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アメリカ開拓民の暮らし|大草原の小さな家

2015年3月26日
図書館で、並んだ本の背を眺めていたら、ふと山暮らしや田舎暮らしの物語が読みたくなりました。
体験談や入門書のような現実的なものではなくて、物語が読みたい。
小中学生向けの書架に向かい、タイトルからそれっぽいものを探してページを繰ってみます。

「農場に暮らして」「農場の少年」

・・・なかなか良さそうな本です。

「大草原の小さな町」

あれ?聞いたことあるタイトルだけれど、でも「町」じゃなくて「家」だったような・・・。

一番最後のページをみると「農場の少年」も含め、同じ作者によるシリーズものでした。

全10作のうちの、6巻から10巻までが「岩波少年文庫」から単行本化されているようですが、ここの図書館にあるのは、この5冊の他に福音館文庫の第2巻と第3巻、第5巻だけでした。

そこで第6巻の「長い冬」から借りて読むことにしました。

「大草原の小さな家」はずいぶん昔にテレビドラマが放映されていて、とても人気がありました。

私自身は再放送を少しだけ見たことがあって、覚えているのは主人公のローラという少女が草原の中をテレビ画面に向かって駆けてくるオープニングのワンシーンのみですが。

アメリカの田舎暮らしの雰囲気が楽しめたらいいな程度で読み始めたのですが、びっくりの面白さでした。

今、自分ができるだけ自力で作っていくという暮らしをしているからこそ「なるほどなあ!」という場面が満載なのです。

例えば「大草原の小さな家」(第2巻)でローラの父、インガルスさんが放浪の末見つけた土地に家を建てる場面。

近くのクリーク(小川)に転がっていた丸太を運んできてログハウスを作るのですが、丸太を半分に割り、斧で綺麗にしたものを並べて床にしたのです。
とっても丈夫な床が完成したと喜ぶインガルス一家。

地面に木を直置きしたら腐ってしまうよ!と思わず心の中で叫びそうになりましたが、雨の少ない地域の話なのでそんなのは無用の心配です。

その丸太を半分に割る場面も細かい描写がしてあります。

まず丸太の端を斧で割り、その割れ目にクサビを差し込みます。
斧を苦労して抜き取ると、先ほど差し込んだクサビを斧で打ち込みます。
すると少し先まで割れるのです。
それを繰り返して半分に割っていきます。

ログハウスのイメージ(壊れかけ)

そうして完成させたログハウスに暖炉と煙突を作る場面。

バケツのなかで土と水をまぜてよくこね、かためな泥をつくります。
つぎに家の壁ぎわの、草を抜いて平らにした場所の三方にぐるっと石をならべます。
木のへらでその石の上に泥をぬりつけます。その泥のなかにまた石をのせ、上も下もうちがわもべったり泥でぬりかためました・・・(つづく)

と、こんな具合に「どのようにして作っていったのか」が描写されているのです。

ログハウスの作り方も、屋根の葺き方も、頑丈なドアの作り方も全部です。

いつかどこかで参考になりそうな気がします。
(そういえばソローも同じような石積みの暖炉を自分で作っていました。)

満足な道具のない時代、開拓の全てを手作業で行うなか、インガルスさんは知恵を絞って便利な道具を作り出します。

井戸掘りを助ける機械なんて秀逸です。

屋根に葺くための板を丸太から切り出すのは斧一本でやってしまうし、ログハウスに窓や入口を開けるのも斧です。

蝶番が無いなら皮で作るし、釘がないなら木で作る。
ほうきやテーブル、ベッドはもちろんのこと、ロッキングチェアーまでも作ってしまうのです。

そしてその作り方いちいちを、きちんと書いてあるから面白い!

自分も作れそうな気すらしてきます。

さらに感動したのが、ローラのかあさんの作る料理の数々です。

「長い冬」だけでも、プリザーブドトマト、黒パン、ベイクドビーンズ、とうもろこしのパン、じゃがいものクリーム煮など。

とうもろこしパンのイメージ

例えば黒パンの描写がこちらです。

「かあさんはストーブの下の暖かいところから、布をかぶせたサワー・ドウの種が入った入れ物を取り上げ、中味をさっとかき混ぜてから2カップ分を計って鍋にいれ、塩と重曹を加え、挽いた小麦粉を混ぜた。」

「おいしいパンとバターと、いためたジャガイモと、カテージ チーズと、酢と砂糖をふりかけたレタスを、心ゆくまで味わっていた。」(「長い冬」より)

ほかにも、トウモロコシのパンを作る場面では・・・

「ひきわりトウモロコシに塩と水を入れてこね、小さくまるめます。
あたたまったオーブンに油をひくと、その上にひきわりトウモロコシをまるめたのをならべ、鉄のふたをしました。つぎに、とうさんは、そのふたの上にもよくおこった石炭をのせます。」
(「大草原の小さな家」より)

自分でも作れそうなうえに、とっても美味しそうです。

物語の前半、インガルス一家はフロンティアを求めて放浪の旅をします。

自分の家の周りに人が増えてきたという理由で引っ越しを決意したのです。

苦労して建てた家も、家具も、開墾した土地もあっさり捨てて幌馬車に載るだけの荷物を持って。
そして焚き火で調理し、旅の空の下で眠ります。

食卓にはブリキの皿とブリキのカップ、白い骨製の柄のついたナイフとフォーク。

食事の後片付けに、洗って拭いたお皿を納める木箱、川から水を汲んできて洗濯、行水、アイロンをかけるかあさん。

こういった場面全部が丁寧に描かれています。

洗濯をするときには「黄ばみを防ぐために青みつけ剤を入れる」とか。

電気ガス、蛇口から出る水なんて普及していない時代、1800年代のお話です。
家を建てたり、ストーブで調理したり、畑を作ったり、動物を飼育したりと、きっとどこかで参考になる物語です。

そして、インガルスさんのなんとスキルの高いことよ!

ログハウスや井戸掘り、幌馬車での放浪生活など、ぎっしりの内容です!
イラストも秀逸。
一冊だけ読むのならば「大草原の小さな家」がおすすめです。
メルヘンすぎないので、大人でも十分楽しめます。

レシピがたくさんでてくるのは「長い冬」。
乾燥とうもろこしを手動のコーヒーミルで粉にする、干草から薪を作るなどのアイデアもいっぱいです。
時にはマイナス50度近くにもなった4ヶ月にも渡る「長い冬」をどうやって乗り越えたのか!

「プラムクリークの土手で」
土手に穴を掘って作った「洞穴式」の家に住むことになったインガルス一家の話。
まるでホビットハウスのような自然と同化したユニークな家です。
さらにインガルスさんは新しい家も建てます。

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