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エリックカルメンとラズベリーズ

1984年頃の学生時代、私、レンタルレコード店でバイトの店員をしていました。
そのレンタルレコード店で、私とバイトの相棒の先輩が「銀座の姉さん」と名付けていた常連客の女性がいまして、平野ノラさんのイメージですね、ザ・バブリー女。銀座の弁護士事務所で働いてるというのですが、どう見ても六本木に遊びに行ってるかのような服装と髪形です。
その彼女が毎晩、通勤帰りに店に寄ってくれるのですが、それがレコードが目当てではなく相棒の先輩が目当てで会いに来るのです。


Eric Carmen 5th 1984年

エリックカルメンは大好きです。このソロ5枚目のアルバムも、ポップでありバラードも期待どうりに感傷的で当時よく聴いていました。ちょうど映画「フットルース」で「Allmost Paradise」が大ヒットした頃で、その作曲者である彼がすぐさま自身の新譜を出したのがこれです。

本作は、レコードとCDの狭間期に発売されましたが、レコードは売れずにすぐ廃盤になり、CDは結局発売に至らず。後には希少品として高額になっていて、手が出なくなってしまいましたが、2015年、実に31年ぶりに日本で世界初CD化として発売され、やっと手に入れることができました。

ファンの間では彼の最高傑作とも言われていますし、私も初期の「All by Myself」や「雄々しき翼」等よりも、後期のこのアルバムのほうがよく聴いてたりします。

↓このアルバム2曲目、エリック必殺の感傷的過ぎるバラード。

いやぁーこの動画も(どの彼の動画も)ナルシストっぷりが効いてて、なんて感傷的なんでしょう…自分に陶酔してる外国人達見て、なんで私はこんなキザな人達に心揺さぶられてるんだろう…前回の記事でボビーチャールズが好きって言ったのが台無しだー。
でも私は、エリックカルメンが大好きです。

銀座の姉さんが、ある日私ひとりで店番している日にやってきて、先輩が居ない日に珍しいなと思ったら、エリックカルメンのアルバムを数枚カウンターに持ってきて「これコピーして」と言うのです。
「歌詞カード?」「ううん、私この人の顔すごく好きなの。だから、アルバムジャケットの顔を紙にコピーして」なるほど先輩が居ない日に来た訳がわかったぞ。

私は銀座の姉さんに「先輩とエリックカルメンとでは、ぜんぜん顔似てないじゃん!」とツッコむと「私はエリックカルメンの曲も好きなの!」と顔を赤らめてムキになって言うので、「じゃあレコード借りていけ!」とはツッコミませんでした。店にたむろもするしけっこう迷惑な客でしたけど、毎日お店に来て笑顔を見せて、一生懸命先輩にアプローチしようとしていた彼女が、なんかいじらしかったんですよね…

でもカッコイイ先輩には、れっきとした彼女がいたので、結局銀座の姉さんは、ふられてしまうのですけど、お店が閉店する解散飲み会をやった時に彼女、酔って先輩に寄り添って、ずっと泣いていた姿がなんだか可愛かったなぁ。

その後、エリックカルメンは うれしいことに2004年にラズベリーズを再結成しリユニオンツアーを成功させます。2007年にそのライブのCDとDVDを発売していますが、これがまた素晴らしくてエリックも原曲キーのまま見事に声が出ていますし、演奏も曲目も申し分無しでビートルズカヴァー(Baby’s in Black、No Reply 、Ticket to Ride)の選曲もジョンの一番好きな辺りでグッドですし、ラズベリーズファン、エリックカルメンファンを唸らせたのです。本当にラズベリーズのパワーポップは素晴らしくて気持ちが高揚しますよね。

あの頃、レンタルレコード店にはデジタルなんてもんはなく、お客さんとのふれあいや音楽話やアナログチックなモノに溢れていました。パソコンが存在しない時代の、沢山の手間や工夫や愛着や会話が生み出したあの時のロマンというか、いじらしさが、エリックカルメンの大仰な歌にうまく溶け込んで私には聞こえてくるのです。

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