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こどもの意欲・関心にどう伴走していくか

先日、軽井沢で、小学生対象のアート・ワークショップを実施した。
今回は7月末に軽井沢であるイベントのテスト・ワークショップも兼ねての実施で、実験的な要素をいくつか取り入れた。

・大きなキャンバスで協同制作する
・からだを使うというところにフォーカスをかける(身体性のある行為としての絵)
・道具を拡張したからだにみたてられないか

・絵筆以外の道具で描く
・絵を描く動きをダンスにみたてられないか
・こどもの意欲を喚起しつつ、完成物のクオリティーを高める


意図としては上記の6つ。
こどものやりたいと、ファシリテーターのこう描いてほしいをどう一致させていけられるか。

絵を描く前段階の準び運動って?

シャボン玉に絵の具をまぜてストローで膨らませて模様を描いた

いきなり大きなキャンバスを目の前にして、ふだん、描きなれていない子は、ひるんでしまうんじゃないかと思い、まず最初は個人制作から入った方がいいのではないかと考え、A4サイズの画用紙に模様を描くことから始めた。
前日に、シャボン玉に絵の具を溶かして描くアイデアを思いつき、急遽、ウォーミング・アップの活動に入れてみた。
紙の上でシャボン玉が弾けると、画面のようにいい感じの模様ができる。

シャボン玉 ぶくぶくに夢中になりだす子ども

実際やってみると、シャボン玉に絵の具の成分が入ることによってうまく膨らまなくなる。今回はアクリル絵の具を入れたが、水彩絵の具やら何やら画材や比率を変えることで改善点はありそうで、この方向での探究のしがいはありそうだ。

最もといえば最もだが、途中からシャボンの泡をつくるのが面白くなり、ひたすらぶくぶくしだす子が増えて、完全に絵を描く関心から逸れてしまった。
これが、中・長期の探究活動であれば、こういう状況もチャンスと捉えられて、こどもが関心が向いたシャボン玉を素材に探究を進められる。
しかし、今回は単発のワークショップで、絵を描いて作品を完成させるというゴールがあるため、「それいいね!」とも言い切れない自分がいた。

シャボン玉以外に画材として、水鉄砲や水風船を用意していたが、どういう状況になるかは容易に想像できたので、この時点でそれらを使うことをやめた。
道具自体に魅力がありすぎると絵を描くことから注意がそれていくんだな。

理想はファシリテーターが「やりましょう!」と言わなくても、思わず画面に色をぬっちゃう。そういう環境や道具に触発されて思わず描いちゃうというところをめざしたい。

こどもの興味・関心って大人の意図なんか軽くこえていく

ステンシルの技法を使ってリスを描く

これまで、単発のこども対象のワークショップをやっていく中で、描き方はシンプルにすることが大事であることを実感してきた。
複雑になると、描きなれていないこどもはめげてしまう。
描き方は簡単だけど、出来上がったら「おお!いいな!」ってなるもののひとつのやり方がステンシルだ。

この時、小学校低学年のこどもたちの動きがみていて面白かった。
おそらく絵の具自体、扱う経験が少ないのだろう。
キャンバスに色を塗ること以上に、絵の具を混ぜることに集中している様子だった。

「黄色に赤を混ぜてみたい」
「青に緑を混ぜたら?」

という感じで、どんどんと絵の具を器の中で混ぜていく。
大人の感覚だと、「あーまっくろになっちゃうなあ」って思うんだけど、彼らは絵の具自体への興味から始まってるんだなと、興味深くその様子をみていた。

まっくろになった絵の具に水をたっぷり入れて、色水づくりが始まって、それに満足した様子だった。

大きなキャンバスに描くチャレンジ

お手製の大きな筆で色を塗る

先ほどのステンシルの技法を使って「どうぶつの森をつくろう!」と投げかけて、大きなキャンバスに色を塗っていった。
このお手製の大きな筆は、こどもの関心をひき、グッと意欲が高まった。

意外とからだが汚れることに抵抗あるんだね

指先のタッチつかって森を描く

手を汚すことに抵抗感のある子が思った以上にいた。
「からだを使って、自由に描こう!」という投げかけでエネルギッシュに描くには、そこにいくまでの描きたい!という思いの高まりが必要だ。
この活動にいくまでの手前の活動をどう設定するのかが、ポイントになるなと、今回、やってみて感じたことだ。

ちなみに、今回、手を汚すのが嫌いな子への配慮として、最初、ビニール手袋を用意した。
そしたら、全員が迷いなくビニール手袋に手をのばした。
でも、その姿に『ん?」という微妙な違和感をもった。
「ダイレクトに指先の感触を使って描くと楽しいのになあ」と思う。

その後、そのビニール手袋に水を入れて遊びだす子が出始めて、その手袋を落として割れて、絵がぬれた。
それは、そうしたくなるよね。
「絵を描く以外に使わない」というルールを決めることもワークショップのフレームかもしれないが、そもそもそういうルールを作らないと成り立たない道具は使うべきでないと思う。
思わずやっちゃう!というそのアフォーダンスが大事だから、あくまで思わず楽しく絵を描いちゃったというところを目指したい。
今後、多分、一生、ワークショップにビニール手袋はもっていかない。

「汚してもオッケー!描きたい」というのも、こえる・こえないという自己選択・自己決定があるのだと思う。
ここでファシリテーターが場をどうみるかが問われそうだ。
が、基本は本人の自己決定が大事だと思うし、そこに寄り添うのが大人の役割だ。でも、この子、一歩、踏み出せそうだなと感じたら、「一緒にやってみようと」と誘うのだと思う。

最初、手袋をつけた子たちは、結局、外して指先で描いた。
この活動が一番、集中度が高く、からだから刺激が入ることはパワフルなんだな。

作品が完成してにっこり

今回は1mほどのキャンバスを使い「どうぶつの森」を作った。
ステンシルで隠していた紙をはがす瞬間はドキドキするね。

場づくりの上では、課題や考えたいところを多く整理できた。
しかしまあ、こどもたちはいつも、ぼくの意図なんか軽く超えてくるので、おもしろいし、付き合い甲斐があるし、興味深い存在だ。

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