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ススキは尾花さん

故郷には尾花という姓があり、尾花一族などと呼んでいたから全国区の姓だと思っていた。
調べたら珍しい姓のようだ。

ススキは馴染みの深い草であり、呼び名も多い。
芒、薄、茅、尾花まだまだありそうだ。
庭のススキの穂はまだ出ていないが、ちらほら見かけるようになってきた。

十五夜は、旧暦ではまだ稲穂がなく、ススキで代用して飾るようになった。
秋の七草にも入っている。
山上憶良の歌
「萩の花 尾花 葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴 朝顔の花」
調子がいいので覚えやすい歌だ。

かの牧野博士により、万葉集の時代に朝顔はなかったとされ、現在ではキキョウ説をとっている。
秋の七草は眺めて愉しむ鑑賞用の植物だ。
葛だけは食用になるが。

ススキの思い出がある。
島に来る前、ズル休みで家にいたが、どうもやりきれなくて、リュックひとつ持って、駅が近いこともあり、大分方面の列車に乗る。
日田を過ぎたら、万年山(はねやま)が見えてきた。
メサ(卓状台地)というテーブル状の、1000M強の山だ。

見慣れているが登ったことはなかったので、この山に登ることにした。
宿は見つけたが、遅い時間だったし、女一人なので不審に思われるも、残りものでよければの食事とビールは出してもらえる。
山に登れると思えば、侘しさなんかなんともない。

早朝、下調べもしていなかったが、登山者らしき人の後をついて行った。
山道に入ると一面ススキが原、金銀の穂が揺れている。
雲の上にいるような気分になる。
ふわりと誘われて中へ入ってみた。
下を見ると、ナンバンギセルがいたるところに生えているではないか。
歓喜する。

山渓日本の野草より

ナンバンギセルは、イネ科に寄生する植物で万葉集にも「思ひ草」として詠まれている。
初めて見つけた時は「うわー」叫んだ。
「道の辺の尾花が下の思ひ草今さらさらに何をか思はむ」
この歌もすぐ覚えた。

頂上は平らな台地で、なるほどこれが卓状台地なんだと思い、しばらく寝っ転がっていたら、子どもたちがサッカーをして遊んでいる。
なんとも長閑な山登りであった。
ススキの季節になると思い出す風景だ。

空が思いなし高くなってきたようだ。
赤トンボが気持ちよさそうに飛び交っている。
ぴったりの俳句があつた。
「生きて仰ぐ空の高さよ赤蜻蛉」 夏目漱石

今朝の朝焼け

9月9日は重陽の節句、よいことがありますように。
今日も読んでくださってありがとうございます。

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