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芝原博士の「ウルトラマンアーク」科学研究室【第3回】を読んで、想像力が暴走した話。

『ウルトラマンアーク』第6話配信と同時に、ツブイマにて『芝原博士の「ウルトラマンアーク」科学研究室【第3回】』が配信されました。相変わらず理系のツボをビシビシとついてくる密度の濃い内容で、脳からよだれが止まらなくなります。事に第5話は芝原先生のご専門である化石と古生物、筆がノリにノっています。読むコメンタリーとしてとても素晴らしいので、是非多くの方に、特に子供達に読んでいただきたいです。

私はといえば、本稿を読んでいるうちに怪獣リヴィジラに対する想像力が暴走してしまったので、そのログを残しておこうと思います。


巨鯨水獣 リヴィジラ
身長56m
体重56,000t
星元市の大光峠に一夜にして出現した湖に姿を現したクジラのような姿の巨鯨水獣。頭頂部の噴気孔から塩を大量に噴き出して水中を白く霞ませ、敵の視界を奪った後に超音波を発して周囲を探り、正確な体当たり攻撃を仕掛けてくる。


"あなたはだあれ?" 〜リヴィジラの名前を考察する〜

作中では、化石発掘を報じるテレビ映像にて「リヴィジラ」の名称が使われており、作品世界に於いては既知の古生物のようです。
「リヴィジラ」の由来は、旧約聖書に登場する海の怪物「リヴァイアサン(ヘブライ語でリヴヤタン、ラテン語でLeviathan)」と日本語の「くじら」の合成語だと思われます。
1200-1300万年前には、リヴァイアサンに名をとった、「リヴァイアサン・メルビレイ(Livyatan melvillei)」というハクジラも生息していました。

「リヴィジラ」が属名か種名かは、作中で明記されていませんが、その得意な頭部化石から考えると、新属のクジラであり、研究を続けてきた牧野博士によって記載されたのではないでしょうか。
私が牧野博士なら、最初に歯の化石を発見した伴ヒロシ所長に敬意を表して、
Levijira banni  Makino, 20XX
と命名したいところです。


"マンモス・ホエール" 〜リヴィジラの形態を考察する〜

発掘された化石は、周囲の重機と比べても明らかに巨大で、出現した個体とサイズ差がありませんでした。また、クジラ類にしては後肢が発達しており、発達した歯列も含め、ムカシクジラ亜目に近い特徴を持っています。

化石には噴気孔が前頭部に1つ確認できました(コレも相当変わった形)が、出現した個体には、後頭部に更に複数の噴気孔らしき構造が見られました。
古代から原生に至るまでのクジラにこのような特徴はありません。
後方の器官からは水を噴射していないので、別の器官である可能性がありますが、それについては後述します。
いずれにしても、通常のクジラとは形態学的差異が大きいことから、アークと戦ったリヴィジラは古代生物そのものではなく、シャゴンのように何らかの原因で怪獣化した可能性が否定できません。
怪獣化のタイミングは古代かもしれませんし、そうなればリヴィジラが、伝説のリヴァイアサンそのものだったかも、です。


"この怪獣200dB?" 〜リヴィジラの生態を考察する〜

視界の悪い水中でもウルトラマンアークの位置を正確に特定し、攻撃するリヴィジラ。
ユーからの中継動画を見た牧野博士は、超音波反響定位=エコロケーションを使っているのでは、と考察していました。
ハクジラ目は頭部の先端に「メロン」と呼ばれる脂肪組織を持ち、発生させた超音波を収束して発射、反響音を下顎で受け、周囲の環境や獲物、敵の位置を観測します。
これがエコロケーションです。
因みにマッコウクジラが発する音の大きさは230デシベル。人間の鼓膜を楽々と破壊するレベルのエネルギーを持っています。
しかし、超音波を収束するメロンを納めるため、原生クジラの頭骨は扁平化しているのですが、リヴィジラの頭骨にはそれらしい窪みはありません。

この事から、リヴィジラは水中での活動に、エコロケーションを使っていないか、使っているとしても機能は制限されたものではないか、と考えられます。

では他にどのような手段があるのか。

原生クジラ目におけるもう一つの系統、ヒゲクジラ亜目はメロンを持たず、超音波発生源の発声唇も欠くため、エコロケーション能力を持っていません。
代わりにヒゲクジラは低周波の音を発し、その反響を聞いて周囲を確認していると考えられています。
しかし、リヴィジラには立派な歯がありますので、ヒゲクジラの一種とは言い難いですね。

