だいじな祖父のこと

祖父が一年一年歳をとる。
そのスピードは少し前より明らかで。
それが私にはとても怖いことです。

でも、3ヶ月に一回祖父の元に通いながら、
老いていく祖父の話をきいたり、祖父のために料理をしたり、少し外の空気を一緒に吸わないか、と誘ってみたり。
それらの時間は、苦しさも、喜びも、幸せもたくさんの感情が混じり合うひとときです。

認知症がすすんで、
直近のできごとは全て忘れてしまう祖父。
昨日私がいたことなんてすぐわすれてしまう。一緒にすき焼きをたべたことだって。
ちょっぴり悲しい。それでも、今やりたいわくわくする話はしわくちゃの素敵な顔をさらにくしゃっとしながら、笑顔で話すのです。

「よし、これと似た茶碗をあと20個作ってやろう。」

「この蕎麦よりもっとうまい蕎麦をつくれるぞ、うちで蕎麦屋できないだろうか。一緒にやろう。」

(そんな祖父は七年ほど前、自分のアトリエを改装してギャラリーにする空間を作った。一緒にギャラリーとカフェをしたい!と張り切っていた教え子さんが癌で亡くなってしまったこともあり、その空間は今は祖父の描いた絵や焼き物などの作品で溢れかえり混沌とした場所になっている。祖父の作った作品を眠らせておいてはもったいない。多くの人にみてもらいたい。そう思っている。それが私の楽しみで目標の一つにもなった。)

そんな祖父の顔をみると、フレッシュな意気込みに私もわくわくしてきます。

長生きの秘訣はなに?
-ふぅー。こうして思いっきりを吸うだろう。空気に思いっきり感謝するんだよ。

ある時はこう答えた。
ー楽しくいきることだな。

2回聞いて、二つともステキなこたえがかえってきて。私はグスッと涙があふれでてきた。
祖父の生き方そのものだなあと思ったのです。

目の前にある見えないものに思いっきり感謝して、楽しく毎日をいきること。

やっぱり私の祖父はすごい。

このことを胸に刻んで生きていきたいと心に誓ったお正月になりました。


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