重箱の隅をつつく話

東京はこの時間、快晴に恵まれている。iMacのマウスがキンキンに冷えるほどの寒気だが、窓から差す陽光がわたしの半身に注いでおり、心は冷えていない。

こんなやさしい天気の日にすることではないが、今日は時間の許す限り、重箱の隅をいくつかつついてみたい。

まずは、一つ目の隅である。

昨日、宝くじ売り場の前を通りがかった。大きな駅の前によく、おばちゃんが一人で切り盛りしているような、「試着室か?」と思うほどに小さい造りの店舗があるが、その三倍くらいの面積の売り場である。スクラッチやらロトやら、様々なタイプのくじのポスターがひしめき合うそのすこし上に、「大安吉日」という貼り紙があった。

これがコントの導入部なら、「そうか、今日は大安吉日なのか。こんな日にくじを買ったら当たるかもしれないな。買ってみようっと」客が独り言を発し、おかしな店員との軽妙なやりとりにつながっていくところだ。

しかし、これはコントではない。日頃から底意地の悪いわたしは、その「大安吉日」の欺瞞を見抜いたのである。

この日が客側にとってだけ「吉日」なら、くじは当たるだろう。しかし今日は、店側の「吉日」でもあるのだ。そして店どころか、一般財団法人日本宝くじ協会にとっても、昨日は「吉日」だったのだ。

巨大な協会としがない客、どちらの吉日性(わたしの造語である)が強いかは、火を見るよりも明らかではないか。「くじが大量に売れるが、一つも当たらない」のが協会にとっての最大の望みである。大安吉日には、その願いが成就する可能性が高くなるだろう。

そして、二つ目の隅である。

近所のクリーニング店に、全国クリーニング協会的な団体(また協会の話だ)が作ったポスターが貼ってあった。「洗い」へのこだわり――傾斜のついた明朝体で、力強く印字されていたのだ。さすがは全国クリ―ニング協会、全国のクリーニング店のプロ意識を見事に表現した名コピーだが、ひとつ疑問が残る。

「洗い」以外、どこにこだわるというのか。「アイロンがけ」なども大事な仕事であるが、もし「『アイロンがけ』へのこだわり」というコピーがあっても「むしろ『洗い』にこだわってくれよ!」と思うだろうし、その通りに「洗い」へのこだわりを打ち出しても、わたしのような輩がいちゃもんをつけるのである。

結局、隅は二つしかつつけなかった。点が二つでは箱どころか、面にすらならない。残りは宿題とさせていただきたい。

次回の更新は12月17日月曜日、正午です。


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