昨日の『爆笑問題カーボーイ』の話

昨日も睡眠に失敗した。24時までに寝入るつもりが、実際は27時すぎだった。「0時」「3時」と表記することもできるものの、心の痛みを表すには24時間法がふさわしい。

やれ筋トレをしろ、やれ日光を浴びろだの様々な健康法が叫ばれる昨今であるが、「寝ないのが逆にイイ」みたいな言説は聞いたことがない。それほどに睡眠が重要だということだが、では、睡眠の才能のない者は、そもそも健康の才能もないのだろうか。

わざと脇を甘くし、無抵抗な様を見せたにも関わらずなかなか睡魔に襲われなかった昨夜、わたしは深夜ラジオを聴いていた。TBSラジオの『爆笑問題カーボーイ』である。毎週火曜日の深夜、25時から27時まで放送されているこの番組を聴きつつ、「笑いながら眠る」ことを夢見たのだ。いや、夢を見ないほどの深い眠りを夢見たとも言える。

ラジオをよく聴く方にはおなじみだと思うが、大抵のラジオ番組には「投稿コーナー」がある。番組側が提示したテーマに関する個人的な逸話や、提示した大喜利のお題への回答をリスナー(聴取者)が送り、パーソナリティー(司会者)がそれを読み上げる。『カーボーイ』はとくに、後者(「ネタ投稿」とも呼ばれる)に注力している。

この番組には、ある「作法」がある。ネタ投稿で本題に入る前に、リスナーは爆笑問題の二人に呼びかけるのだ。「太田さん、田中さん。○○○○(ネタ)」といった具合に。そして、この「作法」が複雑なのは、太田は「太田さん」と呼ばれるのに、田中はまともに名を呼ばれないということだ。

例えば昨日の放送で、田中は「オランウータンの言い方が気になる人」と呼ばれた。田中が過去に、「オランウータンをオラウータンと発音する人が信じられない」という発言をしたことを踏まえた「あだ名」である。他にも、「○○さんのことを嫌いだと言っていた人」など、根も葉もないデマが流されることもある。

真っ暗い部屋。なかなか眠れずに苦しんでいたわたしの耳に、田中がまた変なことを言われて困惑している様子が入ってくる。そしてまた同じように次の投稿に入ったとき、田中はこう呼ばれたのだ。

どうせ死ぬのに生きる人。

田中はこれに爆笑しながら、「みんなそうだよ!」とツッコんだ。

わたしは震えた。安ベッドがきしむくらいに震えた。もちろん震えの主成分は笑いだったが、わたしは感動もしていた。くだらないネタにゲラゲラ笑っていたら、唐突に真理の(それも仏教的な真理の)底に突き落とされたのだ。

一見、田中だけが真理に到達していて、投稿者のほうがひどい罵詈雑言を吐く悪者に思えるが、そうではない。このやりとりは、リスナーとパーソナリティーの信頼関係の産物なのだ。

これを書いているわたしも読んでいるあなたも、どうせ死ぬ。そう考えると、無駄なこわばりがとれる気がしないだろうか。

次回の更新は2月14日木曜日、正午です。

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