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【安曇野から発信する潤一博士の目】 31    ~森のおうちのアカマツは86才~

 アカマツの病虫害被害を防ぐために、松本盆地周辺で、アカマツ林の伐採が行われています。森のおうちでも、昨年から今春にかけて、アカマツはすべて伐採されました(図-1、図-2)。

図ー1、アカマツの林がなくなった”森のおうち”
図ー2、アカマツの切り株

   いくつかの切り株で、年輪を数えてみました(図-3、図-4)。正確な読みとりは、なかなか困難でしたが、86(±2)、83(±2)、80(±2)など、ばらばらの数字に、びっくりしました。同じ数字を予期していたからです。それに、切り株は規則正しい配列ではなく、間隔も方向性もばらばらです。

図ー3、直径62㎝、86才(±2)最年長
図ー4、直径60㎝、80才

 と言うことは、アカマツ林は人によって植林されたものではなく、昭和10年(1935年)頃、当時のアカマツ林が伐採され、日当たりが良くなった伐採跡地で、数年の間に、実生のアカマツが芽吹き、次世代のアカマツ林が形成され始めた、のではないかと推測されます。
 アカマツ林の跡地に、自然に、アカマツ林が再生されたのです。このような林を二次林といいます。この地域の里山は、おそらく、奈良時代以降、常に人手が加わり(皆伐、間伐)、アカマツ林として、何代も存続してきたものと推測されます。今回の伐採跡地には、すでに、実生のアカマツが芽吹き、幼木が育ち始めています(図-5)。

図ー5、アカマツの実生

 陽樹であるアカマツは、日当たりを好みます。まわりの落葉広葉樹を除去して、日当たりを良くすれば、アカマツ林が形成をされるだろうし、落葉広葉樹を除去しなければ、アカマツの幼木は育たず、落葉広葉樹林が形成されることになるでしょう。
 アカマツの切り株年輪から、面白いことがわかりました。次回に。

図ー6、駐車場横の跡地に、植えたコヒガンザクラ。
さっそく、花をつけました。(2023.4.4)

(地質学者・理学博士 酒井 潤一)


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