【晩夏のお悩み相談】仕事選びの話など

本日は「晩夏のお悩み相談」と題して、事前にTwitterで募集した皆さんのお悩みに(そんな資格があるわけないのに)回答していきます。

好きな仕事をしていますが、いわゆる非正規雇用で期限が決まっています。年齢も高いので再就職の口もなかなかありません。そんな中、ぜひ正社員でという話をいただきました。ありがたいのですが、仕事に興味を持てません。受けるかどうか迷っています。

おそらく容易に結論が出ない問題ですが、自分なりにお答えします。

最近よく考えるのですが、好きなことをする、というのは本当に幸せなことなのでしょうか。もちろん、したくもないことをするより、自分が心の底からやりたいことに打ち込むほうが幸せに決まっています。ですが、「生きる」や「暮らす」といったスケールで考えたとき、「好きなことをする」のは必ずしも最優先事項ではないと、最近はそう思います。

たとえば、百万円貯めたいとします。百万円が貯まった頃には、二百万円貯めたいと思っています。たとえば、武道館でライブをしたいとします。終演後には、今度は東京ドームでやりたいと思っています。飽きない限り、その欲は止むことがありません。「好きなことをする」というのは、ある意味では呪いなのかもしれません。

これはわたしの実感でもありますが、「好きなこと」「やりたいこと」を突き詰めていくとキリがありません。わたしが翻訳者として本を一冊出せたことでも十分ありがたいのに、次は小説を書いて新人賞を受賞したいと考えています。もし受賞して出版でもされたら、二冊目を出したい、ベストセラーを出したい、『王様のブランチ』に出てチヤホヤされたいと欲望は膨らんでいくことでしょう。わたしはこの「肥大」が、どうも幸福とは結びつかないように思うのです。

わたしはZOZOの前澤さんとは面識がありません。週刊誌やTwitterでしか彼の仕事や人柄を知りません。その上で想像するに、彼が一番幸福を感じるのは、剛力さんと一緒に過ごしているときなのではないでしょうか。どれだけ仕事で成功して、どれだけの富や名誉を得たとしても、たった一人の女性と過ごす時間に敵わないのではないでしょうか。

わたしのような若輩ものが寂聴ぶるのは恐縮ですが(頭韻を踏んでみました)、「なにをしたいか」よりも「誰といたいか」を優先したほうが、生きることをシンプルに捉えられる気がします。シンプルさと幸福は別の概念ですが、肥大よりは幸福に近いとわたしは思います。

もちろん、どちらを優先するかはあなたの自由です。「いまの職場の同僚と一緒にいたい」という場合もあるでしょうし、「正社員として安定した生活をすることで、プライベートで人に会いやすくなる」という場合もあるでしょう。わたしには具体的な状況がわかりかねますので、この辺りはご自身でお考えになっていただければと思います。

40代で未婚という今の状態が時々不安になります。今まで恋人ができたこともないですし。そんな自分はダメな人間なのかと思いもします。どうすればいいのでしょうか。

結婚や恋愛が「いいもの」とされているのは、あくまで一つの価値観の上の話です。価値観とは人間が作ったものであり、言うなればフィクションです。そんなフィクションごときに、溢れんばかりのあなたの生を否定できるでしょうか。それに、電車でベビーカーを睨むサラリーマンが結婚指輪をしているようなこの社会ですから、恋人や配偶者の有無に大した意味はありません。

食べすぎるのが止まりません。 なまじ「作れる」ため冷蔵庫の食材を使い切るまでおさまりません。 森さんはそんなことはありませんか。

最近はカタギとは思えないようなスケジュールで生きているので、自炊があまりできていません。しかし、以前はよくしていました。ハナマサで安くて多い豚肉を買って、消費期限寸前まで持て余して、最終的に「ゴーヤより豚が目立つゴーヤチャンプルー」をよく作っていました。太りました。だからそもそも、食材を買いすぎてはいけないのです。

あなたはおそらく、食べ物を捨てるということに罪悪感を覚えるタイプなのでしょう。それ自体は素晴らしいことです。食材を買うことに快感を覚えるタイプなのでしょう。それ自体も素晴らしいことです。しかもあなたには料理の才能がありますから、捨てることなくおいしく食べられてしまう、ということなのでしょう。

あれば食べてしまうのが人間の常ですから、そもそも食材を買わない方向を目指すのをおすすめします。空にした冷蔵庫をピカピカに掃除して、「このきれいな状態を保ちたい……!」と自己洗脳されてはいかがでしょう。もしくはまずい飲み物(どこで作ってんだ?というような60円くらいの缶コーラなど)で冷蔵庫をいっぱいにすれば、食材を入れるスペースが減ります。

もうひとつの方向として、食材を廃棄する勇気を持つ、というのも大事です。お米の一粒一粒には七人の神様がいると言われていますが、神様だってあなたに苦しんでまで食べてほしくないはずです。一、二柱は「死んでも食え」と言うかもしれませんが、残りの五、六柱が「まあまあ」となだめてくれるでしょう。

今回は三つのお悩みに回答しました。この他にもご応募いただきましたが、回答することができませんでした。皆さんの健康で文化的な、残暑に吹くそよ風を感じられるような生活をお祈り申し上げます。

次回の更新は8月31日土曜日です。いつも通りの形式でお送りする予定です。

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