ゲームキャラへの羨望の話

ゲームのキャラがうらやましい。すこしでもいいからその能力がほしい。とはいえわたしは、魔法獣を召喚したり、世界を救ったりしたいわけではない。

ロールプレイングゲームでよくある光景だが、疲れが蓄積したとき、登場人物たちは宿屋に入る。十分な睡眠により気力も体力も元通りになった彼らは、昨日の疲れなどそもそもなかったかのように、今日もまた冒険にでかける。

うらやましい。なんなら憎い。なぜやつらは一晩寝ただけで元気になれるのか。「その日の疲れをその日のうちに癒やす」なんて、この世のほとんどの大人が達成できていないのに。しかもやつらは、命がけでモンスターたちと戦うという「激務」をこなしているのだ。心労も相当なものだと想像されるが、それでもやつらは「スッ……」と寝入る。そして、目覚めたら全快だ。

そう、やつらが誇るのは回復能力だけではない。入眠という点でも人間離れしているのだ。

わたしは眠ることが、とりわけ入眠が不得意である(このことについては以前記事にした)。睡眠薬を服用する必要がなくなってだいぶ経つものの、それでも入眠の前はすこし緊張する。入眠予定時刻の数時間前から部屋の照明を暗くし、早めに風呂に入り、さらに照明を暗くして、なるべくスマホを観ないようにしながらソファで本を読む。この一連の動作で、浴びる光と得る情報をすこしずつ抑えていくのだ。一時間ほど読書をしていると、かすかな眠気がさしてくる。このかすかな眠気を逃さないように、入眠用の音楽をすばやく選曲してベッドに移動する。うまくいけば、ベッドに入って三十分以内に眠りにつける。以上が、わたしが長年の死闘の果てに編み出した、入眠プロセスの最適解である。

ほぼ一段落を費やして入眠プロセスを記述したわたしを嘲笑うかのように、やつらは「ねむる」を選択するだけで安眠につく。しかもゲームソフトによっては、「朝まで眠る」「夜まで眠る」など睡眠時間も自由自在だ。

わたしは今日もゲームをする。その理由のひとつは、せめてゲームのなかでは「即寝」をしたいからだ。

次回の更新は1月30日水曜日、正午です。

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