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科学考証がイケてる日本特撮 私のベスト5

対前回の記事では、「ウルトラマンアーク」の科学考証が楽しみ、という内容を書きました。

私は理系で、SF的な設定や、怪獣の解剖図を見たり読んだり考えたりするのが好きです。
好きな特撮作品も、その要素が多いものを選ぶ傾向にあります。
今回は、私の愛する日本特撮の中で、「科学考証がイケてる」作品を選んでみました。

妖星ゴラス(1962)

地球の6000倍の質量を持つ星「ゴラス」が太陽系に接近、地球に破滅の危機が迫る。地球と人類を守るため、世界の科学者が叡智を結集して立ち向かう。その方法は、南極に巨大なロケットエンジンを建設し、地球の軌道を変えるというものだった!

あらすじを書いていても全力でツッコミみたくなるのですが、実際の映画を見てれば、木村武氏の大真面目な脚本、本多猪四郎監督の誠実な演出、円谷英二監督の超絶凄いミニチュア特撮、團伊玖磨氏の素晴らしい音楽、そして東宝俳優陣の演技力、どれをとっても素晴らしい、奇跡のような作品です。本作の撮影前、本多猪四郎監督は、東京大学理学部天文学科の堀源一郎博士に科学考証を依頼したとのことです。しかし、冷静に見ればやっぱりツッコミどころが満載で、実に見ていて楽しいのです。
・隼号、地球から土星までどんだけ早う行けてんねん!
・放射能の問題を「大丈夫」の一言で解決する田沢博士、なんやねん!
・月が無うなった時点で自転速度爆上がり、地球アウトやろ!
バカバカしいアイデアを、大真面目に描く、そのための科学考証を上手く使い、それっぽく見せる。
傑作であると同時に、SF娯楽映画における科学考証はどうあるべきかを考えさせられる映画です。


ゴジラvsビオランテ(1989)


5年前、東京を襲撃したのち、三原山の火口に姿を消したゴジラ。人類は、採取されたゴジラ細胞を利用して、世界の勢力図を塗り替える「抗核エネルギーバクテリア」を創造した。その争奪戦をめぐる悲劇から、薔薇とゴジラ細胞を融合した怪獣ビオランテが誕生する。復活したゴジラとビオランテは、日本列島を舞台に激戦を繰り広げる。

平成以降のゴジラのシリーズ化、ブランド化に果たした功績は計り知れない名作です。ゴジラの持つ「核の脅威」の対立項としてして、「バイオテクノロジーの脅威」を立案したのは、歯科医師である小林晋一郎氏。脚本・監督は、京都府立医大卒で医師の資格を持つ大森一樹監督。理系の才能が融合し、ゴジラ映画史上屈指のSF性の強いストーリーが生まれました。
ゴジラの造形にも生物学的考証が加えられ、小さい頭、白目の少ない眼、2列の歯といった魅力的なパーツが加わりました。スーパーX2、M6000TCシステムのアイデア兵器でゴジラとガチに戦う自衛隊もかっこいい。三枝瑞希、権藤一佐、黒木特佐など魅力的なキャラクターもたくさん登場します。
ラストの沢口靖子さんも嫌いじゃない
綿密な考証と、多彩なアイデアが作り上げた平成ゴジラの金字塔です。


ガメラ2 レギオン襲来(1996)

ガメラとギャオスの戦いから1年、地球に流星が降り注ぐ。飛来したのは巨大な植物状生命体「草体」と、それに共生する群体生物「レギオン」。ケイ素を食い荒らし、電波を混乱させ、大気を改造しようとするレギオンと草体。立ち向かうガメラと人類だったが、レギオンのあまりの強さに、大苦戦を強いられる。


前作「ガメラ 大怪獣空中決戦」からわずか1年4ヶ月で公開されたとは思えないほどの完成度を誇る本作、個人的には日本SF怪獣特撮の最高傑作だと思っています。
地球における植物とアリの共生をモデルに、宇宙規模に拡大した壮大な設定を持つ宇宙大群獣レギオンの強烈なインパクトが秀逸。「星間種子(スター・シード)」、声に出して読みたくなるワードです。ほぼレギオンの設定で物語が組み立てられているのが本当に凄い。前作に続き星雲賞を受賞したのも納得です。


ゴジラS.P(2021)

2030年、千葉県逃尾市。
“何でも屋”な町工場「オオタキファクトリー」の有川ユンは、誰も住んでいないはずの洋館に気配がするということで調査へ。
空想生物を研究する大学院生の神野銘は、旧嗣野地区管理局“ミサキオク”で受信された謎の信号の調査へ。
まったく違う調査で、まったく違う場所を訪れた見知らぬ同士の2人は、それぞれの場所で同じ歌を耳にする。
その歌は2人を繋げ、世界中を巻き込む想像を絶する戦いへと導いていく。
孤高の研究者が残した謎、各国に出現する怪獣たち、紅く染められる世界。
果たして2人は、人類に訪れる抗えない未来<ゴジラ>を覆せるのか―。
(公式サイトより)

放送当時、高度なSF性と娯楽性が高く評価された一方、その難解さから評価が真っ二つに分かれた作品。私は激推しでした。
SF作家・円城塔氏によるガチンコ理系なストーリー、大胆にアレンジされた怪獣たち、そしてみんな大好きジェットジャガーの大活躍。ハマる要素が満載でした。
本作のキーアイテム「アーキタイプ」は、時間を屈折、操ることのできる物質で、怪獣たちのエネルギー源。この設定を理解するため、量子力学や物理学の本をたくさん読んで勉強したのもいい思い出です。
細かい設定が分からなくても、親しみやすいキャラデザ、テンポの良い会話、素敵な音楽、ノリだけでも十分楽しめるシリーズにしてくださった、高橋敦史監督の手腕も素晴らしかったです。
ゴジラをもっと出してくれたらさらにポイントアップだったんですがねー
これまでのゴジラの「核の脅威」からさらに進んだ「量子力学の脅威」に果敢に挑んだ大傑作です。
続編はまだ?


ゴジラ-1.0(2024)

焦土と化した日本に、突如現れたゴジラ。
残された名もなき人々に、生きて抗う術はあるのか。
ゴジラ七〇周年記念作品となる本作 『ゴジラ −1.0』で
監督・脚本・VFXを務めるのは、山崎貴。
絶望の象徴が、いま令和に甦る。
(公式サイトより)

誕生から70周年、ついにオスカーをとったゴジラ。
それはとんでもなく凄いことなんですが、私が本作で最も凄いと思ったのは、
「現実の科学でゴジラをやっつける」
ことでした。
ゴジラをやっつける道具は、

  • 浮袋

  • 爆弾を積んだ飛行機

この3つです。
そして、ゴジラに物理攻撃を与えるのは、水深の乱高下による水圧の変化。

謎理論や謎多き超兵器ではなく、1947年の技術だけで実施できるゴジラ退治
軍艦と航空機には目を瞑るwww
なんなら子供の自由研究レベルであり、誰にでも説得力を持って理解できるゴジラ退治。
これは本当に凄いことです。
泡で包むっていうのも、初代ゴジラの最後を思わせて良い。
ゴジラの倒し方について、まだまだ可能性があると思わせてくれました。


いかがでしたでしょうか。
今回は、「科学考証がイケてる日本特撮 私のベスト5」を紹介しました。
これからも四国の田舎から、特撮にエールを送ります。

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