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素晴らしきオニグモの暮らし

2015年8月21日

昆虫の季節です。

去年は初見の昆虫ばかりで、向かって飛んできたり建物に張り付いているものを見かけるたびに「うわっ」と口の中で叫んだりして、なるべく虫には近づかないように暮らしていました。

今年はすっかり見慣れて、「ああ、またおまえか」などと声をかけるほどになりました。

もっといえば、ひっくり返って起き上がれないカナブンや、そこに居たら踏んでしまう恐れのあるナナフシなんかを助けたりもします。棒で。

そして毎回「どうしようかな~」と悩むのが蜘蛛の巣です。

あらゆる場所に糸を張るし、その数も見過ごせない程で、ときにホラー映画さながら、綿あめが張り付いているのかと見まごうほどに密な巣を作るものもあったりして、とにかく見た目が汚らしく、巣に気づかずに顔や手に糸が付いてしまったときの絶望感、さらに虫や落ち葉が巣に掛かっている様は荒廃的で、やっぱりそのままにはできないのです。

そんなときは手頃な棒切れを拾い、それでもって巣をクルクルっと巻き取り遠くへ投げるのですが、巣の主はその前にさっさと避難している訳で、落ち着いた頃にまた同じような場所で糸を張る。

面倒くさいです。

だいたい蜘蛛って夏だけじゃなくて、冬も面倒くさい。
すなわち冬になると、例えば重ねてある木材の間、工具のへこんだ部分、ドアの細い隙間などに潜り込み、蚕の繭のごとき部屋を作り上げ越冬するのです。

これがまた取れないんです。
取ろうと思って棒でつついても粘りが凄すぎて離れないし、ブラシで擦るという手もあるけれど、こんどはそのブラシに繭が絡んでしまって取れないのです。

ふと隙間を覗いたときに、この繭があるとガッカリします。
モノへの愛着も繭ひとつで半減です。

と、まあこんな具合に蜘蛛を敵のように思うときもあったのですが、最近良い蜘蛛を見つけました。

お世辞にもかわいいとはいえない、むしろ初めて見たときにはのけぞるほどに驚いたし、実際のけぞって避けたくらい強烈な姿をしています。

きっと誰もそんな蜘蛛の姿を見たいなんて思っていないと思いますので、かわりに美味しかったジェラートの写真を。

ココナッツミルクのジェラートにドライりんご

その蜘蛛はオニグモといいます。
直径おそらく3センチ以上の丸く茶色がかった身体に長い脚。
脚まで合わせれば10センチはある大型の蜘蛛です。

それだけ聞くと「うわあ」と思うかもしれませんが、オニグモの良いのはその姿ではなくて、彼らの作る巣が素晴らしいからなのです。

身体に見合ったそれはそれは大きな巣を張るのですが、オニグモは日の落ちた時分から設営を始め、大抵30分程で巣を完成させます。

短時間で作る網はそれなりに大雑把なものですが、大きくて見事です。

先日20時過ぎに出かけ1時間後に戻ると、小屋への通路の真ん中に1メートル以上もある立派な巣が作られていて、出かける前にはそんなものは無かったものですからまさに不意打ち、見事に巣に掛かってしまったのでした。

肩から腕にかけて張り付いた糸は、通常の蜘蛛の巣よりも太く、張りも粘りもあって、それは大変な思いをして払い除けました。
実に立派な糸でございました。

話を戻しますと、そのように素早く作った巣の真ん中に鎮座したオニグモは、夜通しそこで獲物が掛かるのを待ちます。
そして夜明けとともに巣を撤収するのです。

見事に全ての糸を片付けるのです。

初めてオニグモの巣を見つけたときにはあまりの大きさに、作ったときの蜘蛛の苦労を思うと壊すのが勿体無いと思い放っておきました。

しかし翌朝にはすっかり無くなっていたので、あれは夢だったのかと思うほどだったのですが、オニグモは自分の巣を丸めて食べることでそれを撤収し、そして翌夜にまた高速設営するのだそうで、それってつまり糸を張りっぱなしではない、つまり蜘蛛の巣が張って汚らしく見えることがない・・・人間と活動時間が逆だから、お互い干渉せずに暮らせる、という利害関係(というほどのものではないけれど)が合致したすばらしい蜘蛛なのです。

蜘蛛がみんなこんなスタイルで生活していたらいいのに。

オニグモは毎晩同じところに巣を作るので、「オッ、今日もやってるな」と遠目で見守っていたのですが、土砂降りとなったある夜から巣を放棄したまま姿を見かけなくなったのでした。

雨で濡れた巣が乾いた頃に片付けに来るのかと思っていたけれど一向に現れず、立派な巣にはいつしか羽虫や落ち葉が絡み、普通の蜘蛛が寄ってたかって重なるように網を張り、今や蜘蛛の一大コロニーとなっているので、そろそろ木の棒の出番かなと思っています。

それにしてもオニグモ、鳥とかに食べられちゃったのかな・・・。

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