2年前に衝撃を受けた”社会のためではない"と言いきる社会起業。
僕は4年前、教育という分野で起業した。
教育というと、
「志ある仕事ですね」とか、
「社会のために偉い」とか言われることが多い。
実際始める際には、そう考えて起業した。
後世に残せるものを、この世界に残したい。
しかし始めて2年がたった頃、少しずつ心が苦しくなっていた。
ひとつひとつの仕事は死ぬほど地味だし、
飲み会をすべて断り、仕事、仕事、仕事。
そのくせ貯金もどんどん減っていった。
「なぜこんなに頑張っているのに報われないのか」
「社会のためにこんなに身を粉にしているのに、どうして広がらないのか」
先生に出会ったのは、そんなことを感じはじめていた時だった。
先生は誰がどう見ても立派な医者だった。
途上国に単身で乗り込み、医療機関のない地域で子どもたちの命を救い続けた。情熱大陸にも異例の3度出演。
僕は縁あって、講演会に参加することになった。
先生の活動は、一言で言うと、「目の前の命を救い続ける」ことだった。
お金もない、人もいない、設備もない中で、一人ひとりと向き合う "いのちのエピソード"に、自然と涙がこぼれた。
そんな活動を20年も続けているという。
すごすぎて形容詞が見当たらなかった。
同時に僕は、心の底から知りたかった。
"どうしてそんなに頑張れるのか?"
そんな時、先生がこんな話を切り出した。
「日本から、手伝いたい!と言ってくれる人が増えてきたんです。でも、すぐ辞める人も多い。そんな時、辞めていく人に特徴があることに気づいたんです。」
もちろん、労働環境は想像するだけで過酷だ。そこにチャレンジしただけでも本当に立派だと思う。むしろ続けられる人がすごすぎるのだ。
でも、そこにどんな違いがあるのか、僕は知りたかった。
その瞬間、先生が語った言葉は、とても意外なものだった。
「すぐ辞める人の特徴は」
「《社会のためになりたい!》って言ってくる人です。」
僕は、「えー!!」っとひっくり返りそうになった。
嘘でしょ!先生の活動に共感する人は、全員「社会のためになりたい!」って思ってるよそりゃ!
先生は続けた。
「そういう人は、
《なんでこんなに頑張ってるのに評価してくれないの》
《社会のためにやっているのに、なんで報われないの?》
となりやすい。
でも、僕はこう思っている。
《すべて自分のためである》
《人間とは、人の間である》
《即ち、その人の周りの人間は、その人の鏡である》
《周りを輝かせることによって、僕は自分が輝くと思っている。そのためにやっていると割り切っているから、報われなくても折れないし、覚悟を持ってやり続けられる》
なるほど。
僕は自分が苦しんでいる理由がわかった気がした。
一時手を差し伸べることは、無私でできるかもしれない。
継続的にやっていくことは、それとはまた別のこと。
もちろん、無私の精神で続けられる人もいるだろう。
でも、ほとんどの人はそうではない。
そう、今苦しいのは、"社会のため”にやっていると思っているにもかかわらず、聖人ではないという、きっとこのねじれからきている。
先生のこの言葉は、"ゴーン"と鐘をつくように僕の胸に響いた。
それが今からちょうど2年前。
僕がまだ活動を続けられているのは、先生のおかげかもしれない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?