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江戸時代とアーミッシュ、暮らしとリサイクル

2016年5月31日

アーミッシュは、キリスト教の再洗礼派と呼ばれる一派で、18世紀に宗教的な迫害を逃れるため、ヨーロッパから遥かアメリカへと移住してきた人びとです。
(再洗礼派:生まれたときに洗礼を受けるのでなく、大人になってキリスト教を理解したうえで洗礼を受けるべきであるという考え)

現代においても、基本的には移住してきた当時の生活を続けていることで有名です(教区ごとに基準の差はあるようですが)

例えば、

・電気は使わない
・ガスは使ってよい
・馬車で移動。
・畑は完全無農薬、化学肥料無添加
・コミュニティー全体で自給自足
・家具も家も服も手作り
など

しかし、かたくなに18世紀の暮らしを守っているのかといえばそうではありません。

たとえばこれまで洗濯は週に一度、朝から晩までかかって手で洗うという大仕事でしたが、今ではガスで動く洗濯機と、手動の脱水機を使っています。

アーミッシュのレシピ帳に「洗濯の日のごはん」と名づけられた、忙しい日でも簡単に作れるレシピが残っているほど、昔は洗濯が大変だったようです。

アーミッシュの使うガス式の洗濯機

また、車を所有したり、運転することは禁止されていますが、しかし非アーミッシュの運転する車に乗ることは許可されています。
これは「アーミッシュタクシー」と呼ばれ、主に友人知人が低賃金で運転手を勤めてくれるのだそうです。

※ペンシルヴァニア州では、アーミッシュタクシーのドライバーには州によって発行されるライセンス取得と保険料を支払わなくてはならないとのこと。
ライセンスは毎年更新で年間350ドル、保険料は最大で6000ドルにも及びます。車は15人程度乗車できるバンに、車椅子用のシステムを付ける必要もあるみたいです。そのため、無許可でアーミッシュタクシーをやっている人もかなりおり、取締りが厳しくなってきたといいます。

しかし、遠くの親類の結婚式やお葬式に出席するためならまだしも、ちょっとそこまでお買い物に行くために日常的に利用するアーミッシュや、友人としてアーミッシュを乗せている場合、そういった法律は不要だと考える人もいるのも解る気がします。

その生活スタイルから、時代に取り残されたかのように思われがちなアーミッシュの人々ですが、アーミッシュとしての生き方を貫きながら時代の変化に合わせて「外の世界」と共存しながら暮らしているといいます。

ところで、アーミッシュの人びとは、ひとところに集まって「村」や「街」を形成して、外部とは隔絶した環境で暮らしていると思っていましたら、実際は普通の街の中の、一見すると普通の家に、街に溶け込むように点在して暮らしているのだそうです。

想像してみてください・・・

これを日本に置き換えてみますと、たとえば自分のおとなりさんが、江戸時代そのままの暮らしを続けているのです・・・

着物を着て草履を履いて、髷を結って、かまどで煮炊きして、荷車や天秤を使い、畑は完全無農薬、化学肥料無添加、というより肥やし、夜は行灯を点すのです。

身近に18世紀を体現している人がいるというのは、知恵の部分でじつはとても有意義なことではないのかなと思います。

屋台や天秤を担いだような小商いが盛んだった大都会の江戸の町のように、家に居ながら次々とお店がやってくる便利な生活ではなくて、工夫して食材を加工保存したり道具をつくったりしている田舎の暮らしには、何かヒントが隠れているようで興味が尽きません。

また、アーミッシュというのは、コミュニティとしては成功を収めているといえるのですから、コミュニティが持続する秘密がそこにはあるような気がします。

現代まで崩壊することなく、何百年も続いているコミュニティです。

宗教に根付いたものであることと、「オルドゥヌング」と呼ばれる戒律の存在、罰則の存在、コミュニティ内の徹底的な相互扶助、大家族制であること、みなが同じ服装、髪型をしていること、それから、周辺の非アーミッシュの人びととの良好な関係性など・・・。

アーミッシュの徹底的なリサイクル生活

家畜のふんなどは徹底的に活用し、使わなくなった道具などは、それを必要とする人にゆずります。

そしていよいよ使えなくなったものは、たとえば衣類や毛布であればマットやキルトの素材にし、家具は分解して新たな家具に作りかえるなど、捨てることはありません。

アーミッシュの作る家具や保存食は値は張るけれど質がいいと、ギフトショップやガレージセールで大変人気を博しているそうですが、その一つに「麦藁帽子」があります。

麦藁帽子にはライ麦の上のほうの柔らかい部分だけを使います。
下の固い部分は刻んで家畜のごはんに、また敷きわらや野菜の寒さ避けとしても使います。

「大江戸えころじー事情」(石川英輔 著)によりますと、江戸時代は何事も再利用が徹底していたと書いてありまして、大変感心しながら読みましたが、アーミッシュも同じような暮らしであったことを知って、どちらも同じ18世紀のこと・・・・

江戸が特別だったのではなく、その頃はそういう暮らしが当たり前の世界だったのかも知れません。

※映画に登場するアーミッシュとして有名なのが、ハリソン・フォード主演の「刑事ジョン・ブック 目撃者」です。
殺人事件の目撃者である、アーミッシュの少年とその母親を守ろうとする刑事の物語です。必見です

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