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今週の怪談プレイリスト(10月13日号)

最近見聞きしたなかでおもしろかったものをご紹介します。なるべくアップロードが新しいものを選んでいます。便宜上数字を割り振っていますが、ランキングではありません。

1. 伊山亮吉「寮生活の夜」

お笑いコンビ「風来坊」のツッコミとしての活動のほか、怪談師としての活躍も盛んな伊山氏。怪談好きの小学生のようなてらいのない語り口で、人間も怪異も分け隔てなくフラットに描写していく。今作では、ある事実が語られるときの、登場人物のあっけらかんとした口調が出色。

2. 夜馬裕「子猫」

後味の悪い怪談のトップランナーである夜馬裕氏。清潔感と得体の知れなさを両立した雰囲気から発せられる、こっちとあっちの境界線にあるような物語はいつまでも胃に残る。今作では、猫といういきものがもつ妖しさを存分に引き出している。

3. 黒ねこ「マシュー先生」※題は筆者による

シカゴで心理学を学んだあと、現在は日本で大学に通っているという黒ねこ氏。「心理学」「マシュー先生」といった道具立てのリアリティと、不意に立ち上がる怪異のギャップが特徴。米国で起こった怪異を日本語で語るという行為は、ある種の「翻訳」とも言えるかもしれない。

4. 朱雀門出「車を数える」

現役の大学講師でもある朱雀門氏。専門は環境分子応答学、生殖生理学、内分泌学とのこと。やわらかで簡潔な関西弁で語られる怪異は、恐怖よりも奇妙という言葉が似合う。再生時間二分強という端正な今作は、一度聞いただけでプロットが覚えられるシンプルさと、一度聞いただけで忘れられなくなる飲み込みづらさを併せ持つ。作中に登場する17,19,23という数字がすべて素数なのも意味深だ。

次回の更新は10月20日(火曜日)です。


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