を手伝ったことがある、という話だった
めずらしく誇らしげな目をしていたのが印象に残っている
後日、散歩のついでにその神社を見に行った
こじんまりとした神社だが、堂々としていて思わず屋根に向かって拍手をしていた
すごく感動したのを覚えている

大工の世界は、自分の作ったものがしっかりとそこに残る
身体を使い、何かを作る
そうして完成した作品は物理的だけでなく精神的にも残るのだろう
時代が変わっても在り続ける
一方でインターネットの世界は消耗品だ
次々と出てくる新しいサービスやトレンドに取り残されないように必死でしがみつき、それでもほとんどのサービスは淘汰されていく
私が昔書き込んだ無数の告知文は今この世界のどこにも存在していない
白はすぐに塗りつぶされる

残るものを作れる人が羨ましく思う
誰かの心に残るものでもいい
身体を使って汗をかいて何かを作りたい
ホワイトに染まった私を汚してみたい
たぶん世界はもっとカラフルだろう

今年は子供達に2段ベットを作ってみようと思う
最新のインパクトと丸鋸を買いに行こう

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