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軽井沢風越学園(スタッフとしての)卒業

自分の枠をぶっこわしたかった

軽井沢の象徴的な山「浅間山」


12年間、京都府北部エリアの公立小学校でキャリアを積んできました。
その間、月日がたつごとに不自由になっていく自分に気づきました。
「授業ってこういうもの」「子どもってこういうもの」「学校ってこういうもの」
その枠から出ようとしても、抜けきることができず、どこか退屈でした。

学校は落ち着いていて、目の前にいた子どもたちは素朴で素直でしたが、「ほんとうにそうしたいと思っている?」「ほんとうに言いたいことはそれなの?」

大人も子どもも、どこか学校の中で良しとされている価値基準の中で、発言し行動しているような感じがして、それが気持ちわるいと思いつつも、こわしきることができませんでした。

面接で訪れた軽井沢風越学園(以下、風越学園)。

軽井沢風越学園


マイプロ(マイプロジェクト)の時間、校舎内のあちこちで、年齢もさまざまな子どもたちが、思い思いの活動をしていました。

「ここなら、自分の枠をこわせる!」
そう感じて、風越学園にJOINしました。

2022年10月 風越学園内の森で撮影していただいた

ひとりひとりと出会いなおす


2022年度10月から3月末までの期限付きで働く予定でした。
半年契約というのがよかったのかもしれません。
気に入っている、京都・丹後の海でのくらしから軽井沢への完全移住はハードルが高く、半年後には、また戻るという可能性を残していくことが、安心材料でした。

コンフォートゾーンを出てみる


住みなれた丹後をはなれて、ワクワクと寂しさと不安が入りまじった気持ちで、北陸道を走り軽井沢に向かいました。

軽井沢での初日の朝、初霜がおり、朝の気温が0℃。
住んでいた京都との気温差に驚きました。

道中の白馬の山は冠雪していた

2022年度は3・4年生の担当でした。
学級・集団とはまったく違う感覚で場にいる子どもたちと、「先生」とは違う「伴走者」として立つ自分がどう、その場にいればよいのか戸惑いの連続でした。
この年は「自由であることの不自由さ・苦しさ」を味わい切りました。

ひとりひとりとつながる

集団に働きかけようとしても歯が立たない状況で、ひとりひとりとつながり直す。
そこを丁寧にやっていました。
一見、「だりーな」という感じで振る舞っている子にさえ、ひとりひとりには願いがあり、やりたいことがありました。

子どもが開いた美術館の看板

「あなたはどうしたい?」
「ぼくにできることはあるかな?」
そんなやりとりをずっとしてきたように思います。

フックをかける

風越学園で「フックをかける」という言葉に出会いました。
興味・関心が、仲間やコミュニティーへのフックになる。
興味・関心で集まる。
興味・関心からコミュニティーができる。
そんな柔らかなコミュニティー像が生まれました。

この年、テーマ・プロジェクトで行った「演劇プロジェクト」も大きな経験になりました。
1ヵ月間、インプロの活動を通して、心もからだも開放され、お互いの表現を受容し合い、シーンを前に進めていく。
最初は、場に入らず様子を伺っていた子どもたちも、いつの間にかいい感じでまざっていました。

「Yes and…」からコミュニケーションが始まり、新しいものが生み出される。
ダイナミックにインプロの醍醐味を味わいました。

2022年11月 アウトプットデーで子どももスタッフもプロセスを発表をした



ゲストファシリテーターとして関わってくださった、まんぼさん・めぐちゃんの場づくりの呼吸をからだで体感できたことも自分にとっては大きな出来事でした。
テーマ・プロジェクトの期間、最後まで関わってくださったこと、毎回、打ち合わせを綿密に行なって一緒に走れたことに感謝をしています。



「もう1年、一緒にやりましょう」
声をかけられ契約を更新しました。

新たなコミュニティーとの出会い


2023年度、1・2年生の担当になりました。
「くらし」という言葉がまんなかに置かれ、森で1日中、活動をしました。
森では、環境の刺激が多く、教室では出会えない子どもの姿に多く出会えました。
環境に触発されて、興味・関心で集まった子どもたちの活動が始まる。

唐松林につどい、1日がスタートした

「今日はなにする?」

朝、森の中でサークルになって集まり、子どもたちとそこから1日のスタートでした。

子どもに興味・関心をもって「みる」という体力を、この外環境で身につけました。
「みる」には技術が必要で、また目の前の子どもに対して興味・関心があるからこそ、成立する教育の営み。


同じ外環境で活動している森の幼稚園の同僚の姿からも多くのことを学びました。
幼児は、自分の思いを正確に言葉にはしません。
その分、幼稚園スタッフのみなさんは、その場で子どもの発言や行動をメモに残し、見守り続け、放課後に、スタッフ同士でメモしたことをもとに、子どもの中で起こっていることを共有し、深めていました。


子どもの興味・関心をどう探究に繋げるか。
どう仲間と繋げるか。活動を広めたり、深めたりするために、大人はどう刺激を与えていくか。

そんなことを試行錯誤してきました。

「センス・オブ・ワンダー -植物と出会う 色と出会う 世界と出会う-」

↓担当した1・2年生の黄金グループの子どもたちと森でつくった染めものプロジェクト。象徴的な実践のひとつです。


11月の唐松林 森でくらして季節の巡りを体感した

「つくりて」たちの学校

2023年の冬の景色 3月になり雪がたくさん降った

1・2年生の茜グループの探究で「未来パン」をつくっていました。
2学期からじっくりたっぷりパンを題材に探究を続けてきて、3学期には、今はまだ存在しない未来のパンをつくることになりました。
同時期にやっていた、9年生の「卒探」
未来パンが、わたしをつくる集大成の「卒探」へつながっているように感じました。

風越学園は「つくりて」たちの学校です。
幼児から中学生まで、どの学年にも、多くのつくりてたちがいました。
今はまだ形になっていないことを、自分の興味・関心から新しく創造する。
そういう感覚の人が育っていく未来の社会には期待ができます。

この子たちが大人になった頃の姿もみてみたい。
そんなことを思わせてくれる子どもがとても多くいました。

わたしの「       」になり続ける

風越学園では「あなたはなにをしたいの?」ということを常に問われつづける現場でした。
子どもはもちろんのこと、スタッフである自分自身も問われ続けて、その問いの解を求め続けました。

3月末 卒業記念に撮っていただいたポートレイト

情熱や意志のある人が切り拓いていく。
そんな輝く同僚の姿を見てきました。

私自身は、ここで「創造性を発揮した」とか「成果を出した」というところに至っておらず、ついていくことに精一杯でした。
しかし、後々、この蒔いた種の芽が出て花が開く時期がくると確信しています。

風越学園には「      」になる。
という言葉があります。
「      」に入る言葉は人それぞれ。

卒業スタッフによる「わたしアウトプット」 ひとりひとりが主役になれる場をつくってくださった

私がみつけた、暫定的な「     」の中身は「創造」だった。「      」になり続けて、チューニングし続ける。

なりたい自分・在りたい自分になり続ける。
チューニングは生きている限り続きます。


そんなことを思い、2024年3月、風越学園を卒業します。

出会ったみなさま、関わってくださったみなさま、ありがとうございました。


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