細心の注意の話
男になんて生まれたくなかった、と毎晩思う。浴槽に入るとき、または浴槽から出るとき、「ここで足を滑らせて股間を強打したらどうしよう」と、毎回怯えてしまうのだ。
女性だって強打したら痛かろう。確かにそうなのだが、露出している部位が多いぶん、強打に対する耐性は低いはずなのだ。科学的根拠はないが、そういうものだとしてほしい。
浴槽をまたぐ際、わたしたちは毎回勇気を振り絞らねばならない。またぐことに無事成功するイメージを抱きながら、現実に立ち向かわねばならない。もちろん、油断は禁物である。万が一床で足が滑っても「最悪」に至らないように、浴槽の縁をしっかりと両手で掴むことを忘れてはならない。
シャワー派に寝返りたくなる衝動を抑えつつ、わたしは今夜も恐怖と戦うのだ。
次回の更新は3月25日月曜日、正午です。
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