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短編小説「今週の話」

9月21日(月)
世間は敬老の日だが、わが社は通常勤務。基本的に祝日休はなく、一年間の祝日休をぎゅっと凝縮した(らしい)一週間の休みが、五月の連休中に支給される。今日は忙しめのスケジュールだったがすべてにおいて順調で、この仕事を選んで本当によかったと思う。
デニッシュトーストとジョンソンビル、すぱじろう、ツナサラダ。

9月22日(火)
世間は秋分の日だが、わが社は通常勤務。基本的に祝日休はなく、一年間の祝日休をぎゅっと凝縮した(らしい)一週間の休みが、五月の連休中に支給される。今日は忙しめのスケジュールだったがすべてにおいて順調で、この仕事を選んで本当によかったと思う。在宅勤務だったが、「在宅勤務時の服装規定は出勤時と同じ」ということで、ズボンと靴下と革靴も出勤時と同じものを履く。自宅のフローリングが汚れる結果となったが、この緊急時に従業員を信用して在宅勤務をさせてくださる上層部に感謝をしながら、クイックルワイパーで拭く。
デニッシュトーストとジョンソンビル、デパ地下の惣菜と白飯、トマトスライス。

9月23日(水)
本日も在宅勤務。「在宅勤務時の服装規定は出勤時と同じ」ということで、ズボンと靴下と革靴も出勤時と同じものを履く。だが、今日は予め靴の裏を拭いておく。これで勤務後の掃除が省ける。このような効率化を常に考えよと、現社長も前社長も日々おっしゃっている。あのように先の尖った革靴を履いた方々が言うのだから、きっと正しいのだろう。「zoomを使用するときは、背景が壁のみ、もしくはカーテンのみなど、極力シンプルにすること」という規定があるので、在宅勤務時は毎回デスクを移動させている。が、移動時の騒音は気にする必要がない。真下の階の新聞受けには、何週間も新聞がたまっている。
セブンのビスケット(パンのほう)、ゴーヤチャンプルーと白飯、ゴーヤと豆腐のあえもの。

9月24日(木)
休み。我が社はシフト制のため、従業員ごとに休みは異なる。わたしは木曜と日曜が休みだから、最大でも三連勤だ。このような制度を作った前社長は本当にすごいと思うし、あのように先の尖った革靴を履いた方のやることはすべて正しい。天候がすぐれないため外出はせず、来年の新人賞向けの小説を書き進める。筆が進んでしかたなく、自分が書いているというよりは、小説に書かされているという感覚。すべての登場人物に血が通っており、伏線は巧みに回収され、娯楽にも文学にも偏らず、批評家も一般読者も唸らせる傑作ができそうだ。夜はNetflixで「もう終わりにしよう。」を観る。監督・脚本のチャーリー・カウフマンの、「意訳」のうまさに感動。
セブンのビスケット(パンのほう)、豚のもやし蒸しと白飯と豚汁、池袋でつけめん。

9月25日(金)
会社の新ルールが施行。相変わらず、この会社の管理部のやることには間違いがない。一部従業員が管理部について、やれ「やる気満々の学級委員」だの、やれ「ルールを増やすことが仕事だと思っている」だの、見当違いな批判をたらたらたらたら述べているらしいが、そんなに嫌なら辞めればいいのだ。辞めても他社で通用するような優秀な人材しかこの会社にはいないのだから、いつ辞めたって構わないのだ。新ルールにより従業員の仕事は増えたが、これにより人材の新規登用を避けることができる。つまりはコストの削減だ。こうして削減したコストがいつか新規の大事業に化け、会社と従業員全体にうるおいをもたらす。そういう想像ができないから、やれ「やる気満々の学級委員」だの、やれ「効率化を叫んでいるが結局金を使いたくないだけ」だの、見当違いの批判を述べることになるのだ。
セブンのサンドウィッチ、ムンバイのBBQセット、チキンサラダと白飯と昨日の豚汁。

9月26日(土)
出勤前にnoteの下書きを終える。今週の日記を「フィクション」として書いた。あくまで創作であり、すべて架空である。もし現実の人物や出来事と似ている部分があっても、それは偶然にすぎない。通勤電車に乗っていると、最近再開したインスタグラムに、知人ではない若くてきれいな女性からDMが来る。「森さんのセンスのすべてが好きです。お会いしませんか?」とのこと、時節柄「感染者数が落ち着いたらぜひ」と返事をする。その日を楽しみに日々をこなすことにする。
セブンのサンドウィッチ、とにかく食べたいもの、野菜がメインのカロリーが低いもの。

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次回の更新は10月3日(土曜日)です。この文章はフィクションです。

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