700字くらいの花の話

ほとほと疲れている。ウイルスのせいで、というか厳密にはウイルスに怯える善良な人々のせいで、いろんなことがいろんな方面からやってきて、トイレットペーパーで首を締められるような苦しみに日々耐えしのんでいる。そんなに大事なら首を絞めるのではなく尻を拭くのに使ってほしいし、キレイ好きであるわたしのために、ノンアルのウェットティッシュは残しておいてほしい。

そんなわたしの最近の癒やしは、花だ。そう言うともう行き着くところに行き着いてしまった感があるが、わたしは最近、花に癒やされているのである。

花はいい。きれいなところもいいし、香るところもいい。そしてこの「よさ」は老若男女、国籍も問わずに共有される。もちろんそれは現代に限らず、文明というものの種すらない時代から、人間は花を愛してきたのだ。ただ「きれい」だとか「素敵」だという理由で、とくに役には立たないものを育てて愛でてきたのだ。ときおり戦争を起こしてしまう人間であるが、この「役立たなさへの愛情」は誇るべきものだと思う。

200円くらいあれば、花屋でガーベラの一本でも買える。モンスターエナジーと同じくらいの額である。栄養にもならなければ残業の友にもならないが、花を抱えて家路につく間、人は最も「効率」から遠い存在になれる。

そしてそれを繰り返し、「プレゼント用」の対義語が「自宅用」であることを覚え、ゴミ箱にアルミホイルがたまっていき、「これくらいで切ってください」の正確性が増していく。花はもう伸びないが、人間は違う。

どう頑張っても花はしおれる。でもまだもっと役に立たないことがしたくて、また別の花を買う。これはある種の抵抗である。強さの側に呑まれないよう、わたしは藁ではなく花にすがりたいのだ。

次回の更新は3月14日(土曜日)です。

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