そこで私は、リヴィジラの特徴である、シュモクザメのように飛び出した目に注目しました。

サメが属する軟骨魚類や、古い硬骨魚類には、水中の電位を感知するロレンチーニ器官という感覚器官が存在します。
シュモクザメの左右に張り出した目の周囲にはロレンチーニ器官が特に集中しており、周囲の電位変化を感知し、獲物や敵の存在を認識します。
ウルトラマンは光エネルギーの集合体であり、それなりの電磁波を持っているでしょうから、ロレンチーニ器官があればその存在を水中で見つけるのは簡単なことでしょう。

多くの硬骨魚類や陸上生物では、ロレンチーニ器官は退化して残っていません。
哺乳類であるリヴィジラでも、ロレンチーニ器官そのものは退化して残っていないでしょうが、類似の器官が二時的に備わっているのかもしれません。


"餌を探せ" 〜リヴィジラは何を食べるのか〜

リヴィジラの食性は、その歯の構造から、肉食だと考えられます。
あの巨体を維持するためには、ジンベイザメかクジラクラスの大物を捕食せねばならないでしょう。
そのためには、頭部の発光器官をつかった目眩しや、噴水孔からの高圧放水が役に立つかもしれません。


"塩分は誰れのために" 〜なぜリヴィジラは高濃度の塩水を作るのか〜

リヴィジラが生み出した高濃度の塩分。それは最高35%で海水(3.5%)の10倍、死海の塩分濃度(33%)を上回ります。
高濃度の塩分下では、一部のバクテリアを除いた生物は生息できません。
作中でヒロシ所長と牧野博士による「外敵を寄せ付けない」という考察、その通りだと思います。
リヴィジラほどの巨体なら、自身にとっての天敵はいないでしょうから、塩分精製の目的は繁殖、幼獣を守るためではないかと思われます。
ウルトラマンアークに執拗な攻撃を仕掛けたのも、子孫を残すためと考えれば理解できますが、ちょっと切ない気分にもなりますね。

さて、リヴィジラが高濃度の塩分を生み出すには、2つの方法があります。

① 塩素とナトリウムを元素合成する
② 既に環境にある塩素イオン、ナトリウムイオンを利用する

大量の塩素やナトリウム元素の合成には、超新星爆発級の環境とエネルギーが必要で、いくら怪獣でもそこまでの事はできません。

そこで考えられるのは、周囲の土壌に溶け込んだ塩分を濃縮する方法です。

海に生息する生き物は、体内の塩分を調節するため、余分な塩分を排出する「塩類腺」という器官を獲得しています。ペンギンなどの海鳥や、ウミガメなどの海棲爬虫類では、塩類腺を介して、鼻や目から高濃度の塩分を排出しています。
クジラ類は塩類腺を持っていませんが、そのかわり高度に発達した腎臓によって、体内の余分な塩分を尿として体外に排出しています。
リヴィジラは、地下水脈の水分と周辺土壌の塩類を吸い込んで腎臓で濃縮したと考えられます。
平たくいえば、自分のオシッコで巣を作っているのです。

ここで悩むのが、解説文の「頭頂部の噴気孔から塩を大量に噴き出して水中を白く霞ませ」という記述。
当然クジラにそんな機能はありません。
濃縮した塩類を貯める「リヴィジラぶくろ」が体内にあれば、そこから噴気孔へのバイパスも可能です。
あるいは、頭部後方の噴水孔に似た構造は給水孔で、ここから海水を吸い込んで腎臓を介さずに塩分を濃縮するとすれば、まさしく想像を絶するシステムであり、流石怪獣!と言えるでしょう。
ただ、高塩分の海水自体は透明で、公式記事にあるように水中が白く濁る事はありません。
高濃度すぎて析出した塩の粒子が含まれている可能性はありますが、そうなれば噴水孔が塩の結晶で詰まってしまうかも。
そこで考えられるのは、肺からの空気を細かい泡状にして水に混ぜ、噴射する事。
これにより水流は白く濁り、充分な目くらまし効果があると思います。

いかがでしたでしょうか。
素人の自己満足も甚だしい内容でしたが、ここまで想像力を掻き立てるには、作品が相当面白いから。
これからも『ウルトラマンアーク』で、想像力の筋トレを続けていければ幸せです。
四国の田舎からエールを送ります。

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